2023年3月に第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が行われ、野球日本代表侍ジャパンが優勝しました。この優勝をきっかけとし、大会MVPに輝いた大谷翔平(おおたに しょうへい)投手(エンゼルス)やチームをまとめ上げたダルビッシュ有(だるびっしゅ ゆう)投手(パドレス)らが戦っているMLB(メジャーリーグベースボール)に興味を持ったファンも多いのではないでしょうか。
そこで本稿では、MLBの概要やその魅力、さらにはMLBに所属する日本人選手を紹介します。
目次
- MLBとは?概要を説明
- MLBの開催期間や試合数は?
- シーズンの仕組みについて
- MLBのルールについて
- MLBの魅力は?
- MLBに所属するチームについて
- 日本人選手について
- まとめ
MLBとは?概要を説明
MLBは、アメリカとカナダに本拠地を置く30球団で構成されるプロ野球リーグです。正式な表記は「Major League Baseball」で、一般的にはその頭文字をとって「MLB」の略称が用いられています。日本ではMLBの他にメジャーリーグ、大リーグなどと表記されることもあります。
アメリカでMLBはアメリカンフットボールの「NFL」、バスケットボールの「NBA」、アイスホッケーの「NHL」とともにアメリカ4大プロスポーツのひとつとして数えられています。
MLBの開催期間や試合数は?
MLBは例年3月後半から4月の前半にかけて開幕します。レギュラーシーズンは開幕後、9月末から10月初旬まで行われ、各チームが全162試合を戦います。その後にポストシーズンが開催され、10月末から11月初旬にワールドチャンピオンが決定し全日程が終了です。
2023年のレギュラーシーズンは日本時間3月31日(現地3月30日)に開幕しており、雨天などの順延がなければ日本時間10月2日(同10月1日)が最終戦です。また、日本時間4月11日(同10日)時点でポストシーズンの日程は発表されていません。
シーズンの仕組みについて
30球団がレギュラーシーズンの162試合を戦い、ポストシーズンに出場できるのは各地区の優勝チームと優勝チーム「以外」の勝率上位3チームとなり、両リーグ合計12チームです。
ア・リーグとナ・リーグの各リーグごとにワイルドカードシリーズ(3戦2勝制)、デビジョンシリーズ(5戦3勝制)、リーグチャンピオンシップ(7戦4勝制)の順番に戦い、リーグチャンピオンを決定します。リーグチャンピオンチーム同士がワールドシリーズ(7戦4勝制)で戦い、勝利チームがワールドチャンピオンとなります。
2023年シーズンの詳細な日程は発表されていませんが、例年10月頭から11月頭までの約1ヶ月間に渡ってポストシーズンが行われます。
2022年シーズンはヒューストン・アストロズがフィラデルフィア・フィリーズを下し、5年ぶり2度目のワールドチャンピオンに輝きました。
MLBのルールについて
MLBとNPB(日本プロ野球)では細かいルールの違いがあります。まず、ア・リーグ、ナ・リーグの両リーグで指名打者制度(DH制度)が採用されています。両リーグで正式にDH制度が採用されたのは2022年となっており最近です。それまでナ・リーグは新型コロナウイルスの影響で様々なレギュレーション変更がなされた2020年を除いて、一貫してDH制を採用していませんでした。
WBCと同様に打者3人以上に投球するか、その回を完了させるまで投手交代することができないワンポイントリリーフの禁止も2020年シーズンから導入されています。
2023年シーズンからはピッチクロック、極端な守備シフトの禁止、ベースの拡大が新たに加わりました。ピッチクロックは走者なしで15秒以内、走者ありの場合で20秒以内に投球動作を開始しなければいけないルールです。打者は残り8秒となるまでに構える必要があります。投手が違反した場合は1ボール、打者が違反した場合は1ストライクが宣告されます。
2022年シーズンまでは極端な守備シフトが多く見られましたが、2023年シーズンからは二塁ベースを中心に左右2人ずつを配置しなければなりません。また、ベースは15インチ(約38センチ)から18インチ(約46センチ)へ拡大されました。これは接触プレーの危険を減少させるためです。
試合に引き分けはなく決着がつくまで延長戦が行われます。延長戦にはタイブレークの制度が用いられており、10回から両チームともに無死二塁の状態から攻撃を始めます。
MLBの魅力は?
