映像メディアの未来を探る『VISIONS』(株式会社AbemaTV運営)は、2025年10月6日(月)にアマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社が主催した「AWS Media & Entertainment シンポジウム 2025」(テーマ:「次世代ファン体験を創造するクラウド x AI 活用の最前線」)でのセッションをレポートする。株式会社AbemaTVビジネスデベロップメント本部の福永 亘氏による講演「ABEMA が取り組む良質な広告体験」では、インターネットとマルチデバイスの普及による情報過多の時代において、いかにユーザーの記憶に残る質の高い広告体験を創出し、広告主と視聴者双方に価値を提供するか、その具体的な取り組みと検証結果が提言された。

デジタルシフトと「情報過多」時代の広告課題

現在、私たちの周囲はインターネットの普及、デバイスの多様化、そしてコンテンツの増加により、「情報量が飽和」した状態にある。媒体の視聴傾向を見ても、テレビデバイスの視聴時間が減少する一方で、SNSやOTTサービスを含むデジタルデバイスの視聴時間は大きく拡大している。この結果、ユーザーの可処分時間に対するコンテンツ量が圧倒的に上回り、結果として「見た広告が記憶に残らない」という課題が顕在化している。福永氏は、この課題を打破するためには、ターゲットや配信量だけでなく、クリエイティブ、フォーマット、そして広告を出すタイミングという「質」の向上が不可欠であると指摘した。

テレビ品質をインターネットで実現する「良質な体験」の土台

ABEMAは、良質な広告体験を実現するための基盤として、まず「地上波と同等のCM体験の品質担保」を掲げている。具体的には、以下の6つの軸でテレビ品質を維持している。

1.100%プロコンテンツの利用(ユーザー生成コンテンツの排除)。
2.広告素材の事前審査による質の低い広告の流通防止。
3.SSAI(Server-Side Ad Insertion)技術によるシームレスで途切れのないCM表示の実現。
4.CM総量は地上波の放送法に準拠した水準以下に抑える。
5.CM隣接制御による不適切な広告の連鎖防止。
6.CM挿入ポイントを制作時からコントロールする質の高い体験設計

熱狂を広告効果に転換するコンテンツ連動型CMと検証結果

2つ目の柱は、「ABEMAのコンテンツと連動した広告」だ。これは「コンテンツスポンサー」として番組制作に参画し、人気の番組出演者を起用したオリジナルCMを制作する手法だ。年間で120〜130本規模のCMを制作しており、例えば麻雀プロリーグ「Mリーグ」とフードデリバリーサービスがコラボレーションした事例では、本編で生まれる「熱狂」を広告に転換させることに成功した。調査結果として、広告接触者においては認知はもちろん、より深いファネルである利用意向においても高いリフト率を達成しており、コンテンツとの高い親和性が広告効果を生むことが証明された。

視聴を遮断しない新しい広告フォーマットとIAB標準化

3つ目の柱は、「番組視聴に組み込んだ新しい広告フォーマット」だ。


ライブスクリーンアド(スクイーズバックアド): スポーツ中継などで本編映像を縮小し、視聴を遮ることなく広告を表示するフォーマットだ。MLB中継における大谷翔平選手のハイライトシーンなど、熱狂的なタイミングで広告を被せることで、コンテンツ連動CMと同等の熱狂の転換を可能にした。CM単体と比較し、CMとライブスクリーンアドに両方接触したユーザーは、認知が2.6倍、助成想起が2.5倍に伸びるという高い記憶定着効果を示した。


コンテクシャルオーバーレイアド: 番組内の特定のシーンや場所に関連する広告をオーバーレイ表示する実証実験だ(米GumGum社と連携)。リアリティショーの「旅のシーン」で旅関連の商材(Expediaロゴなど)をオーバーレイすることで、視聴体験を損なわず、自然な形でブランドメッセージを効果的に伝達できることが確認された。

これらの新しい広告フォーマットは、広告業界の標準化組織であるIAB Tech Labが発表した「アドフォーマットヒーロー」の8つの標準化フォーマット(コンテンツ・スクイーズバックやオーバーレイなど)に含まれており、ABEMAは業界の標準化に先行して取り組んでいる。

まとめと結論

福永氏は最後に、多様化する視聴環境に合わせた良質な広告体験の開発は、コンテンツを一辺倒で捉えるのではなく、「コンテンツに対してどう当てていくのが正しいのか」をテーマに進めるべきだと述べた。そして、その取り組みの目的は、広告主に「記憶に残る広告」という価値を提供するとともに、ユーザーには「優良コンテンツの継続的な無料視聴の機会」を提供するという、双方にとってメリットのあるエコシステムの確立を目指すことにあると締めくくった。ABEMAが先行して取り組む新しいフォーマットは、デジタル広告の課題を乗り越え、今後のOTTメディアにおける広告の未来を牽引する具体的な提言となった。

「ABEMA」はテレビのイノベーションを目指し"新しい未来のテレビ"として展開する動画配信事業。

ニュースや恋愛番組、アニメ、スポーツなど多彩なジャンルの約25チャンネルを24時間365日放送。CM配信から企画まで、プロモーションの目的に応じて多様な広告メニューを展開しています。

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