トランプ大統領が"不平等だ"として改定に言及した、日米安全保障条約。6月29日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』で、自民党の参議院議員で外務副大臣の佐藤正久氏、外交ジャーナリストの手嶋龍一氏がこの問題について議論した。
佐藤氏は「一般論として、同盟というのは価値観、負担、リスクの共有の3つからなる。日米安保の5条と6条からすると、日本はアメリカが攻撃されても守らない代わりに、日本の安全や極東の平和と安定のためにアメリカに基地や施設を提供しているが、トランプさんが言ったようにリスクを共有していない部分はある。先日、トランプ大統領が"日本のタンカーは日本が守れ"と発言したが、私がイラクに派遣された2004年、ペルシャ湾で日本のタンカー高鈴が武装勢力に攻撃された。その時、アメリカ海軍の2名、コーストガードの1名が高鈴を守るために命を落とした。それでも彼らは"同じ活動をやっている仲間を助けるのは当たり前だ"と言ってくれた。当時、海上自衛隊はインド洋でテロとの戦いで給油支援、航空自衛隊はクウェートで輸送支援、そして私たち陸上自衛隊がイラクで人道支援をやっていたからだ」と指摘。
「実際は役割分担があって、アメリカは日本の自衛隊の協力なしには在日米軍基地を守れないし、空母が動く時にも在日米軍だけでは防御が弱いので、海上自衛隊が持つ世界最高レベルの対潜水艦能力が効いている。RMC=Role Mission Capabilityといって、お互いにどういうところを補い合うかを調整している。だから自衛隊がまず動かなければアメリカが前面に立って守るということはあり得ないし、日米安保は機能しない。しかし日本人も日米安保5条、6条はあまり知らないし、状況も変わった。アメリカの国内状況を見ても、日本が汗をかかないのに、自動的に参戦するということは世論が、議会が承認しない」。
手嶋氏は「敗戦国の日本は1951年、アメリカと旧安保条約を結んだ。この時の日本は自らの主権を制限しアメリカ軍に基地を提供したが、驚くべきことにアメリカには日本を守る義務がないという、本当に片務的な条約だった。そこで安倍総理のおじいさんである岸信介総理が改定したし、これまで通り基地を提供する代わり、日本が攻撃された時にアメリカは日本を防衛する義務を負うことになった。これがよく"非対称な同盟"と言われるが、社会党の総理大臣も含めて共通の認識だった。アメリカも民主党・共和党どちらの大統領もそれを認めていた」と説明。
「この一連の発言にはきっかけがある。ホルムズ海峡で現に日本のタンカーが攻撃されているではないかと。これは個別的自衛権の範疇なのに、なぜ日本は自分たちの船を守るための行動を起こさないのかと。さらに前段階として、日本列島越しに北朝鮮の中距離ミサイルが発射されたことについて、トランプ大統領は安倍さんとの電話会談で"自分の国の上空をミサイルが越えたではないか。どうしてこれを撃たないのか"と何度も言ったが、安倍さんは絶句した。あまりにもインパクトが大きいので日本側はこの発言を認めないことにしているが、外務省はちゃんと記録を作っているし、外務副大臣は知っているはずだ。そしてトランプさんは今回、ちゃぶ台を返し、基地を提供しているかどうかは知らない、東京がやられた時にアメリカの若者は命を失うが、ハワイとカリフォルニアがやられても日本は助けに来てくれないではないかと、大変分かりやすい理屈で剛速球を投げてきた。アメリカ大統領は最高指揮官なので、選挙民の、草の根の人たちの仲間の命がかかっているということだ。ただ、実は日本はお金は目一杯出していて、これ以上出してしまうとアメリカ兵が傭兵になってしまう。それに、もし給与まで日本が負担するとなったら、アメリカ兵は怒るだろう。最終的には"命"の問題だ。ワシントンにいた頃、アーリントン墓地に兵士が帰ってくる様子を取材をした。あれを見たら、"お金を"と言っても説得力はないと思う。トランプさんの発言は問題だし、僕は全く納得できない。それでも意義があるとすれば、戦後長く時間が経って、いよいよ安全保障の問題が国会での議論や憲法学者の話を越えて、本当に我々の前に突きつけられたことだと思う」。
お笑い芸人のパックンは「トランプは移民に関しても、経済に関しても、安保に関しても浅知恵に基づいて、誰もが簡単に反応するようなことを言う。ちゃんと勉強していない方が、すぐに反応するようなレトリックが超得意。実際、トランプの発言にほとんどのアメリカ人は頷いていると思う。しかし、非対称的な安保関係を作ったのは日本ではなく、自分の国益を考えてこの形を選んだアメリカだ。しかし、安保条約を改正して、日本人も戦う、お互いの戦争に参戦するぞという約束を結んだとしても、日本が攻撃を受けた場合にアメリカが本当に動く保証はないと思う。それに、日本が軍事的に強くなることは隣国の中国にとっては大きな脅威になる。だから日本はむしろこのままがいいということだ。それをアメリカ人に納得させるのが仕事だと思う」と話していた。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より)