2023年現在においてMLBは、野球のプロリーグとして世界トップのレベルを誇っています。そのため日本のプロ野球(NPB)で結果を残し、MLBへ挑戦する選手が多いです。
大谷選手のようなトップクラスの選手によるパワー、スピードは圧倒的なものがあります。一方で近年はフライボール革命の発達や投手のレベルアップにより、ホームランか三振かというように大味とも言われます。しかしニューヨーク・ヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手が2022年シーズンに本塁打を量産しア・リーグ記録の61本塁打を放ったことで大いに盛り上がりました。やはりファンにとってホームランの多さは魅力の1つと言えそうです。
リーグ全体、そしてメジャーリーガー個々人のレベルが高いだけでなく、年俸も桁違いです。2022年シーズンにおけるMLBの平均年俸は422万ドル(約5億4860万円/1ドル130円換算)でした。NPBは4312万円だったので5億円以上もの開きがあります。
2023年シーズンからMLBでプレーする千賀滉大(せんが こうだい)投手(メッツ)は5年総額7500万ドル(約97億5000万円/1ドル130円換算)、吉田正尚(よしだ まさたか)外野手(レッドソックス)も5年総額9000万ドル(約117億円/1ドル130円換算)とNPBでは考えられないような金額で契約しています。選手にとっては年俸の高さも大きな魅力です。
MLBに所属するチームについて
全30チームが所属しているMLBは、アメリカン・リーグ(ア・リーグ)とナショナル・リーグ(ナ・リーグ)の2リーグ制です。両リーグともに15チームずつで、それぞれ東、中、西と3地区(各5チーム)に分かれています。
レギュラーシーズンではリーグ内の他地区やリーグを超えた戦いも行われます。ア・リーグのチームとナ・リーグのチームが対戦する試合のことは、インターリーグ(交流戦)と呼ばれています。2023年シーズンは、自チームを除く29チームとシーズンで少なくとも一度は顔を合わせる日程です。
30球団で構成されるMLBの本拠地はアメリカが29、カナダが1です。菊池雄星(きくち ゆうせい)投手が所属するトロント・ブルージェイズが現在の30球団で唯一、カナダに本拠地を置いておりア・リーグ東地区に属しています。
大谷選手が所属するロサンゼルス・エンゼルスはア・リーグ西地区、ダルビッシュ選手のパドレスはナ・リーグ西地区になります。
アメリカン・リーグ
・東地区
ボルチモア・オリオールズ
ボストン・レッドソックス(吉田正尚外野手)
ニューヨーク・ヤンキース
タンパベイ・レイズ
トロント・ブルージェイズ(菊池雄星投手)
ヤンキースは、歴代最多となる27回のワールドチャンピオンに輝いている名門チームです。しかし2009年以降は世界一から遠ざかっており、21世紀に入ってからはヤンキースの2度に対してライバルであるレッドソックスが4度も世界一に輝いています。
ア・リーグ東地区はレベルが高いとされており、2022年シーズンも5チーム中4チームが勝率5割を上回りました。ポストシーズンにも地区優勝のヤンキースをはじめ、ブルージェイズ、レイズの3チームが進出しています。オリオールズは勝率.512だったにもかかわらず、ポストシーズンに進出できませんでした。
・中地区
シカゴ・ホワイトソックス
クリーブランド・ガーディアンズ
デトロイト・タイガース
カンザスシティ・ロイヤルズ
ミネソタ・ツインズ(前田健太投手)
2021年シーズン終了後に、インディアンスがガーディアンズと名称を変更しました。名称変更1年目となった2022年シーズンにガーディアンズは、ホワイトソックスに11ゲーム差をつけて地区優勝を果たしています。
2022年シーズンにタイガース、ロイヤルズ、前田健太(まえだ けんた)投手が所属するツインズの3チームは勝率5割を下回っており、2位のホワイトソックスも勝率5割ちょうど。貯金を作ったのが1チームだけだったのはア・リーグ中地区のみでした。
・西地区
ヒューストン・アストロズ
ロサンゼルス・エンゼルス(大谷翔平投手)
オークランド・アスレチックス(藤浪晋太郎投手)
シアトル・マリナーズ
テキサス・レンジャーズ
ア・リーグ西地区は大谷選手が所属するエンゼルスが属しており、日本での露出も高めです。しかしエンゼルスは2014年に地区優勝して以来、ポストシーズンから遠ざかっています。大谷選手が加わった2018年以降、勝率5割を上回ったことは一度もありません。かつてダルビッシュ選手が所属したレンジャーズも2017年以降に勝率5割を上回ったことはなく、ポストシーズンにも2016年を最後に出場していません。
