本調査は、インターネットを通して配信される動画広告の年間広告出稿額を推計し市場規模予測を算出するもの(※1)で、2023年の調査で10回目を迎える。動画広告市場の推計・予測を【広告デバイス別】【広告商品別】にて算出し、本年調査から新たに【縦型動画広告の推計・予測】についても算出している。

 2023年国内動画広告市場の背景

 ウクライナ・中東情勢に端を発する世界的な原材料費の高騰、物価上昇などによる生活者の消費意識の変化は、大手広告主企業の広告予算抑制などインターネット広告市場にも影響を及ぼした。その一方で、動画広告は、良質な動画コンテンツの増加とともに表現力豊かなクリエイティブの開発などにより、広告主企業にとってマーケティングプロモーション手法としての魅力度をさらに高めることで、広告主企業のテレビCM予算やインターネット広告の静止画バナー広告予算の流入が進んでいる。

 また近年、生活者による縦型ショート動画コンテンツの視聴が大きく増加し、広告主と生活者との新しいコミュニケーションの機会が広がった。また、コネクテッドテレビの普及により、テレビデバイスにおける動画広告の配信も広がり、動画広告を介した広告主と生活者の接点はますます広がっている。

 これらの要因から、2023年の動画広告市場は、インターネット広告市場を上回る水準で成長を遂げた。

【1】 動画広告市場推計・予測 <デバイス別> (2022年-2027年)

■2023年の動画広告市場は、前年比112%の6253億円に到達
■2024年は7209億円、2027年には1兆228億円に達する見込み

 2023年の動画広告市場規模は、前年比112%となる6253億円と順調な成長を遂げた。スマートフォン向け動画広告需要は前年比109.7%の5048億円にのぼり、動画広告需要全体の81%を占めている。また、コネクテッドテレビ向け動画広告需要は前年比137.0%となる740億円と、市場全体の成長をけん引する高い成長を遂げている。

 動画広告市場は今後も高い水準の成長を維持し、2024年は7209億円に、2027年には1兆228億円に達すると予測している。

【2】動画広告市場推計・予測 <広告商品別> (2022年-2027年)

 2023年の動画広告市場では、大手動画配信サービスにおけるインストリーム動画広告の需要増加が市場全体の成長をけん引した。一方で、スマートフォン向けに提供されるインバナー広告の需要が好調に推移した。

 ソーシャルメディアにおいては、縦型動画広告を中心に、広告主企業による動画フォーマットを活用したコミュニケーション需要が引き続き旺盛だ。

【3】縦型動画広告(※3)需要の推計・予測

■縦型動画広告の需要が急増、2023年の市場規模は前年比156.3%の526億円に到達
■2024年は773億円、2027年には1942億円に達する見込み

 大手SNSや動画配信サイトでは、縦型ショート動画コンテンツの視聴時間が急速に増加し、世代を超えた支持を受けつつあり、生活者の消費行動にも影響を及ぼす傾向が見受けられる。これを受けて、広告主企業による縦型動画を介したコミュニケーション需要が急増し、2023年の縦型動画広告の市場規模は前年比156.3%の526億円に達した。

 縦型動画フォーマットの普及は、広告主企業にとって新たなクリエイティブ制作の対応が求められることとなる。今後、生活者の日常における縦型ショート動画コンテンツの視聴時間が更に増加するとともに、クリエイティブ制作に関する技術発展により、広告主企業におけるクリエイティブ制作に関わる負荷が低減することで、縦型動画広告の需要はますます増加し、2027年に1942億円に達すると予測している。

国内動画広告市場の今後

 大手動画配信サイトでは良質なコンテンツが多く提供され、テレビデバイスを通して視聴される動画コンテンツは、生活者にとって、放送とインターネットのいずれかのこだわりはなくなり、両者の垣根はなくなりつつある。

 また、動画広告の配信先・広告媒体・広告フォーマットの多様化はますます進み、生活者の日常との接点は増える傾向にある。広告主企業および広告事業者が、新しい技術を適切に取り入れながら、それぞれの生活者と、それぞれの場に適した広告表現によるコミュニケーションを続けることで、動画広告市場は引き続き高い水準の成長を継続することが予想される。


※1 本調査は動画広告業界関連事業者へのヒアリング調査ならびに公開情報、調査主体およびデジタルインファクトが保有するデータ等を参考に実施している。また、広告主が支出する広告費を対象に市場規模を算出している。

※2 縦型動画広告:大手SNSや動画は配信サイトで提供されている縦型のショート動画コンテンツの一部として、縦型画面に最適化されたフォーマットで提供されている動画広告。縦型動画コンテンツ面に配信されているが、画面が横長のものなど、フォーマットが縦型に最適化されていないものを除く。

■ 調査概要
調査主体:株式会社サイバーエージェント
調査時期:2023年9月から12月
調査方法:動画広告市場関係者へのヒアリング、調査主体ならびに調査機関が保有するデータ、公開情報の収集
調査対象:動画広告市場
調査機関:株式会社デジタルインファクト