「違いをすり合わせていく“諦めなさ”が大事」 複数の人と同時に付き合う“ポリアモリー”という生き方

 「『あなたにとっての恋ってなんなの?』っていろんな人に聞いて回っている」。参加者がそう話すのは、とある合コン。しかし、ただの合コンではない。ある恋愛のスタイルを理解できる人だけが参加している。

【映像】“ポリアモリー”の当事者を取材

 その条件とは何なのか。主催者のきのコさんは「これはポリアモリー合コンという、ポリアモリーフレンドリーのポリアモリーに興味あるよとか、ポリアモリーだよという人たちが集まって、ポリアモリーについて語り合う会」と説明する。

 「ポリアモリー」とはどんな人のことをいうのか。参加者の1人であるモモさんは「同時に複数の人を愛する実践というか、生き方。それがポリアモリー。浮気ではない。なぜかというと自分の性質を話しているから」と回答。

「違いをすり合わせていく“諦めなさ”が大事」 複数の人と同時に付き合う“ポリアモリー”という生き方

 モモさんには現在、AさんとBさんという2人の恋人・パートナーがいる。それぞれにもう1人付き合っている人がいることは伝えてあり、恋人が複数いてもOKと合意を得た上で恋愛関係を築いている。この形こそポリアモリーだ。

 イベント主催者であるきのコさんもポリアモリーの当事者。自身の性自認は、「ジェンダークィアといって、男性でも女性でもないような、性別がよくわからないという感じ。どんなジェンダーの人を好きになるかというとパンセクシュアル。バイセクシュアルとちょっと似ているが、男性・女性、それ以外のどの性別も好きになるというのが自分の性的な指向ではある」という。

「違いをすり合わせていく“諦めなさ”が大事」 複数の人と同時に付き合う“ポリアモリー”という生き方

 きのコさんのパートナーは、男性が2人と女性が1人。「それぞれのパートナーとの関係はいろいろあるが、“深い絆で結ばれてるな”“大事にしたいな”と思っている人が3人いるようなイメージ」。

 一方で、浮気者と勘違いされることも多いポリアモリー。新たな恋愛の価値観について、20日の『ABEMA Prime』は当事者と考えた。

■「好きの種類が違う。どっちが偉いとかはない」

 きのコさんのパートナーは、交際歴が約8~9年のポリアモリーの男性と、交際歴が約1年の女性、交際歴が約5カ月の男性の計3人。ポリアモリーであることは知らせているが、「嫉妬はあったりする。私も嫉妬することがあるし、相手も嫉妬することはある。ないと思われがちだが嫉妬する人はする」という。

「違いをすり合わせていく“諦めなさ”が大事」 複数の人と同時に付き合う“ポリアモリー”という生き方

 ポリアモリーであることはどのようなタイミングで伝えるのか。きのコさんは「私個人の場合は、早め早めに言った方が揉めにくいと思っているので、片思いの時から言ってしまう。いつ伝えるべきかというルールはないので、人によっては付き合い始めてから言う人もいる」と話す。

 また、交際歴が一番長い男性とははじめ揉めたそうで、「3人目が現れた時が大変かなという気はする。『新しく好きになった人ができた』と言った時、最初の彼とはすごく揉めて別れる話が出たり喧嘩をずいぶんしたりして、ちょっとずつ歩み寄っていったような感じ」と明かした。

「違いをすり合わせていく“諦めなさ”が大事」 複数の人と同時に付き合う“ポリアモリー”という生き方

 では、複数のパートナーがいる中で“誰が一番”というのはあるのか。きのコさんは「私は決められないなと思っている。好きの種類が違うというか、一緒にいてまったりする人と一緒にいてときめく人で、どっちが偉いとかはない。ただそこは人それぞれで、一番、二番を決めている人もいる」とした。

 きのコさんは過去に結婚したが、離婚。今のところ結婚や子どもをつくる考えはないという。それはパートナーとの関係が複雑になるからなのか。「3人以上で結婚する制度が日本にない以上、結婚している2人が権力的に強くて、他の人が弱くなってしまうのは不平等だと思う。子どもはできればみんなで育てられたらいいと思うが、誰かと法的に家族にならなければいけないとは思っていない」。

■「ポリアモリー」という言葉が当事者を苦しめる?

 佐賀県に住む男女3人、西山嘉克さん、ゆかりさん、裕子さんの事例も見てみる。関係は、ポリアモリーの夫とパートナーの女性2人。なんと、それぞれの子どもと一緒にひとつ屋根の下に暮らしているという。

「違いをすり合わせていく“諦めなさ”が大事」 複数の人と同時に付き合う“ポリアモリー”という生き方

 経緯について嘉克さんは「ゆかりさんと結婚したのが9年前かな。当時、裕子さんは仕事の事務局をしてくれていて、(ゆかりさんとは)友人同士という形だった。ゆかりさんと結婚生活をしてまだ1年経ってない時、僕は毎日彼女(裕子さん)と顔を合わせながら、彼女に対しても恋心みたいなものがある自分というのに気付いてしまった」と振り返る。

