カスタマーハラスメント、いわゆる「カスハラ」が今、後を絶たない。三重県の桑名市では全国で初めてカスハラを行った人の氏名を公表するという条例を制定する動きが進んでいる。
【画像】髪の毛抜きラーメンに「おい!入ってる」 「バーカ!」カスハラ電話に切電マニュアル
■「バカ運転手」悪質カスハラに損賠請求も
深夜3時ごろ、タクシーに乗りこむ1人の男性客。酔っ払っているのか、倒れ込むようにシートへ。
男性客
「表参道!」
運転手
「表参道の交差点まで、よろしいですか」
男性客
「早く行けって!早くよクソが。早く行け。表参道行って!」
暴言を吐く男性客。
男性客
「行かなかったらぶっ殺すぞ本当に!」
「おい、早く行け!」
運転手
「今向かってますよ、大丈夫です」
男性客
「早く行けー!」
「本当にぶっ殺すから早く行け!」
何度も「早く行け」と訴える男性。そして突然、男性客は足を上げて、助手席を何度も蹴り付ける。
運転手
「すみません、パネル壊れちゃうんで勘弁してください」
なんとか目的地に着いたものの、支払いをしようとしない男性客。運転手は警察に通報。駆け付けた警察官が男性に支払いを促し、無事運賃は払われた。
さらに、東京駅付近から乗車した女性客。
女性客
「この信号の次かな。左に行って」
運転手
「はい。この信号の次ですね」
運転手は女性の指示通りに走行する。
女性客
「これ抜けられるの?右に行ける?」
運転手
「柵の向こうなので行けないです」
指示通りに行ったものの、女性が進みたい方向は一方通行のため迂回(うかい)していかなければならない状況に。すると…。
女性客
「運転手さんさ、私、西新宿6丁目って言ってるじゃん。こんなバカみたいに遠回りになっちゃってるでしょ」
運転手
「申し訳ないです」
女性客
「料金まけてちょうだい。そんなのバカみたい!」
女性客は運転手のせいで遠回りしたと怒り、料金をまけろと主張。さらに…。
女性客
「料金かかっちゃうもん。嫌だわ、そんなの。払わないわよ。急いでる時に限って、こういうバカ運転手の車に乗っちゃうんだよ」
運転手
「バカ運転手というのはちょっと失礼じゃないですか」
女性客
「バカじゃない。行けない道に行っちゃって」
目的地に到着。すると、女性客は運賃を払いその場を後にした。客によるカスハラ行為で業務に支障が出ることもある。
葵交通 田中秀和社長
「(カスハラを受けた)次の営業の時に、車の運転の時に、今までなら普通に走っていたところをカッときたり、メンタル的にちょっと良くない」
メンタル面の負担や、警察を呼ぶとなると時間のロスも生まれるという。
タクシー会社では運送約款を更新、客がカスハラ行為をやめない場合、「運送拒絶」や「損害賠償請求」もできると定めた。
田中社長
「乗務員にとっても一つの安心材料になる。ある程度毅然とした態度で(客に)申し出できますので、それが(今までと違って)大きな変化」
■髪の毛抜きラーメンに「おい!入ってる」
宮崎県のご当地麺「辛麺」が食べられるお店。
客
「クセになりますね。好きですよめっちゃ」
常連客にも根強い人気の店で20日、防犯カメラに捉えられていたのは驚愕のカスハラだった。
午後2時すぎ、黒い帽子にサングラスをかけた男性客が入店。注文したのは店で2番目に辛い「煉獄(れんごく)」という辛麺。
注文から7分後、男性客のもとに辛麺が届く。1口、2口と食べ進めるなか、突然箸が止まる男性客。
すると驚きの行動に…。左手を束ねた髪の毛の方に持っていくと、なんと髪の毛を引き抜き、そのまま器の方へと手を持っていく。その後、右手に持つ箸でかき混ぜている様子がうかがえる。
さらに、再び髪の毛を抜き、器へ。男性客はその後、水を飲み一息ついて店員を呼び出す。店員が駆け付けると…。
男性客
「おい!髪の毛が入ってるじゃねぇか!」
辛麺に「髪の毛が入っていた」と訴える男性客。しかし、店員はこの男性客に見覚えがあった。
対応した店員
「前回も同じ人が来てて、その時も髪の毛入ってるって同じ人に叱責(しっせき)されてて」
