「トランプ大統領の違法行為の隠蔽に加担したことを心から恥じている。彼は人種差別主義者の詐欺師でペテン師だ」。
米朝首脳会談が物別れに終わった背景には、同じ日に行われたトランプ大統領の元顧問弁護士で、"元腹心"ともいえるコーエン被告に対する公聴会があるとの見方もある。
コーエン被告は会談が始まるのとほぼ同時にロシア疑惑について議会で爆弾証言をした。それによると、トランプ大統領は選挙期間中にクリントン陣営に打撃を与える大量のメールが暴露されることについて事前報告を受けると「素晴らしいじゃないか」と反応したという。さらに公聴会では、トランプ大統領が不倫関係にあったとされるポルノ女優のストーミー・ダニエルズさんへの口止め料として渡した署名入りの小切手も提出された。この模様は生中継され、アメリカの報道は米朝会談よりもロシア疑惑一色となったようだ。
27日の会談冒頭、北朝鮮の金正恩委員長が見つめる中、記者から飛び出した「コーエン被告の証言についてどう思うか?」との質問。トランプ大統領は回答することなく、質問した記者は夕食会の取材から排除されたという。さらに28日の会談後の会見でトランプ大統領は「あんな"フェイク公聴会"がこの重要な会談の間に行われた。とんでもないことだ。しかもあいつは嘘ばかり言っている」と批判した。
ミュラー特別検察官によるロシア疑惑の捜査も大詰めを迎えており、近く議会に報告される見通しとなっている。ここにトランプ大統領の関与や司法妨害疑惑が盛り込まれると、民主党は大統領弾劾の手続きを開始し、政権の行方を揺るがしかねない。
2日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』に出演した明治大学教授の海野素央氏は「時系列で言えば、米朝首脳会談は2月5日の一般教書演説でトランプ大統領が発表した。そして公聴会は2月7日に設定されていたが、コーエン被告が"家族がトランプ大統領とその弁護士のルドルフ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長に脅迫されている"と訴えたことで延期になった。公聴会の日程を決める権限は下院議長と委員会の委員長が握っているが、今は民主党が多数派なので、20日になって、27日の米朝首脳会談にぶつけることにした。生中継も取られてしまうので、トランプ大統領は怒った」と説明する。
「ここで物的証拠としてコーエンに宛てた小切手が出てきてしまった。トランプタワーの住所とトランプのサイン、そして分割払いであることもわかる。さらに日付を見てみると、大統領になってから支払っていることがわかる。もし来年の選挙でトランプ大統領が勝てばあと4年は起訴されないが、もしも負ければミュラー特別検察官の最終報告書がダメ押しになって選挙資金法違反と共謀罪で起訴される可能性が高い。ただ、報告書を受け取る予定のバー司法長官はミュラー特別検察官を批判している人で、トランプ大統領に都合が悪いところを書き換えるんじゃないかと民主党は主張している。また、次の大統領選挙では、上院の3分の1が入れ替えになるが、圧倒的に民主党有利になる見通しだ。つまり上院も民主党、下院も民主党になると、後はもう"世論"だ。弾劾の"弾"くらいまでは見えてきたのではないか。トランプ大統領としては大きなダメージだろうし、北朝鮮としても小切手が出てきたから交渉で譲歩すると考えたと思う」(海野氏)。
タレントのパックンは「自分の人生をトランプに捧げた人。コーエンは5月から3年間刑務所に入ることが決まっている。司法取引すればもっと刑期が短くなるはずだが、トランプ大統領以外のことは話したくないということだった。外部委託業者への未払いの処理、電話での脅迫など、10年にわたって色々な黒いことをしてきた。それらはトランプのためにやったのに、捕まったら"あいつのことは知らない"と裏切った。だから裏切り返した。証言後には泣いていたが、"俺は10年間トランプに騙されて、かばい続けたことによって全てを失った。家族も人生も自由も全部失った。トランプについていく人、君たちもそうなるよ"という発言が印象的だった」と話す。
「一括で口止め料を渡してしまったらすぐにバレてしまう。分割払いにして、コーエンへの弁護料ということにしようという作戦だ。選挙法上は口止め料を払ってもいいが報告義務がある。トランプ大統領はこれだけ疑惑を抱えているので、複数の法律事務所に顧問になるのを断られている。トランプ支持者の中には、不倫疑惑を称賛している人もいるくらいだが、世論調査で弾劾を求めるような意見が見えてくると、与党の共和党議員も職を失うということで守ってくれなくなる。これはもう陰謀論の領域だが、一発逆転の方法として、本当にだめになったら戦争を起こすのではないかという見方もある」(パックン)。
民主党が多数を占める下院では、トランプ大統領が「国境の壁」建設のために出した非常事態宣言を無効とする決議案が可決されている。上院でも共和党の一部議員が賛成に回ることを表明していることから可決の可能性が高まっているが、その場合、トランプ大統領は大統領権限で決議を拒否するものと見られる。トランプ大統領への逆風はさらに強まりそうだ。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より)