2022年は地区優勝したアストロズがワールドチャンピオンに輝き、マリナーズは21年ぶりにポストシーズンに出場しました。藤浪晋太郎(ふじなみ しんたろう)投手が加入したアスレチックスは2020年に地区優勝しています。しかし2022年シーズンはア・リーグワーストの勝率.370と低迷しました。
ナショナル・リーグ
・東地区
アトランタ・ブレーブス
マイアミ・マーリンズ
ニューヨーク・メッツ(千賀滉大投手)
フィラデルフィア・フィリーズ
ワシントン・ナショナルズ
2022年シーズンはブレーブスとメッツの2チームが100勝を超え、3位のフィリーズもワイルドカードでポストシーズンに進出しました。ポストシーズンではフィリーズが快進撃を見せ、ナ・リーグ王者となりました。ワールドシリーズでは敗れたものの、大きく躍進しました。
千賀選手が加入したメッツは、2023年シーズンの総年俸が3億5000万ドル(約455億円/1ドル130円換算)を超え30球団で圧倒的な1位となっています。
2019年シーズンに世界一となったナショナルズはその後低迷。2022年シーズンは30球団ワーストの勝率.340にとどまっています。マーリンズは侍ジャパンがWBCで戦ったローンデポ・パークを本拠地としているチームです。
・中地区
シカゴ・カブス(鈴木誠也外野手)
シンシナティ・レッズ
ミルウォーキー・ブリュワーズ
ピッツバーグ・パイレーツ
セントルイス・カージナルス
鈴木誠也(すずき せいや)外野手の所属するカブスは、2016年シーズンに107年ぶりの世界一に輝きましたが、これはMLB史上もっとも長いブランクでもありました。その後も地区優勝を争う強豪でしたが、ここ2年は低迷しています。侍ジャパンでも活躍したラーズ・ヌートバー外野手が所属するカージナルスは、2022年シーズンの地区王者で2008年以降、15年連続勝率5割以上をマークしています。
パイレーツとレッズは過去5年連続で地区3位以下と低迷しています。ブリュワーズは2022年シーズンに勝率.531で地区2位でしたが、ポストシーズンに進出することはできませんでした。
・西地区
アリゾナ・ダイヤモンドバックス
コロラド・ロッキーズ
ロサンゼルス・ドジャース
サンディエゴ・パドレス(ダルビッシュ有投手)
サンフランシスコ・ジャイアンツ
ドジャースは、2013年から2022年までの10年間で9度地区優勝を果たしています。しかしその10年間でワールドチャンピオンになったのは、2020年の1回だけしかありません。その世界一も1988年以来32年ぶりのものでした。一方でジャイアンツは2010年、2012年、2014年と2010年以降に3度もワールドチャンピオンに輝いています。
ドジャースとジャイアンツの争いが激しいこともあり、ダイヤモンドバックス、ロッキーズ、そしてダルビッシュ選手の所属するパドレスは2010年以降にポストシーズンに出場したのはそれぞれ2度ずつしかありません。
日本人選手について
2022年シーズンオフに吉田選手がレッドソックス、藤浪選手がアスレチックス、そして千賀選手がメッツに入団しました。この3人の加入により2023年シーズンにMLBの舞台で戦うNPB出身の日本人選手は8人です。
ア・リーグは東地区に吉田選手(レッドソックス)と菊池選手(ブルージェイズ)、中地区には前田選手(ツインズ)、そして西地区には大谷選手(エンゼルス)と藤浪選手(アスレチックス)が所属しています。一方のナ・リーグには東地区に千賀選手(メッツ)、中地区に鈴木選手(カブス)、西地区にダルビッシュ選手(パドレス)が所属中。そのため2023年シーズンは6地区すべてで日本人選手がプレーしていることになります。
まとめ
MLBはアメリカとカナダに本拠地を置く全30チームで形成される世界最高峰のプロ野球リーグです。3月末から10月頭頃まで開催されるレギュラーシーズンを戦い、12チームがポストシーズンに出場。その12チームが約1カ月間に渡って世界一を目指し、ポストシーズンを戦います。
日本人選手が8人プレーする2023年シーズンのMLBで最後に笑うのはどのチームでしょうか。細かい部分でNPBと異なる点はあるものの、大筋のルールは変わりません。WBCで興味を持った方も、大谷選手やダルビッシュ選手の活躍を見たい方も一緒に楽しみましょう。
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