 隠すのが嫌だった嘉克さんは、裕子さんに好意があることをゆかりさんに報告した。「妊娠中だった。ちょうど安定期に入るかどうかという時で、つわりとかもあって『なんでこんな時期に言うのかこいつは』と。『こっちの身にもなってみやがれ』『ありえない』という思いで、自分の中ですごい葛藤していた」とゆかりさん。

 大きくなるお腹を前に、その時は3人一緒に暮らすことは全く考えていなかった。しかし、3人はポリアモリーという言葉について共通して思うところがあるという。

「違いをすり合わせていく“諦めなさ”が大事」 複数の人と同時に付き合う“ポリアモリー”という生き方

 裕子さんは「いろんな人を好きになってしまう人にとっては、ポリアモリーというものがあることで“人としてあなたは間違っていないんだよ”と。デメリットを言うと、ポリアモリー(という言葉)がひとり歩きしていっちゃうと、本来は守るべき枠組みのはずなのに、その枠が逆に人を苦しめる」と語る。

 ポリアモリーという言葉の存在が、なぜ当事者を苦しめるのか。「私たちも一時期は“ポリアモリーです”とか“一夫多妻です”と表に出していたが、結局何が起きたかというと、その目でしか見られないんだなと。個人の西山裕子・西山嘉克・西山ゆかりではなく、『ポリアモリーの人たちね』で終わってしまう。ポリアモリーという言葉ができたおかげで守られる人もいれば、ポリアモリーという枠組みだけで見られてしまうのは悲しい」と裕子さん。ゆかりさんは「ポリアモリーも個性の1つだ」と話した。

■「違いをすり合わせていく“諦めなさ”が大事」

 ポリアモリーへのイメージについて、当事者へのカウンセリングを行っている臨床心理士の梨谷美帆氏は「複数の方を好きになる気持ち自体が不自然だとかおかしいわけではなくて、その関係性をどう運営するか。好きになることをどう好きな人たちで調整していくか、みんなが納得するかというのがポリアモリーだ。複数の気持ちを持っていること自体がポリアモリーという意味合いではない。そういう傾向というか自分の気持ちを知ってポリアモリーと名乗っている方は今の日本にいらっしゃるので、ちょっと概念として混同されていて、余計に“ポリアモリーの人”というイメージのブレがあるのではないか」との見方を示す。

「違いをすり合わせていく“諦めなさ”が大事」 複数の人と同時に付き合う“ポリアモリー”という生き方

 きのコさんや西山さんははじめパートナーと揉めたが、その後関係が成り立っている。ポリアモリーの中でも関係性に違いはあるといい、「どこまでがOKでどこまでがNGかはその関係によって違う。『好きになって気持ちを持ってデートに行ってもいいけれどもセックスはやめて』とか、『セックスがあった時にわざわざ言わないで欲しい』とか。ポリアモリー同士でも相手がそうではなくても、境界はその方たちが決めることだ。ご相談の中では、そういう話し合いの調整をするとか、約束事を紙に書く、公式な文書にまとめるといった方もいらっしゃる。ポリアモリー同士でないと成り立たないというわけではない」とした。

 一方で、ポリアモリーには結婚のような制度はなく、社会に容認されづらいというデメリットがあるのも事実だ。2ちゃんねる創設者のひろゆき氏は「1対1の場合だと、結婚や内縁の妻といった制度で何かあったらフォローされる社会的な仕組みがある。しかし、それがポリアモリーにはないので、立場の弱い人がいいとこ取りをされて“歳とったからもういらないや”みたいになってしまうのではないか。社会制度の助けてくれる部分も使えなくなるというのは、あまり勧めるべきではないと思う」と指摘する。

「違いをすり合わせていく“諦めなさ”が大事」 複数の人と同時に付き合う“ポリアモリー”という生き方

 梨谷氏は「私もみんなに勧めているわけではないが、選択肢のひとつとして考えてみる価値のあるスタイルなのかなと思う。きのコさんのように、婚姻という制度を利用せずに関係を維持していくという意味では、偏りなくある程度平等な関係も築けたりする。もちろん、ポリアモリーの中でも関係性がどちらかに偏りすぎるのはあり得ることで、ポリアモリーが全てを解決するといったものではない。1対1の関係でも誰かがいたら全てをまかなえるというわけでもないし、いろんなやり方があったらいいのかなと思う」と返した。

 きのコさんは「1対1であっても3人以上の関係であっても権力に傾斜がついてしまう中で、ポリアモリーは“みんなが対等である”“みんなが権力的に平等である”ということがものすごく大事だと思う。なので、誰にでもお勧めできる、誰でもできるというスタイルでは全くない。私が心がけているのは、『私はこうしたい。私はこれが好きだ。これが嫌だ。あなたはどうか?』という問いかけを必ずすること。自分を一方的に押し付けたり、相手に一方的に従属するのでは絶対にできない関係なので、違いをどこまですり合わせていくかという“諦めなさ”が大事かなと思う」と話した。

(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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