厚労省は1日、新型コロナワクチンを接種した60代女性が死亡したと発表した。女性の死因は、くも膜下出血とみられていて、厚労省は「ワクチンとの因果関係は分かっていない」としている。女性は、一部の医療従事者を対象とした先行接種を先月26日に受けていた。接種後は、副反応とみられる症状はなく、基礎疾患やアレルギーもなかったという。

【映像】ワクチン接種後に“くも膜下出血” 因果関係は? 脳神経外科医の見解

 厚労省の専門科部会の部会長である森尾氏も「くも膜下出血は40代から60代に多い疾患で、今のところ、海外における接種事例でも、ワクチンに関連があるとはされていないようだ」と見解をコメント。厚労省は今後、専門家らの審議会を開き、接種との因果関係やワクチンの安全性について評価するという。

ワクチン接種後に“くも膜下出血”で死亡報道に米・脳神経外科医が苦言「3日前に食べた“から揚げ”ががんの原因だと言っているイメージ」
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 このニュースにアメリカのハーバード大学マサチューセッツ総合病院で働く脳神経外科・柳澤毅医師も「ワクチン接種と女性の死因とされている“くも膜下出血”の関係性は考えにくい」と話す。

「正直、脳外科医としてくも膜下出血の病態などを考えると、ワクチンと今回のくも膜下出血発症の因果関係は、あまりないのではないかというのが正直なところ。くも膜下出血の原因の8割以上は脳動脈瘤、つまり頭の中にできた血管のこぶのようなものが破裂すること。ただ、その動脈瘤ができて、破裂に至るまでは通常年単位の年月がかかると言われている。ワクチンを接種して3日後、それが原因で動脈瘤ができて、さらに破裂までしたということは考えにくい」

 これまでにくも膜下出血の患者を見てきた柳澤医師。「科学に絶対はない」とした上で、くも膜下出血という病気のメカニズムについてこう話す。

ワクチン接種後に“くも膜下出血”で死亡報道に米・脳神経外科医が苦言「3日前に食べた“から揚げ”ががんの原因だと言っているイメージ」
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「例えば、ある方が“から揚げ”を食べた3日後に、大腸がんが見つかったとする。その大腸がんは『3日前に食べた“から揚げ”が原因だ』と言っているようなイメージ。真の原因は長年にわたる生活習慣だったりする。なので、3日前に何を食べたかが、3日後にがんが見つかったことと関係するとは思わないし、直接的な原因にはなりえない」

「ワクチンを打って3日後にくも膜下出血になったから『これはワクチンが原因じゃないか』と、もちろん初めてのワクチンですし、おっしゃることもわかるが、僕たちからすると、そういうイメージ」

 柳澤医師自身は、すでにアメリカで新型コロナのワクチン接種を終えている。今回の厚労省の発表や、根拠がはっきりしない状態で不安をあおるような報道のやり方について、どのように思っているのだろうか。

「事実としてくも膜下出血というのは、(日本でも)だいたい毎年2万4000人くらいの患者さんがいる。こういった事実がある中で、ワクチンを受けて3日後に60代の女性がくも膜下出血でお亡くなりになったという、因果関係を疑いたくなるような気持ちもわかるが、事実としてワクチンを打とうが打たまいが、他の病気自体はある。くも膜下出血という病気の性質をきちんと考えて、病気の仕組みや原因をどこまで報道するか。難しいが、それらを踏まえた上で情報共有が大事だと思う」

 3月には、日本でも65歳以上の高齢者を中心に接種が始まる予定だ。柳澤医師は、ワクチン接種に対して「ひとりひとりが正しい情報を学んでいくことが大事だ」と強調する。

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「日本のワクチン専門家や、アメリカでコロナウイルス感染症の最前線で臨床医として働いている日本人医師や研究者の方々は、ワクチンの情報を分かりやすくメディアやSNSを使ってさまざまな発信をしている。本当に正しいものに基づいた情報や安全性を伝えることを使命として掲げて活動されている。ぜひ、皆さんひとりひとりが正しい情報を学んで、その上で自ら判断していただくこと。それが何より大切だ」

 毎日のように報道される新型コロナ関連のニュース。メディアやSNSを通じ、何が重要な真実なのか、ひとりひとりが見極める目を持つ必要がありそうだ。

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

【映像】“ワクチン後死亡”報道に医師苦言
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