独自の”週休3日”で売り上げ過去最高 老舗黒板メーカーの挑戦
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休みが1日増えても給料はそのまま。誰もが憧れる週休3日制。この制度を独自のルールの下で導入し、大成功を収めた企業があります。それは体力のある大企業ではなく、従業員わずか25人の中小企業。しかもベンチャー企業ではなく、老舗の黒板メーカー。さらに最高売り上げまで達成しました。

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「働き方改革」の一環として政府も推進している選択的週休3日制ですが、導入している日本企業は7.5%に留まっているのが現状です。企業側にも従業員側にもメリットが多い週休3日制の職場とは?(9月28日OA「サタデーステーション」)

■水曜にベースの練習…双子のママは子どもと海へ

本来、働いているはずの水曜日、ベースをかき鳴らしていたのは、部長の藤森さんです。

「これは近々あるライブの練習ですね」

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同じ頃、直属の部下・兵頭さんは、海辺で双子の子どもたちと遊んでいました。

「リフレッシュして過ごせました」

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2人が勤めるのは、従業員わずか25人ながら独自の週休3日制を導入し、大成功した企業です。

黒板メーカー「サカワ」 坂和寿忠社長(38)
「中小企業は1人休むとかなり打撃が大きいのはあるんですけど、時代に乗り遅れないよう、チャレンジしたい気持ちがありました」

■“週休3日”どう実現?社員も会社も喜ぶ“ルール作り”とは?

愛媛県東温市に本社を構える、創業104年の黒板メーカー「サカワ」。

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最近では黒板用のプロジェクターを開発。図形や文章を黒板に投影して、その上からチョークで書き込むことができます。授業の自由度が上がり、板書する時間も省けることなどが好評で、全国に1万台以上が導入されています。

社長の坂和寿忠さんは、およそ1年半前に世の中の「週休3日制」を3パターンに分類し、自社に導入するならどのパターンが良いかを比較検討しました。

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まずは、休みが1日増える代わりに、給与が減るパターンです。

黒板メーカー「サカワ」 坂和寿忠社長(38)
「これは働きたくても働けない人が出てしまうのでうちには合ってないと思いました」

次に、給与を減らさないために、1日の労働時間が2時間ずつ増えるパターン。

黒板メーカー「サカワ」 坂和寿忠社長(38)
「従業員の中には、午後5時には退勤して夕飯を作る父親もいらっしゃいますし、これもうちにとっては向かなかったので、不採用となりました」

最後は、休みが1日増えて、しかも給与はそのままという、経営者にとっては一番ハードルが高そうなパターン。

黒板メーカー「サカワ」 坂和寿忠社長(38)
「これは文句なしで従業員の誰もが喜ぶ制度だなと思ってこれを採用しようと」

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坂和社長はこの週休3日の導入にあたり、いくつかの条件をつけました。

1つ目は、まず月1回ペースから始めること。2つ目は、売り上げが極端に下がったら止めること。3つ目は、休みは水曜日に固定すること。これは、火曜日と金曜日に翌日に仕事を残さないようにするという“締め切り効果”で生産性が上がることを狙っていると言います。4つ目は水曜日に会社自体は休みにしないよう、従業員を2チームに分けて交代で休むこと。

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実際に従業員2人の休日に密着すると、月1回の週休3日が、従業員にも企業にもプラスに働いていました。愛媛の本社で働く、マーケティング部の兵頭歩リーダーは、休みとなった水曜日、朝から5歳の双子を幼稚園に届け、病院に寄ってから、市役所へ向かいました。

■メリット1「公共機関が利用しやすい」

月1週休3日で働く 兵頭歩さん(42)
「平日の開庁時間しか来られないことがあるので…」

■メリット2「自分時間の確保」

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そして、ここからが心待ちにしていた時間です。兵頭さんが訪れたのはジムでした。このように、子育てママでも「自分の時間を持てる」ことが週休3日の最大のメリットです。ただ、自分時間を持ちたいのであれば、年20日の有給休暇を取るという選択肢もありそうですが…

月1週休3日で働く 兵頭歩さん(42)
「(有給休暇は)子供の体調不良でほぼ消えてしまう。双子なので、1人が風邪ひくと、その3日後ぐらいにもう1人が引くので、風邪をリレーしてしまって…」

この日は、半年ぶりにカフェに行くこともできました。

月1週休3日で働く 兵頭歩さん(42)
「なかなか満足度高い感じです」
Qこの後 双子への対応は?
「いつもの鬼ババ感はないかな(笑)」

■メリット3「子育てにゆとり」

充実した一人時間を過ごすことで、子育てにもゆとりを持てるといいます。幼稚園のお迎えも、普段より2時間ほど早め。子ども達も月1回のこの日を楽しみにしているそうです。

月1週休3日で働く 兵頭歩さん(42)
「若干気持ちにいつもよりは余裕があるし、その分、子供とか家族に優しくできるかな」

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一方、東京支社で働く、マーケティング部の藤森真一部長。休みになった水曜日に訪れたのは、神奈川県内のスタジオです。実は藤森さん、日本武道館でのライブ経験もある、現役のプロミュージシャンでもあります。

月1週休3日で働く 藤森真一さん(41)
「全国ツアーとかも年に1、2回、回らせてもらっています。週休3日が無いまま今の活動はちょっと難しいかな」

■メリット4「本業以外の活動も充実」

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週休3日になったことで、作曲の時間も増え、バンド活動も充実。以前は平日の朝4時半に起きて、車で人気のない山の中まで移動し、車内でベースやギターを弾いてから出社することもあったといいます。

■メリット5「勉強時間も確保」

一方で、今年に入ってから藤森さんが始めたのが、中小企業診断士の勉強です。

月1週休3日で働く 藤森真一さん(41)
「会社のためにもなるし、自分のためにもなるかなと思っています」

■企業のメリット「従業員が生産性を意識」

さらに会社では、藤森さんの提案から始まった、ある統計調査の結果を坂和社長に報告していました。

月1週休3日で働く 藤森真一さん(41)
「本当に断捨離 必要ですね」

黒板メーカー「サカワ」 坂和寿忠社長(38)
「会議多いのはきついなあ…」

藤森さんは坂和社長に対し、管理職が会議に時間を使いすぎていることを指摘。このように従業員それぞれが生産性を意識する働き方に変化しました。

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月1週休3日で働く 藤森真一さん(41)
「自分たちが休みたかったら、より効率の良い働き方をするという、シンプルな考えにみんななっているかなと思います」

月1週休3日で働く 兵頭歩さん(42)
「気持ち良く休みを迎えたいので、(仕事を)貯めてしまわないように」

売り上げも過去最高を達成。今後は、週休3日を月2回にすることも視野に入れているといいます。

黒板メーカー「サカワ」 坂和寿忠社長(38)
「従業員ファーストで考えていけば、最終的にはそれが生産性にもつながるし、結局業績が伸びることになるなと確信している」

外部リンク
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