11月23日のカタール・ワールドカップ(W杯)初戦・ドイツ戦まで、ちょうど2か月というタイミングで行なわれるアメリカとのテストマッチがいよいよ目前に迫ってきた。

 9月19日からドイツのデュッセルドルフで活動中の日本代表は、21日からは冒頭15分のみの練習公開に移行。メディアをシャットアウトして入念な戦術確認を行なった。

 20日の公開練習時には4-2-3-1をテストした森保一監督。鎌田大地(フランクフルト)と久保建英(レアル・ソシエダ)というトップ下要員が揃って所属クラブで好結果を残していることもあり、最終予選の序盤までベースにしてきたこの形で今回はトライしようとしていると見られる。

 そうなると、右サイドは最終予選の計12得点中7ゴールに絡んだ伊東純也(スタッド・ドゥ・ランス)がやはりファーストチョイス。同ポジションの候補者、堂安律(フライブルク)は今回もベンチスタートが有力視される。

「スタメンじゃないっていうのも今の立場上、分かってますし、自分の好きな状況なので、得意かなと思います」と堂安は野心を燃やしている。ただ、今夏に赴いたフライブルクでの一挙手一投足を見る限り、先発で使わないのはもったいない。そう言わざるを得ないのだ。
 
 今季開幕からの堂安は、ゴールに直結する切れ味鋭いパフォーマンスを見せつけている。新天地デビュー戦となった7月31日のDFBポカール1回戦・カイザースラウテルン戦で見事なFK弾を決め、チームを勝利に導くという華々しいスタートをまずは切ったのだ。

 続く8月6日のブンデスリーガ1部の開幕戦・アウクスブルク戦でも公式戦連続ゴールをゲット。9月に入ってからも3日のブンデスリーガ第5節・レバークーゼン戦、8日のヨーロッパリーグのグループステージ初戦・カラバフ戦と続けてゴールしており、ここまでで早くも公式戦4得点を挙げているのである。

「コンディションはかなり上がっていると思いますし、フライブルクでのパフォーマンスができれば、間違いなく代表でも良い仕事ができる。そこは心配していない。前より焦っていないというか、黙ってチャンスを待つだけなので、使ってくれればできる自信がある。今はすごいリラックスしています」と、本人も非常に余裕ある状態で代表に合流した模様だ。
 
 3月の最終予選の大一番・オーストラリア戦での屈辱的な代表落選を経て、6月シリーズで変貌の兆しを見せた堂安。さらに3か月が経過した今、周りを使うところと、自分で行くところのメリハリがより明確につけられるようになっている。

「意識してそこを変えたつもりもないんですけど、調子が良い時なので、身体が勝手に反応しますし、コンディションが良い分、周りの使い方もうまくなってきているのかなと思います。仕掛ける位置も正しいポジショニングからできているので、変なボールの失い方もしなくなったし、サッカー理解度も高まっているのかな」と本人もよりクリアな状態でプレー選択ができていると胸を張る。

 そういう時期だけに、代表でスタメンで出たとしても、周りを生かしつつ、自分も生きる最適解を見出せる可能性が高い。とはいえ、伊東というエース級のアタッカーをサブに回すわけにもいかない。森保監督としては、実に悩ましい状況なのだ。

 1つ解決策があるとすれば、2人を共存させることだろう。が、4-2-3-1の場合は2人を両サイドに配するくらいしかアイデアが見つからない。伊東はS・ランスで2トップの一角や左サイドに入るケースもあったが、「前を向いて1対1で仕掛けられる右サイドが自分の良さを一番出せるポジション」だと考えていて、別の位置では使いづらい。

 となると、堂安をトップ下か左サイド、トップなどで起用する可能性を探ることになるが、各ポジションに別の人材がいる。本大会2か月前の今、リスクを冒してチャレンジしている時間的余裕もないだけに、どうしても難しい。
 
 やはり現状では、堂安本人が言うようにサブからのスタートということにならざるを得ないのかもしれない。ただ、控えといっても出場時間を増やすことはできるし、劣勢に陥った時、追加点が欲しい時などにチームを活性化するキーマンにもなれる。

 彼自身も「(先発でも途中からでも)やることは変わらない」と強調。役割に応じたプレーで貢献しようと、良い意味で割り切っているのは心強い点だ。

「このチームは先制された状況で盛り返した試合が少ない。アジアカップとか、最終予選のオマーン戦、サウジアラビア戦とかそうですけど、そこが課題」とキャプテンの吉田麻也(シャルケ)も指摘していた。それを解決すべく、堂安がジョーカーとして登場し、試合の流れをガラリと変えてくれるのであれば、確かに意味がある。

 26人登録、5人交代のカタールW杯はベンチパワーも極めて重要。そう前向きに捉えて、まずは23日のアメリカ戦、27日のエクアドル戦でチームを勝たせる結果を残すこと。彼にはそのタスクを強く求めたいものである。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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