1998年7月25日に発生した和歌山毒物カレー事件(夏祭りの屋台のカレーに毒物が混入され、4人が死亡、63人が急性ヒ素中毒となった事件)で逮捕・起訴された林眞須美死刑囚。長男である林さんは、2019年4月にはTwitterアカウントを開設し、日々情報発信している。
SHELLYがMCを務める『Wの悲喜劇~日本一過激なオンナのニュース~』(AbemaTV ※毎週土曜21時から放送中)は、『ある日突然、犯罪加害者家族になりました。』が今回のテーマ。“犯罪加害者”の家族が、これまでの過酷な体験を赤裸々に明かした。
インターネット掲示板やSNSが普及し始めると林さんへのバッシングは加速し、自身の本名や殺害予告が書き込まれたりしたという。その度に弁護士に相談し削除依頼を出していたが、大事として騒ぎ立ててしまうとそれもまたニュースになり、目立ってしまうため、慎重にこっそりと進めた。
自身の恋愛においてもネット上の情報に足を引っ張られてきたそうで、たとえ恋人ができても、林さんが林眞須美死刑囚の実子であると知られると距離を置かれてしまった。
しかし、林さんが事実を話しても「それでもいい」と言ってくれた、婚約者がいた。婚約者の両親には「交通事故で親が亡くなったので、施設で育った」という説明をし、付き合って5年目にプロポーズをした。林さんが婚約者の実家に行くたびに料理を振る舞われ、相手の父親からは「家も将来的に君のものになるから」と言われ、「すごく良くしてくれる両親」だったと林さんは語る。
婚約者からも「(両親には林眞須美死刑囚の実子だと)言わないで」「改名して田舎で暮らそう」と言われ、事件から離れて幸せになるための提案がいくつもあった。
結婚が近づくと「戸籍ってどうなってるの?」「お墓はどこにあるの?」などの質問が婚約者の両親から林さんに投げかけられた。嘘をついている罪悪感にずっと耐えていた林さんは「もう嘘をつくのは限界」と悟り、相手の父親に和歌山毒物カレー事件の林眞須美死刑囚の実子であることを明かしてしまった。
すると、相手の父親から「二度と近づかないでくれ」と言われ、婚約は破談に。荷物のやり取りだけしたあとは一切連絡を取っていないという。
林さんは「やっていない」と獄中から主張し続けている母親を放って「自分だけが幸せになっていいのだろうか」と悩み続けていた。当時の心境について、林さんは「婚約破棄になったことで、その悩み(=自身だけが幸せになってもいいのか)がなくなって。気持ちが楽になったというのもあった。すごい複雑でした」と語った。
林さんがTwitterアカウントを開設した当初はほぼ毎日「死に方は考えたか?」「お前も首くくれよ」「被害者の気持ちを考えろ!」といった内容のダイレクトメッセージ(DM)が届いたという。
「事件の被害者の苦しみを尊重するべきということはよく理解している」とした上で、母親の無罪を信じている林さんは「被害者感情を代弁した誰かが僕にぶつけてきても、どうすることもできない」と悲しそうに話す。
両親の逮捕後から18歳になるまで施設で暮らしていた林さん。施設職員に言われた「カエルの子はカエル」という言葉が大きなトラウマになっていると明かす。自身が犯罪を犯すこともなくきちんと生きている姿を発信し続けることで「『カエルの子はカエルじゃない』と伝えていきたい」と述べた。
▲NPO法人・WorldOpenHeart 理事長の阿部恭子さん
NPO法人・WorldOpenHeartは日本初の犯罪加害者家族を対象とした直接的支援を行う団体で、全国の加害者家族からの相談に応じている。理事長の阿部恭子さんは、林さんのように、自身の加害者家族としての半生を公開し、スタンスを表明していく活動は、罪悪感に押し潰されそうになっている他の加害者家族を救っているという。
約10年間、加害者家族への支援活動を行ってきた阿部さんは「加害者家族への理解は広まってきている」と述べつつも「世間の人々は交通事故などで加害者家族となってしまうような『身近なリスク』があることを忘れがち」だという。阿部さんが目指すところは加害者家族への支援の充実ではなく、彼らへの差別感情を撤廃することで「打ち明けやすい、オープンにしやすい世の中にしたい」と述べた。
(AbemaTV/「Wの悲喜劇 ~日本一過激なオンナのニュース~」より)