「“トー横キッズ”とひとくくりにしないで」歌舞伎町の傷害致死事件をめぐる報道に、現場を知る人々から懸念の声
“トー横界隈”の実態は? »

 先月27日、東京・歌舞伎町で発生した傷害致死事件。捜査関係者によると、男性を暴行して死亡させた疑いで26歳の容疑者とともに逮捕された2人の少年は、TOHOシネマズなどがある「新宿東宝ビル」周辺、いわゆる“トー横”と呼ばれるエリアにたむろしていたといい、多くのマスメディアが“トー横キッズ”という言葉を見出しに使っている。

【映像】“トー横キッズ”報道で新たな差別も?

「“トー横キッズ”とひとくくりにしないで」歌舞伎町の傷害致死事件をめぐる報道に、現場を知る人々から懸念の声

 こうした状況に対し、「一括りにしないで欲しい。意味をちゃんと知らないで適当にカテゴライズするから若者と大人の分断が起こるんだよ」と指摘しているのが、15歳で歌舞伎町に足を踏み入れ、現在は“トー横”に集う若者たちを研究している佐々木チワワさんだ。

「“トー横キッズ”とひとくくりにしないで」歌舞伎町の傷害致死事件をめぐる報道に、現場を知る人々から懸念の声

 「2018年ごろ、SNSに“1ミリでもいいと思ったらリツイート”みたいなハッシュタグと一緒に自撮り画像をアップしていた人たち、“自撮り界隈”が実際に会うときの待ち合わせ場所になり、やがて溜まり場になっていったのが東宝ビル横のエリアだ。そして歌舞伎町という街の性格上、スカウトの声かけの場になったり、“地雷系”のファッションをした未成年者が飲みの場として作用してうるさかったりしたことから、ホストクラブに通うお姉様方が“お金がない未成年が歌舞伎町で遊んで、大人ぶるな、ガキ”みたいな意味を込めて“東宝キッズ”と呼ぶようになった。

「“トー横キッズ”とひとくくりにしないで」歌舞伎町の傷害致死事件をめぐる報道に、現場を知る人々から懸念の声

 そこに対して、“俺たちはトー横界隈だぞ”という言い方をするようになったが、自ら“トー横キッズです”と名乗ったわけでもない。あくまで外の人たちが勝手に名付けているということだ。今回の報道が“トー横界隈”“東宝キッズ”“トー横キッズ”と割れた理由も、そういう背景があると思う。

 ただ、鳩よけが設置されたり、警察の見回りが行われたりするようになったことから、今はシネシティ広場の方に移動している。だから“トー横”ではなくて、“広場行こうぜ”“広場の子たち”といった言い方をするようになっている。また、シネシティ広場には近くにライブ会場もあるし、ワープ新宿というクラブもあるので、酔っ払った若者が集まってきたり、ホームレスの方もいたりするので、実際には様々な人がいるということだ。

「“トー横キッズ”とひとくくりにしないで」歌舞伎町の傷害致死事件をめぐる報道に、現場を知る人々から懸念の声

 中にはプリント広げて勉強している子もいるし、土日の昼間行くと、ただ音楽に合わせて体を揺らしているだけの子がいたり、中学生の文化祭集団がクラTを着て集まっていてびっくりしたこともある。学校では地雷系のファッションをしている子がいないけど、ここなら馴染めるかな、居場所がなかったけど、ここなら友達できるかなということでやってきた子もいるので、ファッションカルチャーの発信地という側面もある。実際、“ドンペンコーデ”といって、歌舞伎町のドン・キホーテで売っているTシャツのコーディネートがTikTokでバズって、全国的に品切れが起きたこともあった。

 確かに、過去には傷害事件や心中事件などがあった時期もあったし、摘発されて児童相談所に一斉に送られた後に“ごめん、お母さんにスマホ没収されたからもう会えない、バイバイ”でツイートの更新が止まっている子もいるので、切ない。ただ、“旧トー横キッズ”と呼ばれる人たちが抜け、居場所として救いを求める子たちだけが集まっていることも事実なので、過激なイメージだけに引きずられず、最近のトー横はこうだよね、昔とは違うんだよ、というポジティブな報じ方に変えていってもらえれば、文化としても継承されていくのではないか」。

