尖閣の国有化以降の"冬の時代"を経て、先週、安倍総理が7年ぶりに中国を公式訪問。習近平国家主席もにこやかに雪解けムードを演出した。しかしその裏で、海上自衛隊が南シナ海で潜水艦を使って異例の実戦訓練を行っていたことが報じられた。
しかもその海域は、中国が一方的に領有権を主張、人工島を次々と建設し、滑走路やレーダーを配備して軍事拠点化している、いわゆる"赤い舌"の内側だ。訓練について、小野寺防衛大臣(当時)は「南シナ海での潜水艦訓練は15年以上前から幾度も実施、昨年度、一昨年度にも行った」としている。
27日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』に出演した海上自衛隊で潜水艦艦長も務めた伊藤俊幸・金沢工業大学虎ノ門大学院教授も、こうした訓練自体はもともとやっており、数日後に発表するのも普通のことだと話す。
「特に日本の潜水艦は音が静かで精度が高いので、おそらく中国は見つけられていない。"赤い舌"の内側は中国のものだという主張については、仲裁裁判所でもこんなバカなものはないと断じられており、イギリスなどフランスなど、各国が"あなたの海洋政策は根本から間違っている"と意見を言ってきている。仲良くはするけれど、悪いところは悪いという大人の対応で、それを行動で見せているだけだ。日本は安全保障について、すぐに"白か黒か"の二元論になるし、自衛隊が動くとすぐに"戦争か"、という話になるが、それは間違いだ。もうそういう時代ではない。これは全部メッセージで、戦争にならないためにやっている。中国もアメリカもイギリスもオーストラリアもみんなやっている」。
実際、今年8月にはイギリス海軍の揚陸艦が南シナ海を航行、先月末にはアメリカのイージス艦も「航行の自由作戦」を実施している。
伊藤氏は「アメリカが特別なことをしているように見えるが、ただすっと通っているだけ。そもそも領海ではなく、公海。公海には航行の自由があるが、中国だけ、事前に許可を取れという。しかし、これで一触即発になることもない。乗っていた人間が言うから間違いない」と断言。「米中関係は間違いなく冷戦に入る。アメリカは去年の段階から、国家戦略、軍事戦略を含めて完全にターゲティングしてきた。日本はそんな中で挟まれてしまうが、仲介役も含め大きなポジションにいる。経済面ではつなぎ役をしながらも、軍事的にはやることをやる。その2面をきちんとやることが重要だ」と指摘した。
また、ジャーナリストの有本香氏は「日本は基本的にはアメリカの陣営にいるが、やはり中国は隣国なので、いたずらに危機的状況を煽り立てるのは良くない。それでも日本が何を考え、どういう価値観なのかははっきりさせないといけない。だからこそ日中首脳会談で安倍総理は中国の人権問題に言及したのだろう。中国はこれまでも友好・融和のムードを出すと同時に軍事的なプレッシャーをかけてきた。だから今回の問題は、日本も"これからはそれに近いことをやりますよ"というのを示す意図があったのではないか。南シナ海は遠いところなので、日本人はあまり関係ないと思いがちだが、日本にとっては生命線を握るシーレーン。そのことを知ってほしかったという狙いも政府にはあると思う」と述べた。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より)