ニュージーランド議会で、議員らが先住民「マオリ族」の伝統的な踊り「ハカ」を踊り出し、議会が一時中断される事態となった。議員らが突如として踊り出した理由とは?
【画像】法案可決に抗議の意思 伝統舞踊続けてデモ行進 ニュージーランド
■議会は大混乱、一時中断する事態に
突如歌い出し、法案の紙を引き裂く女性議員。周りの議員たちも、女性に合わせて声を上げ立ち上がって踊りだす。
混乱の原因は、イギリスがニュージーランドに入植した際、先住民族であるマオリ族の土地保有などの権利を保障するため1840年に結ばれた「ワイタンギ条約」だ。
14日、マオリ族の権利を保護しすぎているとして、解釈を変更する法案が審議された。
これに「マオリ党」の議員らが抗議。ラグビーのニュージーランド代表が試合前に行う、伝統的な踊り「ハカ」で徹底的に争う意思を示した。
議会は大混乱となり、一時中断する事態となったが、その後、法案は可決した。しかし…。
ニュージーランド北島にある街「ロトルア」から、法案に抗議するおよそ1万人がハカを踊りながらデモ行進を続けていて、19日にも首都ウェリントンに到着するとみられている。
一方、マオリ族の人権に関しては大きな動きも…。
ニュージーランド ラクソン首相
「虐待をする多くの者が野放しとなり、その結果、防げたはずの被害を他の人々が受けてしまったことを誠に申し訳なく思います。政府は責任を取らなければなりません」
12日、ラクソン首相が、国や宗教団体が運営する福祉施設で、およそ70年にわたって未成年者や障害者に対し虐待が行われていたことを認め謝罪したのだ。被害を受けた人の多くがマオリ族だったという。
■ニュージーランドの現状…マオリ族に対して政府は?
ニュージーランドのマオリ族を巡る現状を見ていく。
人口およそ500万人のニュージーランドで、マオリ族はおよそ97万人で全体の19.6%となっている。
一方で、ラジオ・ニュージーランドによると、刑務所の受刑者の割合を見てみると、マオリ族はおよそ半数を占めるようになり、女性に限ってみると3分の2にまで増えるという。
なぜマオリ族の人が、受刑者になってしまう割合が高いのか?
ニュージーランドメディアなどによると、その要因の一つが1948年から行われた「ペッパーポッティング」と呼ばれる政策だという。
これは当時、農村部などで独自のコミュニティーを築いていたマオリ族を、都市部の公営住宅に移住させ非マオリ族との同化を促すというものだった。
しかし、実際に同化が進むことはなく、都市部の中にマオリ族の貧困街が形成されるようになっていったという。
そして、こうした貧困街の近くには警察が多く配置されるようになり、マオリ族に対する過剰な取り締まりが行われるようになっていったという。
AP通信によると、こうしたマオリ族に対する差別は現在も残っており、今年7月に発表された報告書では、1950年から2019年にかけて国や宗教団体が運営する福祉施設でおよそ20万人が虐待を受けていて、その多くがマオリ族だったという。
これを受け、ニュージーランドのラクソン首相は12日、政府として初めて、虐待があったことを認め謝罪。被害者に対して補償を行うと述べたものの、具体的な計画を明らかにしなかったとして、被害者らから批判の声があがるなど問題は根深く残っているようだ。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2024年11月19日放送分より)