先月27日、日米首脳会談後の共同記者会見に臨んだ安倍総理とトランプ大統領。「朝鮮半島の平和と安全を巡っては安倍総理とこれからも緊密に協議する。北朝鮮に対する我々の基本方針は"力による平和"だ」と話したトランプ大統領に対し、安倍総理も「日米の立場は完全に一致している」と強調した。
また、拉致被害者家族と2度目の面会を果たしたトランプ大統領は「皆さんの子ども、兄弟、母親を取り戻すために協力する。一緒に頑張ろう、シンゾー」と語りかけ、安倍総理は「次は私自身が金正恩委員長と直接向き合わなければならないとの決意だ。条件を付けずに金正恩委員長と会って、率直に虚心坦懐に話をしたい」「トランプ大統領から全面的に支持する。あらゆる支援を惜しまないとの力強い支持を頂いた」と話した。
一方、先月発射された短距離弾道ミサイルについては認識の相違も見られた。トランプ大統領が「分かっているのは核実験も長距離弾道ミサイルの発射も行われていないということだ」「私の政権内には制裁決議違反だという側近もいるが、私の見解は違う。金委員長は私の関心を引こうとしているだけだ。大した問題ではない」と述べたのに対し、安倍総理は「北朝鮮による短距離弾道ミサイルの発射は関連する安保理決議に違反するものであり、極めて遺憾だ」と述べている。
そんな中、2月の米朝首脳会談の"失敗"を受け、北朝鮮政府内で大々的な粛清が行われた可能性が報じられた。朝鮮日報は先月31日、消息筋の話として、米朝交渉の担当者だった金革哲特別代表がアメリカに取り込まれて、金委員長を裏切ったスパイ容疑が適用され、処刑されたと報じた。また、対米交渉を統括してきた金英哲副委員長が解任され地方で思想教育と強制労働へ、対米実務協議を担い対日接触の窓口ともされた金聖恵統一戦線策略室長も政治犯収容所に送られたという。そして"融和路線"の象徴的な存在だった金正恩委員長の妹・金与正氏も"出過ぎた行動"が問題視され謹慎中なのだという。
1日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』に出演した自民党の松川るい参議院議員は「外交関係の人は最高委員会にも入り、処罰もされずにみんな残った。失敗ではなかったという整理をつけようとしたが途中でうまくいかなくなったのだと思う。何らかの落とし前をつけないと国内的に持たないという判断があり、こういうことをやらざるを得なかったのだろう」と話す。「今、どういう戦略でやっていったらいいか、すごく悩んでいると思う。ロシアに行ってみたがうまくいかなかったし、国内でも並進路線から経済開放路線にかじを切り、寧辺を差し出したら制裁も解除されてうまくいくと思ったらうまくいかなかった」。
粛清が事実だとすれば、次の交渉相手は誰になるのだろうか。
松川氏は「答えられる人はいないと思う。平昌オリンピック後から段階を経て米朝首脳会談につながったが、その中心人物は金英哲と李洙墉。金革哲はメジャーではなく、ハノイの米朝に向けて出てきた人だ。この先どうなのか分からない」とコメントした。
「金委員長は、核があっては経済的発展が叶わないと分かっている。だから、いずれ非核化をやるだろう。私は全く急いでいない」と述べたトランプ大統領だが、再び強い態度、さらには斬首作戦に出るという可能性はあるのだろうか。
政治学者の中林美恵子氏は「いずれにしても、こないだのミサイル発射について安保理決議違反であると言っているボルトンさんに対し、トランプ大統領は"まあまあ"と、側近に対して反対の意見を言っている。やはりトランプ大統領しか北朝鮮と渡り合える人がいないというのは確かに現実だ」と話していた。
なお、3日付の朝鮮中央通信は、2日に金正恩委員長が芸術サークルの公演を鑑賞した際、同席した"党中央委員会幹部"の一人として金英哲氏を挙げている。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より)