一般社団法人・全国自死遺族連絡会の代表理事である田中幸子さんによると、自死遺族が直面するトラブルについて「対・教育機関」「対・不動産企業」の2つが多いという。
SHELLYがMCを務める『Wの悲喜劇 ~日本一過激なオンナのニュース~』(AbemaTV/アベマTV※毎週土曜21時から放送中)は今回『差別される自死遺族』がテーマ。大切な人を自死で失った当事者らがゲストとして招かれ、胸中に残る悲しみや、自死遺族として経験した苦しみを打ち明けた。
(▲一般社団法人・全国自死遺族連絡会代表理事の田中幸子さん)
【映像】14歳息子を失った遺族の苦しみ 「マスコミの人どうします?」学校関係者の心ない言葉
「対・教育機関」のトラブルは、自死に関する保護者説明会や調査委員会をどうするかという問題だ。学校側としては、うやむやにしてしまいたい「目の上のたんこぶ」。混乱し、憔悴しきった親が固辞することを期待して、まだ子どもが亡くなったばかりのタイミングで「保護者説明会や調査委員会を開くとマスコミが殺到して、普通の生活ができなくなりますよ。それでもやりますか?」と話を持ちかけることが多いと田中さんは明かす。
当時14歳(中学2年生)だった息子を自死で亡くした枡さん(仮名)も同様の経験があるという。一度は「しなくていい」と答えてしまったが、田中さんのサポートとともに現在は学校側との話し合いを続けている。
田中さんによると、遺族が「しばらくそっとしておいてほしい」といった返答をすると、学校関係者は「遺族側が望んだことなので、保護者説明会は開きません。調査委員会も遺族側が望まないのでしません」と公の場で発言するようになるという。
メディアは、学校名や実名は伏せるよう指示すればそれを守ってくれるのに、学校側はメディアのせいにすることが多く「卑怯」だと田中さんはいう。
田中さんがこれまでサポートしてきた遺族の中には、校長先生が「(生徒の名前)さんは病気で亡くなりました」と、校内放送だけで、自死生徒に関する対応を全て終えた学校もあった。「だからいじめはなくならない」と田中さんは警鐘を鳴らす。番組MCのSHELLYも「大人たちが(いじめに)向き合おうとしてない」と険しい表情だ。
当時56歳だった実母を自死で亡くした伊藤さん(仮名)は、「対・不動産企業」のトラブルに直面した。自死の現場となった実家の売却に関して、心理的瑕疵の告知義務の有無で、不動産企業との話し合いに折り合いがつかなかった。伊藤さんの母は屋内で自死を遂げたが、不動産取引宅建法によって「更地にしても事故物件扱いになる」と話す。
しかし、たとえ1週間でも他の誰かが住めば、心理的瑕疵の告知義務は消滅する。一方で、誰も住まなければ何十年経っても事故物件である。
自死現場が賃貸物件の場合、どのような流れになるのだろうか。田中さんによると、「マンション1棟まるごとの建て替え費用を出してください」と、1億円以上請求された遺族もいたという。これはさすがに裁判でも認められない不当な請求だが、家賃2年分を遺族が支払うのが“相場”だとされている。
田中さんによると、親族の自死を受け遺族が混乱状態のときに金銭に関する話を持ちかけるのは「よくある話」だといい、「大家さんの心理的な慰謝料」という名目で請求されることもあるという。金銭に関するトラブルに巻き込まれた自死遺族に対して田中さんは「まずは相談してほしい」と、誰かに相談する大切さを訴えた。
自死遺族は、自死に対する偏見から生まれる差別や好奇の眼差しに悩まされることも多い。当時29歳だった一人息子を自死で亡くした菅野さん(仮名)は、周りの人が息子の死について「興味本位で聞いてくる」ことに対する苦しみを吐露した。
前述の伊藤さんは、自治体が主催した自死対策会議を傍聴しに行ったことがあるという。自死対策会議とはいえ、自死遺族は一切参加させてもらえず、できるのは傍聴のみ。伊藤さんが傍聴申し込みの手続きをしていると、他人の自死に興味を示す物好きや変わり者のように接された。
自死対策会議当日、座長の第一声は「午後のこの時間って眠くなるよね……」だった。人の生死を議論するべき場なのに、出席者にとっては単調な会議のひとつでしかないように見えた。参加者が興味を示すのは警察関係者が明かす「この現場はひどい、こういう死に方は本当にすごいぞ」といった下世話な内容で、そのときだけ「ノリノリで聞いている」参加者の姿があった。
そんな会議の様子を見て動悸が始まり、気分が悪くなったという伊藤さん。自死遺族を支援する人の中にも、自死の手段や現場に対する興味で携わっている人もおり「人が亡くなったという事実だけ見てほしい」と述べた。
(AbemaTV/「Wの悲喜劇 ~日本一過激なオンナのニュース~」より)