「あと10cm」手が届かず…目の前で夫が濁流に 不明者の捜索続く能登豪雨6日目

甚大な被害が出た能登豪雨から6日目となりました。孤立集落は徐々に解消しています。その中の1つ、200人以上が孤立した輪島市七浦では、26日から集団避難が始まりました。

■“能登豪雨”集団避難始まる

珠洲市真浦町では垂水の滝近くの岩場で男性1人の遺体が発見されました。この地区では池田幸雄さん(70)の行方が分かっていません。石川県などによると、9人が死亡、6人が不明となっています。

一時209人が孤立した輪島市七浦地区では、中村菊枝さん(70)の安否が分っていません。七浦地区では25日に緊急車両の通行が可能になりましたが、まだ電気や水道などライフラインは止まったまま。そこで市は住民の集団避難を決めました。

男性
「(Q.久しぶりに家族に会えるが)大歓迎して迎えてくれるかどうか分からんけど、仕方ないもん」

この日は2回に分けて約40人の住民が避難所となる小学校へと向かいます。

■夫婦が再会「夢みたい」

東由紀恵さん(70)
「ずっと暗い所で1人でいたので。お風呂も入れるし、ほっとしています」

たまたま外出していた夫・東栄一さん(74)が家に帰れず、離れ離れになって6日目。ようやく元の日々が戻りますが…。

東栄一さん
「(避難先は)別々を妻は希望しました。理由は『仲間といたほうがいい』。隣にいて、私がいなくなったらポツンと1人も寂しい」

そして、七浦地区を出発したバスは門前東小学校に到着。東さん夫婦も無事に合流しました。

東栄一さん
「(Q.この環境に妻を迎えて)すごく不安だったと思います。その不安が少し取り除かれたんじゃないかと思います。よく頑張ったと思います。それしかないね」

東由紀恵さん
「本当に閉ざされてしまった感覚が強くて。こんなにすぐに会えるなんて夢みたいだなと思うくらい、本当にびっくりしました」

喫緊の課題は、避難住民の次の受け入れ先です。石川県は、来週初めまでに受け入れ先を用意したいとしています。七浦地区から車で1時間ほどの距離にある志賀町は…。

志賀町 稲岡健太郎町長
「輪島市からというか、石川県の方から二次避難の受け入れができないかという要請はいただきました」

一部を除き、町内の宿泊施設は復興作業員などで埋まっているといいます。

志賀町 稲岡健太郎町長
「同じ地震の被災地同士ですので、こういう時こそ、助け合わなければいけないとは思ってはいるんですが、こちらもまだ被災して復旧の最中ですし、その余裕がないというのが志賀町の現状」

輪島市は罹災証明がなくても応募が可能な、応急仮設住宅の入居者の募集を始めました。

■目の前で夫が濁流に…

水害が残した爪痕はあまりにもつらく残酷です。真浦海岸のほとりで、50年以上続く旅館『海楽荘』。あの日の濁流は、1階のエントランス部分をめちゃくちゃに破壊しました。

夫が行方不明 池田真里子さん(68)
「今ぽつっと(夫が)いなくなったら、どうすればいいか。それが一番分からない」

池田真里子さんは目の前で、夫の幸雄さん(70)がのまれていくところを見たといいます。玄関にいたはずの真里子さんらは、濁流で外に押し出されました。

夫が行方不明 池田真里子さん
「『お父さんどこ?』と言ったら手を挙げていたから、手をつかまえようと思った時に後ろから鉄砲水がきた」

幸雄さんは、だいぶ離れた木に捕まっていました。

夫が行方不明 池田真里子さん
「私は柵につかまって立って、それから木のそばまで行った。そうしたらもう手を出していたが、そのまま流された。(Q.幸雄さんとは距離は近かった)10センチくらいの距離で、もう届くというところで流れていった」

警察や消防などからはまだ幸雄さん発見の知らせはないといいます。

夫が行方不明 池田真里子さん
「(夫は)家にいないことが多いから、出張から『ただいま』と帰ってくると思いながら待っていた。顔見たらちょっとだけ泣きそう。まだ見ていないから。『まだ15年大丈夫。仕事する』と…。思い通りにいかないことが人生だけれど、やっぱり寂しい」

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