この記事の写真をみる(7枚)

 前文部科学事務次官の前川喜平氏が名古屋市の中学校で行った特別講義に対し、古巣の文科省が送った一通の質問状が物議を醸している。質問上には「前川氏は公務員の天下り問題により辞職したり、出会い系バーの店を利用したりしていたことが公になっている」という内容が書かれ、どのような判断で講師の依頼をしたのか、具体的かつ詳細に教えるよう依頼している。

 名古屋市教育委員会の藤井昌也指導室長は16日、「授業内容に踏み込んでの質問は、あまり私どもでも経験したことがない」と話す。渦中の前川氏も「学校の一つ一つの授業の内容を国が問合せるなんてことは、本来やってはいけないことだ。不当な支配だ。政治による不当な教育への介入だ」「(文科省の)質問状を出した人たちも"やだな"と思いながら出していると思うので、あまり責めないでいただきたい」と述べている。

拡大する

 前川氏の指摘のとおり、文科省の担当者は19日の野党合同ヒアリングで「外部からの問合せがあった」と明かした。この"外部"こそ、自民党文部科学部会長の赤池誠章参議院議員と同代理の池田佳隆衆議院議員だった。赤池氏は「国家公務員法違反の方が講師としてお話したことに関して、これはどういうことかと」と関与を認めており、文科省も質問案を池田氏に見せ、言われるままに修正したという。ある文科省幹部は「現場はやむを得ずやった。政治の圧力に対抗することが省内でできなくなっている」と話しているといい、自民党の村上誠一郎衆議院議員も20日、「文科省が独自の判断で教育基本法に抵触するようなことをやってしまったが、自民党がそういうことを希望していると忖度してやられたと取られかねない」と懸念を示している。

■元文部科学官僚の寺脇研氏「リークした職員がいたと思う」

 24日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』に出演した元文部科学官僚の寺脇研氏は「普通は絶対にやらないことだ。教育基本法の精神や、各自治体の委員会の良識でやってもらって、それを議会でチェックするという教育委員会制度の精神に入っていってしまったという問題がある」と話す。

 「あまり言われていないことが、なぜこの文章が表に出てきたのかといえば、やっぱり加計学園の時と同じように、"これはいくらなんでもひどい"と、文科省の中からマスコミにリークした職員がいたからだと思う。憲法15条の"全体の奉仕者"になることを誓って公務員になる。別に政治家に反逆しているというわけではなく、無私の精神でやらないといけないのに、引きずられてやってしまうと、全体の奉仕者としての矩をこえてしまうのではないかと懸念したのだろう」。

拡大する

 政治評論家の有馬晴海氏は「自民党の議員が納得しなければ、官僚がやろうとする文部科学行政ができない。その自民党の窓口が部会長だ。そうなると、赤池さんの言うことは聞かないといけないということがあったのだろう。結果的に人事にもつながると思えば、やはり忖度というか、政治の圧力的なものがある」と指摘、元総務官僚で、民進党の小西洋之参議院議員も「"あの官僚、野党の肩を持ったよ"、"前川さんの件について、ちゃんとやんなかったよ"というような噂を流すだけでいい。そういう世界だ」と話す。

拡大する

今回の問題の背景には、加計問題で官邸の圧力を認めた前川氏を快く思わない自民党への忖度があったと指摘する声もある。また、元財務官僚の山口真由氏が「省内に前川派、反前川派というのがあると聞いている。部会の議員に困ったことを言われても、政務官などに相談できる環境があるのではないか」と疑問を投げかけると、寺脇氏は「相談はできると思うが、落ち着いて考えることができなくなっているのではないか。また、前川派とか反前川派ということではない。前川さんが次官の時には、ほぼ全員が心服しているくらいの人望があった。しかしこうなってしまった以上、前川さんに情で接してはいけないと思う人も確かにいるし、それでもまだ情を持っている人がいるのも事実。基本的には理屈で動くのが役人の世界だ。前川さんが処分を受けた天下りの件では、別の元次官も再就職あっせんで処分を受けているが、その人も学校に行っている。それなのに前川さんだけをチェックするのはおかしくないか」と説明した。

拡大する

■国のチェックは必要なのか?

 医師の友利新氏は「親の立場としては、教育内容を国にチェックしてもらいたいと思う人もいるのではないか」と

拡大する

 寺脇氏は「もちろん公立の学校でも説明責任が求められるし、学校が人を呼ぶ時に保護者に何の相談をせずにやるということではない。今回の名古屋の場合も生徒だけに聞かせたのではなく、"保護者の方、地域の方、議員さんでもどうぞ聞きに来てください。なにか問題があったら言ってください"という形だったし、校長が事前に色々なところに周知徹底していた。名古屋市の教育委員会の責任でやっていることで、国会議員よりも身近な名古屋市議会議員が議論しているならなんの問題もない。国が入ってくるのはちょっと変だ」と反論、小西議員は「本当の法律違反であれば文科省は指導や助言ができる。実際、過去に指導された学校もあるが、森友学園の塚本幼稚園の教育勅語暗唱は最後まで指導されなかった。そういうことはおかしいと思う。私は指導すべきではないかと言ってきた」と補足した。

拡大する

 自民党の松川るい参議院議員は「論点は2点あると思う。どこの小学校であろうと国として気にすべき問題はあるので、その場合は文科省が指導やチェックするということはありえる。ただ、今回のことがそれに当たるのかどうかという点。もう一つは、知らない方は誤解されているかもしれないが、国会議員が役所に問合せるのは日常的なこと。赤池議員が照会したこと自体が問題なのではなく、それが圧力になり、忖度せざるを得ないことになってしまったのかどうかだ」と指摘した。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より)


▶次回『みのもんたのよるバズ!』は2周年記念特番、31日(土) 夜8時から放送。

【2周年記念特番】みのもんたのよるバズ! | AbemaTV(アベマTV)
【2周年記念特番】みのもんたのよるバズ! | AbemaTV(アベマTV)
朝と昼の顔を務めたみのもんたが初めて夜の報道番組でキャスターに復帰!スマホで見るテレビを舞台に、日本の未来を担う若い世代、まさにスマホを使いこなす世代を本気で応援する生放送の報道番組です。土曜夜の放…
この記事の画像一覧
この記事の写真をみる(7枚)