能登豪雨の被災地で1つ星シェフが炊き出し「生まれ育った町への恩返し」
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 能登豪雨ではこれまでに9人が死亡、6人が行方不明になっています。大きな被害を受けた石川県輪島市では、ミシュランの一つ星シェフが連日、炊き出しを行い、住民に笑顔を届けています。

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■町野町にとって必要な存在

炭火で焼いたサバ
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 炭火で焼いたサバに、鍋の中には熱々の肉じゃが。被災した人たちに笑顔が戻ってきました。

冨成寿明さん
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 その中心にいたのは、1人の料理人でした。

輪島市町野町
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 能登半島を襲った集中豪雨で3人が亡くなり、1人が安否不明になっている輪島市町野町。人口およそ1800人の町は今回の大雨で土砂崩れが発生し、一時孤立状態となりました。

冨成寿明さん(41)
「手伝ってほしいこととかないですか?ボランティアさん3人います」

地元の住民
「ここの泥がちょっと邪魔で」

冨成さん
「泥がね。了解です」

地元の住民の要望を聞いて回
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 冨成さんは地元の住民の要望を聞いて回ります。

冨成さん
「向かいの家の方が一輪車で泥を運んでほしいということがありまして」

 ボランティアにその場ですぐに指示を出します。そして、冨成さん自らも率先して作業します。

石川県内からのボランティア
「そういう人がいないとみんな動けないので、いてくれてありがとうという気持ちと、1人で全部やらなくてはいけないのがすごく大変だなと思いますね」

率先して作業するだけでなく…
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 冨成さんは災害支援のNPO法人などと協力して、町野町でボランティアをやりくりする役割も買って出ています。

「みんなが得意なことを」
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冨成さん
「大雨で対応がなるべく早い方がいいということで、自分たちで動いているのですけど。民間・行政・支援団体さん、それぞれ得意なことがあるので、みんなが得意なことをやればうまく回ると思っている」

 そんな冨成さんは町野町にとってなくてはならない存在だといいます。

災害支援のNPO法人
「地域のネットワークを持っているので非常に活動の核となる中心となる方」

 どこで人手が足りないのか、どこを急ぎで作業するべきなのかを一番分かっているからこそ頼りにされているといいます。

■避難所に毎日、炊き出し 住民「最高です」

町内の避難所に向かう
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 清掃作業がいち段落した後、冨成さんが向かったのは町内の避難所です。

炊き出しを行う
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冨成さん
「きょうは塩サバの炭火焼きと肉じゃがと白ご飯ですね」

 避難所の人たちのため、炊き出しに汗を流します。

「ミシュランガイド北陸」で一つ星を獲得
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 冨成さんの本職は2021年に「ミシュランガイド北陸」で一つ星を獲得した料理人。

町野川の食材を使った懐石料理
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 特にこだわっていたのは今回氾濫した町野川でとれる食材を利用した懐石料理でした。

 そんな冨成さんが作る炊き出しには、料理ができる前から行列ができていました。

避難所の住民
「おいしいですよ。おなかすいてるもんで余計おいしい」
「最高です」

 温かい料理で心も温まり、避難所には笑顔があふれます。

 しかし、今回の大雨被害は住民に暗い影を落としています。

■生まれ育った町への恩返し

柳田尚利さん(51)
「(Q.雨の被害は大丈夫でしたか?)車が水没しました」

車が水没、車内は泥だらけに
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 避難所で暮らす柳田さんは大雨当日、七尾市に買い物に出かけていて難を逃れましたが、妻の仕事場が濁流にのみ込まれ、車が水没。車内は泥だらけになってしまいました。

 外出していた柳田さん親子も土砂崩れで避難所に戻ってくることができませんでした。

柳田さん
「月曜日の昼には戻ってきた。前日の夜ぐらいに孤立が解消した」

能登半島地震が発生直後も炊き出し
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 そんな住民たちの支えになっている炊き出し。冨成さんは能登半島地震が発生した直後も炊き出しをしていました。当時の取材にも自宅が半壊する被害を受ける中で炊き出しをする冨成さんの姿が映っていました。

「みなさんの元気のおかげ」
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冨成さん
「みなさんの元気のおかげで僕も続けられるのでありがたいですね。『食べることの喜びを提供したい』というのもあるが、『元気だった』『大丈夫だった』という話をしているのを見ていると、こういう場はすごく大事だなと改めて思います」

毎日欠かさず炊き出し
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 毎日欠かさず、町内の避難所へおよそ150食分の炊き出しを昼と夜の2回行っています。ボランティアのコーディネートに炊き出し。冨成さんがここまでする理由は、生まれ育った町への恩返しでした。

生まれ育った町への恩返し
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冨成さん
「この町の地区のみなさんが親戚みたいなものなんです。小さいころからお世話になって、その親戚みたいなおじさん、おばちゃんたちが困っているのを見ると、やっぱり僕としては恩返ししたいので今は動いている」

震災前から改築中だった店舗
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 震災前から改築中だった店舗は工事がストップし、半壊した自宅も手つかずのままです。冨成さんは、町の復興のために自身のことは後回しにしているといいます。

 震災直後から、妻の実家で暮らす家族とも離れて生活しています。定期的に会ったり、毎日電話で会話したりしているといいますが…。

家族とも離れて生活
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冨成さん
「離れ離れはさみしいが、この状況で子どもたちの幸せとかも考えると、運動もできないし勉強もできない環境にあるので。こっちが復興して店も再建できた時、また子どもたちと妻を呼び戻してこっちで頑張りたいなと思っています」

(「グッド!モーニング」2024年9月27日放送分より)

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