男性客は8月にもこの店に来ていたという。
対応した店員
「全部食べた後に、髪の毛入ってるって指摘されて、さすがにまずいなと思って(その時は)お代は頂かずにしっかり謝って帰したんですけど」
1回目に来店した際の防犯カメラにも今回と同様、自身で髪の毛を器に入れる様子が映っていたという。繰り返された自作自演のカスハラに店長はこう話す。
辛麺 華火・渋谷店 福田康平店長
「従業員にあたってくるのは腹が立ちますよね。あとはもうほんと驚きの一言です」
店はこの男性客を出入り禁止にし、系列店にも情報を共有しているという。
■「バーカ!」カスハラ電話に“切電”マニュアル
様々な業界がカスハラ対策を行うなか、首都高で取られている対策が「切電マニュアル」。
その内容は相手が(1)30分以上同じ内容を繰り返し主張、(2)要求内容が不当、(3)威圧的な発言や口調
のいずれかに該当する場合、相手に理由を伝えた上で電話を切るというものだ。
実際に「切電」を行った実例がこちら。
オペレーター
「何時に終わるという約束、ご案内はこちらでできかねます」
これは今年8月、故障車の移動に時間がかかりすぎているという内容でオペレーターに怒りをぶつける客からの電話。
カスハラ客
「お前らじゃ何の役にも立たねぇ!」
オペレーター
「申し訳ありません。今の段階では正確な時間は…」
カスハラ客
「バーカ!大丈夫か?おい!」
オペレーター
「お客様…」
暴言が止まらない客にオペレーターが…。
カスハラ客
「毎度じゃねーかよ。本当によー!いっつもよ!!」
オペレーター
「お客様、そのように暴言を吐かれるようであればこちらからこれ以上のご案内できかねます」
カスハラ客
「バカ!!」
オペレーター
「お電話切らせていただきます」
カスハラ客
「切るなバ…」
今まではできなかった対応に、オペレーターたちからは安心して仕事ができるという声が上がっている。
首都高 サステナビリティ推進企画課
恩田和典課長
「(電話は)切ってはいけないみたいな、暗黙のルールがあったんですけれども、会社全体として対応するので安心して電話を切れということを社員には伝えている」
また、どのオペレーターがカスハラを受けているか、上司にすぐ通知がいくシステムも導入した。
恩田課長
「カスハラに対してはやはりあってはならないと思っておりますので、そこは社員をしっかり守る」
東京都では全国初となるカスハラを防ぐ条例が成立。さらに、三重県桑名市ではカスハラをした人の氏名を公表する条例が…。その内容とは?
■カスハラ防止条例案 制裁措置で氏名公表も
三重県桑名市のカスハラ防止条例案では、制裁措置としてカスハラを行った人の氏名の公表も盛り込まれた。
来月議会に提出され、来年4月1日からの施行を目指しているということだが、制定されれば氏名の公表という点では全国で初めてということになる。
氏名公表までの大まかな流れは、カスハラ被害を受けた事業者等が市役所に相談して、市が設置した第三者機関で審議し、認定されると市がカスハラを行った人に対して警告をする。この警告に従わなかった場合はホームページなどでカスハラ行為者の氏名を公表するというものになってる。
■氏名公表はやりすぎ?「安心して働ける環境を」
氏名公表はやりすぎなんじゃないかという指摘もあるが、市の担当者はカスハラを事前に防ぐための手段の一つであり、氏名を公表することがこの条例の目的ではなく、あくまで抑止のためということだ。
桑名市の伊藤市長は「このような取り組みで市民が安心して桑名市で働ける環境を作っていきたい」と話している。
そのほかにも東京都では全国で初めてカスタマーハラスメント防止条例が先月成立し、来年4月1日から施行され罰則はない。
そして北海道では26日、カスタマーハラスメント防止条例が成立し、来年4月からの施行。罰則はないということだ。
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年11月28日放送分より)