大切な人を失った悲しみだけではなく、理不尽な差別や偏見の眼差しに晒されることもある自死遺族。当時29歳だった一人息子を自死で亡くした菅野さん(仮名)は、息子の死を知った絶望を打ち明ける。

 SHELLYがMCを務める『Wの悲喜劇 ~日本一過激なオンナのニュース~』(AbemaTV/アベマTV※毎週土曜21時から放送中)は今回『差別される自死遺族』がテーマ。大切な人を自死で失った当事者らがゲストとして招かれ、胸中に残る悲しみや、自死遺族として経験した苦しみを打ち明けた。

国家資格取得直後、なぜ息子は死を選んだのか? 母の葛藤
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 息子は高校卒業をきっかけに親元から離れ、頻繁には会っていなかった菅野さん。同年、息子は看護師国家試験に合格しており、看護師としてのキャリアを歩み始めようとしたところだった。悩みをうかがわせるような連絡は一切なく「息子はまっすぐと未来を見据えて歩んでいたように思えた」と菅野さんは振り返る。

 息子が亡くなる前月、国家試験合格のお祝いも兼ねて息子と会った菅野さんは、そのときの息子の様子を「ぜんぜんそんな感じはなかった」と明かす。息子は好きな野球チームのチケットを家族3人分買ってくれていて、その試合は7月のものだった。また「7~8月には同級生の結婚式があるので、それに合わせて帰省する」とも菅野さんに伝えていた。

 亡くなった息子の看護師国家試験の合格証書は保健所が預かったままとなっていた。保健所から菅野さんのもとに「合格証書を引き取りに来てほしい」という連絡があり、息子の自死を伝えたところ「(合格の)抹消手続きをしなくてはいけない」と言われた。菅野さんはその言葉に、心を抉られるような感覚を覚えたという。

 息子の一周忌まではどうにか気力を保たせようと「感情を全部封印した」という菅野さん。息子の自死から1年が経つとだんだんと鬱状態がひどくなり「眠れない。息子のそばに行きたい」という気持ちが日に日に強くなっていく。病院に相談し、睡眠薬も処方してもらったが、心の苦しみは改善されなかった。

国家資格取得直後、なぜ息子は死を選んだのか? 母の葛藤
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(▲一般社団法人・全国自死遺族連絡会代表理事の田中幸子さん)

 睡眠薬を処方される少し前、菅野さんは一般社団法人・全国自死遺族連絡会の集会に参加。同団体の代表理事である田中幸子さんは「睡眠薬に頼りすぎるべきではない」と菅野さんに伝えたといい、もし田中さんからの助言が無ければ「きっと私、完全な病人になっていた」と菅野さんは語る。

 田中さんは、“自殺”という言葉には「自らが好き好んで自らを殺した」というイメージがつきまとい、「差別や偏見の温床となっている」と指摘する。田中さん自身も長男を過労・パワハラに起因した自死で亡くしており、自死遺族として苦しみ抜いてきた。死者に鞭を打つような“殺”という漢字を使用せず、何らかの原因で追い込まれ「死なざるを得なかったんだ」ということを表す“自死”という単語が広まるよう、自死遺族支援をしながら啓蒙活動を行っている。

(AbemaTV/「Wの悲喜劇 ~日本一過激なオンナのニュース~」より)

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