「愛国者として、日本人の英語力をこのままにしておくことに耐えられない」茂木健一郎氏が“脱TOEIC”、“脱ペーパーテスト”を呼びかけ
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 英語のコミュニケーション能力を測るテストとして、世界160カ国で実施されているTOEIC。企業においては就職活動で採用選考の判断材料、また昇進や昇格、転職活動にも用いられており、入試で利用している大学もある。こうしたことから、ユーキャンが実施したアンケート調査ではTOEICが「Z世代が最も取得すべきだと思う資格」との結果も出ている。

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 そんな状況に対し、「この世からTOEICが消えたらいいと思う」と10年以上にわたって警鐘を鳴らし続けてきたのが脳科学者の茂木健一郎氏だ。

 先週には自身のYouTubeチャンネル『茂木健一郎の脳の教養チャンネル』でも、「アカデミックな視点とか文章の読解とか、非常に知的なレベルを求められる要素がTOEICにはない。スコアが出るような評価システムで、言語の本質はつかめない。こんな単純な理屈がなんで分からないのか。だから僕はTOEICは撲滅した方がいいと思う」と激しく演説していた。

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 21日の『ABEMA Prime』に出演した茂木氏は、改めてTOEICのリスニングとリーディングのサンプル問題に触れ「地獄のようにつまらない。くだらなすぎて、最低最悪。もう砂をかむようだ。マウンティングしているように聞こえるかもしれないが、はっきり言う。僕は『TED』のメインステージで最初の日本人の一人として喋ったし、ケンブリッジ大学にも2年留学した。その俺に言わせると“面白い英語”というものがあるし、ETSというアメリカのテスティングサービス会社が作った、日本人を永遠に“二流以下“の英語話者にとどめるための策謀だと思う」と切って捨てた。

 また、海外出張や、仕事の現場では活用できる能力なのではないかとの疑問に対しても、「ビジネスパーソンというのは、そもそもの教養がなければ相手にされない。ハーバード出身で金持ちになったあるアメリカ人と話していたら、卒論を谷崎潤一郎で書いて、谷崎の小説を日本語で読んでいると言われた。そういう人がカウンターパートとして出てくるのに、こんなくだらない英語をやっていたって何にもならない。例えば、まさに今の俺がそうだが、“マンスプレイニング”という単語がある。これはmanとexplainingを組み合わせたもので、上から目線で説明するといった意味の言葉だ。そういうup to dateな文化と接続した英単語が出てこない試験なんて、意味がない」と断言した。

■このままでは、日本人は永遠に二流以下の英語話者だ

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 一方、英語関連の様々な資格を持ち、TOEICも受け続けている英語講師のもりてつ氏(武田塾English取締役)は「そもそもTOEICは教養を問う試験ではなく、英語圏で生活ができるかどうかを測る試験だ。茂木さん、1回受けてみてはどうか。俺と一緒に受けてみないか」と反論している。

 「スコアによっては良い企業に入れたりするわけだし、企業の側もたくさんの履歴書が来る中、一人ずつ英語力を見るわけにはいかない。大学においても就職においても、多くの人の力を一度に測るためには試験というものが必要だ。僕自身がそうだが、実はTOEICをきっかけに英語の楽しさに触れ、映画を見て楽しんだり、留学をしたりした。また、トイッカーとも呼ばれる、TOEICを本当に心から楽しんでいる人もいる」。

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 ハーバード大出身のパックンも「例えば日本語能力試験に“神ってる”“持ってる”みたいなスラングが入っていると言われたら、入っていないではないか」と同調。

 「僕は日本に引っ越してから学んだが、日本語教室の授業には通ったことがない。日本語能力試験は受けたが、それも“俺はすごい”ということを分かってもらうためだった。本当に英語を身につけたいという人は、英語圏に引っ越した方が早いし、安いと思う。むしろ働いてお金をもらいながら、冒険しながら身につけることができるという意味でもお勧めだ。ただ、みんなが僕と同じ性格だとは思わない。TOEICを通じて英語が好きになる人がいるのであれば、それだけでも価値があるかなと思う」と話した。

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 しかし茂木氏は「そういうレベルの日本語を喋っている人は、日本の中では二流以下の日本語話者になってしまうことになる。そもそも日本企業がTOEICを使っているのは自分たちで英語力を判断できないからであって、そも日本人の英語力がなんでそのレベルにとどまっているのかを問題にしなければならない。それはやはり教育の中で英語劇やスピーチ、ライティングをしていないからだ」と反駁。

 「俺だって、中学の時に“This is a pen.”から始めて、もりてつさんのように国連英検特A級も大学の時に受けた。でも、その後の方が長かった。科学者としては論文は英語で書くし、『IKIGAI:日本人だけの長く幸せな人生を送る秘訣』という本を英語で書いた。4月には『The way of Nagomi』という本がロンドンの出版社から出る。

