「困ると“助けてくれ”というのは覚悟が足りない」「伝統芸能は国から助けてもらったら滅びる」寄席への“支援”を求める風潮に立川志らくが苦言
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 22日のABEMANewsBAR橋下』に、落語家の立川志らくが生出演。『グッとラック!』でも共演していた橋下氏とコロナ禍における興行の問題について議論した。

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■「“出たきゃ出してやるよ”と言ってくるから、こっちは“出ない”となる」

 落語界では今、落語協会と落語芸術協会が寄席を支援するためのクラウドファンディングを開始、話題を呼んでいる。ところが志らくは「困ったからといって、すぐに“みなさんお金を”、というのはあまり好きじゃない。伝統芸能は国から助けてもらったら滅びる」と持論を展開する。

 「今回の件では私のところにも色々な質問が来るが、最初に説明しなくちゃいけないのは、立川流は寄席には出ない、ということ。向こう側から言わせると出さない。こちら側から言うと出てやらない。理由を説明すると2時間くらいかかっちゃうんだけど、原因を作ったのは立川談志だ。立川談志は寄席を一番愛していた芸人なんだけれども、“ここにいたら芸人はダメになっちゃう”と言って寄席を飛び出していった。我々は別に寄席に出て修行しなくても立派な落語家になれる、そのモデルケースが志の輔、談春、志らくだと。だから私も“寄席に出ない”という立場でものを言っている。

 そもそも、寄席がないと落語家は収入がなくなると思われているが、それは関係ない。寄席は1回数千円にしかならないし、売れっ子でもせいぜい1日1、2万円、そんなもんだ。それで若い者に祝儀を切ったり飯を食わせたりしたら、下手すれば足が出ちゃう。じゃあなぜ出るのかといえば、伝統を守るためとか、修行のためとか、色んな“ため”があるから。

 私だって子どもの頃から寄席を愛していた人間だから、“寄席を守るためにぜひ力を貸してください”と言われたら、それはやぶさかではない。ちゃんとしたギャラが用意され、志の輔さん、談春さん、私に頭を下げて“ぜひとも出演してください”と言ってくれれば出る。でも、未だに“出たけりゃ出ていいよ”“出たきゃ出してやるよ”と言ってくるから、こっちは“出ない”となる。

 だから今回、クラウドファンディングで寄席が潰れちゃうからと5000万を目標にお金を集めているが、芸人たちにどれほどいくかはよく分からない。こういうことを言うと寄席の人に怒られるかもしれないが、コロナ禍の今こそ、お客さんが入るような最高の顔付けでやれば、寄席は救われる。そうやって最高の芸ができる人材を育てていけば、国からの補助だってもらわなくてもやっていけるはずだ」。

■橋下氏「寄席を守るということと、落語や落語家さんを守るということは違う」

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 志らくの話を受け、橋下氏は「僕は大阪市長時代、文楽への補助金見直しの問題で大騒動になって、“伝統芸能文化の破壊者だ”などとさんざん言われた。でも、大阪の政治家の中でいちばん文楽を見ているという自負があった。“つまらないやつはつまらない”とか言っちゃうから、またそれでファンから“何が分かるんだ”と言われてしまうが(笑)。

 僕の主張は、補助金をやめるということではなくて、無条件に出すのを変えていかないといけないんじゃないの?ということだった。毎年決まった額の補助金が国からも府からも入っていたが、文楽をやっている人たちにお金が行っているのではなくて、文楽協会という所に行っていたから。伝統芸能文化を発展させる時に、間に入っている団体がそれを阻害してしまうというのはよくあることだと思う。今回の寄席の話も似ているところがあるんじゃないかと思っていたから、今の志らくさんの言葉を2011年に頂きたかった。

 堺屋太一さんも同じことを言っていたが、歴史を紐解けば、大衆に支えられてきた伝統芸能は、お上がお金を出すと廃れていくよと。でも、インテリ層は歴史的・文化的な所にお金を入れろ、お金を入れろと言う。お金を入れることはやぶさかではないが、公平に審査・評価をした上でないといけないんじゃないかと言ったら、“審査をするとは何事か”と言われた。

 今回も、政治家たちは寄席を守ろうということをやっているが、それは違うんじゃないのと思う。寄席を切り捨てろとは思わないけれど、寄席を守るということと、落語や落語家さんを守るということは違う。その違いすらはっきり分かっていない人たちが、寄席を守ったら歴史や文化を守ってるんだ、みたいなことを言う」とコメント。

■「いざ困ると“助けてくれ”というのは覚悟が足りないだろう」

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 志らくは「立川談志がずっと言っていたのは、“伝統を現代に”というスローガンだ。伝統というのは、守りに入ったら滅んでしまう。マニアたちのため、歴史を残すためにあってもいいけど、それだけを守っていたら潰れてしまうから、どんどん現代に飛び込んで、色んなことをやっていかないといけんだということ。

 本当は、寄席が無くなっても落語は滅びない。だって志の輔、談春や私も含めて、寄席修行してなくても活躍しているから。だけど若い頃は寄席修行をしていないから“アマチュア落語家だ”と言われた。楽屋に入ると“おい談志さんの弟子ね”と言われ、素人だからと着物をたたませてもらえなかった。ギャグを作ったり、オチを自分で考えて変えたりすると、“あー、やっぱり素人だな。ちゃんと教わんなきゃダメだよ”と。とにかく落語界はそうだった。でも今は落語協会にいる、売れている人たちも自分でオチを変えて、ギャグを考えて、現代に打ち出している。そして、それを協会も“売れっ子だ”って前面に出しているけど、あんたたち、さんざん俺たちのことをアマチュアだと言ったじゃねえか、って。

 確かにスタッフだとか劇場だとかは、国が何とかしてあげないと本当に仕事がなくなっちゃう。だけども、この世界に入ってきた芸人だとか役者っていうのは、いわばみんな“親不孝者”。世の中のためになることをやるわけじゃない。自分の好きなことをやりたい。それで入ってきたくせに、いざ困ると“助けてくれ”というのは覚悟が足りないだろうと。一銭もお金が入んなくなって、泥水を飲むようなことになったとしても、それがやがて芸につながっていくんだから、“助けてください”じゃなくて、まずはもがけと。それが足りないような気がする」と語った。(ABEMA/『NewsBAR橋下』より)

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