11月20日に開幕するFIFAワールドカップカタール2022。オランダ、セネガル、エクアドル、カタールが同居するグループAを展望する。

本命◎:オランダ
対抗◯:セネガル
3番手▲:エクアドル
蓮下△:カタール

本命はオランダだが、曲者揃いのグループA

W杯初出場となる開催国カタールが抽選会のポット1だった組だが、ここにオランダが入ったことで、残る7組に負けず劣らず、難しい組になった。

本命はオランダだが、前回大会は欧州予選で敗退したこともあり、絶対的とも言い切れない。しかもライバルは決して侮れない“曲者”揃いだ。オランダが最初に対戦するのはセネガル。アフリカ予選でコートジボワールとナイジェリアの二大巨頭が敗退した中で、FIFAランキング18位のセネガルはアフリカ勢で最強との呼び声も高い。

2002年W杯でベスト8の躍進をディフェンスリーダーとして支えたアリウ・シセ監督のもとで、タレント集団はまとまりを見せている。注目はエースのサディオ・マネ(バイエルン・ミュンヘン)だ。個人でも仕掛けられる決定力抜群のストライカーをどう生かすか。屈強なセンターバックのカリドゥ・クリバリ、守護神エドゥアール・メンディー(ともにチェルシー)など攻守にライバル垂涎のタレントが揃い、組織としての強度も高い。

オランダは2014年のブラジルW杯で3位に導いたファン・ハール監督が率いており、フレンキー・デ・ヨングを中心に、ボールを動かしながら3-4-1-2システムを可変させるスタイルがチームに浸透している。9月の親善試合では強豪ベルギーを1-0で破った。オランダは中盤でボールを失わずに攻め切ることで、危険なカウンターを食らわないように構築している。逆に言えばセネガルにそのセオリーを崩されるようだと一気に苦しくなる。そしてマネのようなワールドクラスのFWがいることは非常に危険だ。その意味で、ワールドクラスのDFファン・ダイク(リヴァプール)の対応も重要になる。

ホスト国・カタールはベストの状態に

9月に日本と対戦したことが記憶に新しいエクアドルも、2006年大会以来のグループステージ突破が十分に見込まれる。ただし、大会の開幕戦となるカタールとの試合は世界の注目が集まる中で、独特の緊張が最初の敵になりそうだ。

2019年のアジアカップ王者でもあるカタールにはやはり地の利がある。バルセロナの育成部門で指導した経験のあるフェリックス・サンチェス監督は5年かけて可変性の高いパスワーク、連動性のあるディフェンスを作り上げてきた。カタールは地の利に加えて、ライバルよりいち早く集合して、本番に向けた準備をしていけるのが大きい。

“個の力”はエクアドルが間違いなくカタールを上回るが、最高の状態で開幕戦に合わせてくるであろうカタールに対して、エクアドルがいかに自分たちの流れに持っていけるか。エクアドルは中盤にモイセス・カイセド(ブライトン)という攻守で高い機動力と対人能力を誇るタレントがいる。カタールから上手くボールを奪い散って、左右アタッカーのロマリオ・イバーラ(パチューカ)とゴンサロ・プラタ(バジャドリー)が仕掛けて、エースのエネル・バレンシア(フェネルバフチェ)や長身FWミカエル・エストラーダ(クルス・アスル)に合わせられるか。

カタールにもアルモエズ・アリ(アル・ドゥハイル)とアクラム・アフィフ(アル・サッド)という頼れる2トップがいる。アリはボックス内のアクロバティックなシュート、アフィフは幅広くチャンスに絡んで、タイミングよく飛び込んでのフィニッシュを得意としている。基本エクアドルの優勢は予想されるが、90分の中で必ずカタールの時間帯もあるので、そこでハサン・アル=ハイドゥース(アル・サッド)などが好パスを送り込めて、カタールが得点を奪うようなら開催国に順風が吹いてくる。

グループ全体に影響するオランダの精神面

オランダは自由主義の伝統があり、大会の勝利のためにひとつにはなるが、何かのきっかけでガタッと崩れる危険があるのはフランスに似たところがある。セネガル戦を落としたとしても残りでエクアドルとカタールに勝てばグループステージを突破できる可能性は高い。しかし、チームが崩壊してしまうと、もともと侮れない相手であるエクアドルにも敗れる危険がある。カタールとセネガルの試合はセネガル有利と見るが、やはり初戦の結果で心理面が大きく変わるので、そこがどう出るのか。

オランダがセネガル、エクアドルに連勝して、3試合目のカタールには明確なターンオーバーで、スタメンを大幅に入れ替えてくるのか。それとも追い込まれた状況での3戦目になるのか。100と100でぶつかったら、カタールがオランダに勝てる見込みは限りなく少ないが、3試合目となると色んな影響が出てくるので、そうしたイメージも膨らませながら、まずは開幕戦を含む1試合目に注目してほしい。

文・河治良幸


写真:アフロ