「“トー横キッズ”とひとくくりにしないで」歌舞伎町の傷害致死事件をめぐる報道に、現場を知る人々から懸念の声

 亡くなった男性、26歳の容疑者の双方と面識があるというハウルさんは、ボランティア団体「歌舞伎町卍會」総会長として、歌舞伎町の清掃・炊き出しなどの活動を行ってきた。

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 「確かに、過去には路上で立ちションベンをしていたおじさんを殴って捕まったような若者もいたし、ボランティアを始めた頃にはリストカットして血だらけの子、風邪薬を一気飲みした子、瓶やポールを通行人に投げつけるような子たちもいた。そこでチワワさんのおっしゃっていた、広場に移ってくる前にいた子たちの中でも、悪さをしているようなメンバーは入れないぞ、ということで春ごろに作ったのが僕たちの団体だ。

「“トー横キッズ”とひとくくりにしないで」歌舞伎町の傷害致死事件をめぐる報道に、現場を知る人々から懸念の声

 週に3〜4日、真夏には毎日のように清掃をしたり、ご飯を作って家出した子やホームレスに配っているが、やはり今の広場に集まっているのは、いじめや虐待などで居場所がなくなった子たちが多く、僕たちの活動を手伝ってくれたりする子もたくさんいる。そういう意味では、広場にいるのは過去のイメージの“トー横キッズ”ではないと思う。

「“トー横キッズ”とひとくくりにしないで」歌舞伎町の傷害致死事件をめぐる報道に、現場を知る人々から懸念の声

 そして今回の被害者、加害者ともに、そういう広場の中に1人だ。被害者の方は、8月の終わりくらいに現れた、優しくて気さくなホームレスのおじさんで、僕たちの清掃活動を手伝ってくれていた。一方、加害者の方も広場で見かけることがあって、“僕も一緒にやります”と言って清掃を手伝ってくれたことがあった。だから僕から見れば、どちらも気の優しい方という印象だった。だから“トー横キッズ”といって広場の様子を映してしまうと、あの場所自体が、そういう人間が集まっているような印象を与えてしまうと思う。歌舞伎町を知らない人からすれば、“やっぱりあそこはそういう人間だらけなんだ”と勘違いさせてしまう。それは全然違う」。

「“トー横キッズ”とひとくくりにしないで」歌舞伎町の傷害致死事件をめぐる報道に、現場を知る人々から懸念の声

 両者の意見を受け、テレビ朝日平石直之アナウンサーは「“トー横”的なものが変遷をたどったり、拡大をしている側面もあると思うし、自分たちで“トー横キッズ”と名乗っているわけではないという意見も分かる。界隈に集まっている人の中には、良い人たちもいると思う。ただ、“あの界隈に集まっている少年少女たち”くらいの意味としては、おおよそ外れていないとも思うし、実際に事件が起きて、逮捕者には界隈にいた少年が2人いたことも踏まえれば、大きく言って間違いではないと思う。定義は人によって違っていると思うし、そこまで厳密に線引きをなければならないとなると、そもそもこの件についての報道が難しくなる。

 一方で、私たちは以前、チワワさんの監修のもと、居場所のない人たちが集まってきていることや、文化も含めてお伝えした。それに惹かれて界隈に来た人たちもいるかもしれないという点では、責任もある。居場所としての“トー横”を潰せということを言いたいわけではないが、こういう事件が起きた以上、安心感が得られる場所のように報じるだけでなく、リスクもあることも含めて伝えなくてはいけないと思った。その意味では、“トー横キッズ”というワードを取ってしまうのは違うとも思うし、良いことも悪いことも報じていかなくてはいけない」と話した。

「“トー横キッズ”とひとくくりにしないで」歌舞伎町の傷害致死事件をめぐる報道に、現場を知る人々から懸念の声

 これに対し、リディラバ代表の安部敏樹氏は「(トー横キッズについて)良い面ばかりでなく、悪い面もあると事前に報じていて情報量が多いことが前提にするならば一理ある。しかし、情報量が多くないマスメディアで"トー横キッズ"を出してしまうのは不適切だ」と釘を刺した。(『ABEMA Prime』より)

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