 ここまで来るのは大変だった。しかしその道筋で、TOEICのレベルは関係なかった。むしろcuriosity(好奇心)を持ってジェイムズ・ジョイスを読むとか、ヴァージニア・ウルフを読むとか、そういう鍛え方がある。もりてつさんの授業もYouTubeで見たが、語源の話とか、メッチャ面白いじゃないか。やっぱり含めてテストには意味がないし、そのスコアを上げるための勉強はくだらない。TOEICの英語に触れる時間があるのだったら、NetflixやAmazonプライム・ビデオでドラマを見ていた方が良い。それをしなかったら、日本人は永遠に二流以下の英語話者だ」と訴えた。

■漢検も含めて反対だ。脱ペーパーテストが世界の流れだ

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 さらに茂木氏は「漢検も含めて反対だ。脱ペーパーテストが世界の流れだ」とも指摘する。

 茂木氏は「僕がすごく許せないと思ってたことがある。英作文に興味のなかった中学生の男の子が、あるロックンロールのスターに興味を持って、A4一枚に英文でまとめてきたらしい。しかし、単語の綴りや文法が間違いだらけだったからと、英語の先生が0点を付けたという。引っかけ問題だらけのTOEICも、そういう世界ではないか。

 日本は国語教育もそうだ。ドナルド・キーンさんが“日本の国語教育は犯罪だ”と言っていたが、『源氏物語』にしても、本来であれば物語として読むべきなのに、係り結びの法則がどうのこうのとか、くだらないことをやっている。要するに、1点刻みでスコアリングするということに特化した、手抜きの教育をしているということだ。TOEICにしても、結果的には金儲けだ。そこも含めて俺は腹が立っている。ちょっと英語のやりとりをすれば英語力は分かるし、主観でいい。評価は主観しかないのに、日本人はそれではいけないと思っている」。

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 仕事に関連する分野の資格試験に立て続けに取り組んでいるという元経産官僚の宇佐美典也氏は「電気に関する制度を調べてコンサルをするなら、電気技師ぐらいは試験受かるでしょ?ということになるので、"受かりますよ"と言えるように資格を取る。英語についても同じで、TOEICで点数を取ったから英語ができるのではなく、仕事で英語を使うんだったらTOEICの点数も取れるでしょ、という文脈で使われていると思う」と指摘。

 「アメリカ人と仕事をしていても、課題についてどのくらい英語で話ができるかが重要視されるのであって、それをみんなに分かるような形にしているのがTOEICだということだ。その意味では、TOEICのために勉強することはナンセンスで間違いないのは、みんな異論がないと思う。それなのに、英語の実力があるからTOEICでも点数が取れるでしょ。TOEICでいい点取っているんだから英語力あるでしょと、曲解している日本人が多いことが問題だ。

 そして外資系企業と付き合っていると、実は年々、英語の能力が必要なくなってきていると感じる。なぜかといえば、翻訳ソフトのレベルがものすごい勢いで上がってきているからだ。だからこそ、より本質的な、付加価値を生み出す能力を高めなければならない。そう考えると、世の中の流れとZ世代の意識が乖離していることが気になる」。

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 パックンも、「確かに、点を取ることが目的になっていて、そのために授業の内容が決まるというのは気持ちが悪い。“in”か“at”か、“s”が付くかどうかという細かいところの違いに30分もかけるのではなく、英語は世界一周の旅に連れて行ってくれるすばらしい船だ、という夢を見せるような授業をやってほしい。ただ、そのツールをどれだけ持っているかどうかということを測る意味で、テストは必要かなと思う」とコメントした。

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 もりてつ氏も「予備校などでスピーキングのクラスを担当したこともあるが、やはり、みんな無言だ。しゃべるという能力に関しては、ペーパーテストでできるようになるかという点については難しい。そこは違った教育方法を取り入れなければいけないだろう。実際、小学校の英語教育の場でも、“Be quiet. Don’t speak Japanese”ばかりの状況で、最終的にはテストがあるから勉強を始めるようになる人が多い。TOEICが全てだとは思わないが、きっかけとしてTOIECは残しておくべき選択肢だと思う」とした。

 茂木氏は「ブロックチェーンにしてもNFTにしても面白いので、それを英語を使って学ぶのはいい。しかし本質は英語にあるのではなく、ブロックチェーンやNFTにあるということだ。TOEICについて言えば国家的な損失だ。このままでは日本人は没落するだけだと思うし、僕は愛国者として、日本人の英語力をこのままにしておくことに耐えられない」と重ねて訴えていた。(『ABEMA Prime』より)

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