「怒鳴りまくられて“すいませんでした。間違ってました”なんて、そんなやわな議員じゃないから」足立区・白石区議の主張とは
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 区議会での発言が非難を浴びている足立区の白石正輝区議(78)。『ABEMA Prime』では、区議本人に電話取材を行った。

・【映像】「私の考えを正しく言ったと思っている」白石区議が電話取材で語った主張は

 まず、今回の発言は、どのような文脈の中で出てきたものだったのだろうか。白石区議は「LGBTの人たちがどうのこうのということではない」と話す。

 「全体の流れは人口減少社会、出生率の低下が将来の日本をダメにしてしまうということが基本。それをだいたい20分くらい喋って、最後の2分ちょっとくらいのところにLGBTの話が出た。足立区がLGBTの教育について割と積極的にやってきていることは認めるが、そちらの方を強調するあまり、普通に子どもを産んで育てることの大切さについての教育が足らないのではないかと。そのことを教育委員会に聞くために言った」。

 その上で、問題とされている箇所については「誤解されている部分」があると主張。「LGBTが少子化の直接の原因になるとは一言も言っていない。ごく少数なので、全体の出生率に与える影響はほとんどない」と説明する。

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 「私は多分、こう言っている。“こんなことは多分ありえないことだけれども、日本人が皆LとかGになってしまったら次世代は産まれませんよ”と。“そうした時に、日本の人口が日本も足立区も含めて消滅してしまうのではないですか”と。LGBT、要するに性の自由化とか性的マイノリティを助けようとかっていう教育は別にやっちゃいけないとか思っていないし、それはそれでいいだろうけど、同時に子どもを産んで育てることの大切さとか、楽しさをしっかりと教えていかないとえらいことだよと。そういう話だ。それが、“日本人が皆LとかGになったら日本が消滅しちゃう、足立区が消滅しちゃう”って言った話。傷付いたということだけれども、基本的には私もそんなことがあるとは思っていない。あるとは思わないけど、計算上いくとそういうことになるだろうということ。もし本当にあると思ったら、こんなに落ち着いて毎日の社会生活を送っていられない」。

 一方、発言への反応について尋ねると、抗議の電話以上に、賛成の電話が多いと明かす。

 「30本くらい電話をもらって、そのうち批判する人、怒鳴っているだけの人が2割くらい。あと8割くらいは私に賛成って人だから。賛成って人は名前も名乗ってくれた。でも、反対の人はほとんど“何でお前に名前を名乗る必要があるんだ”と言って名乗りません。私も“名前も分からないような人と電話でやりとりする気はないです”と言って切っちゃう。私の身の回りには、(LGBTに)該当する人がいない。親戚にもいない。そういう意味では、私の知識はマスコミ等を通じた知識しかない。私の知っている実態とあなたの知っている実態が違うなら、教えてもらう以外にないわけだから、実態を理解しないって言うなら、ちゃんと教えてくださいと。ケンカをするために会うのは嫌だけど、ちゃんと冷静に話をする気があるなら、電話を寄越す人にもどうぞ会って話をしましょうと言ってはいる。でも現実にはなんで怒鳴っているのかも分からないような怒鳴り方をするだけ。それでは話し合いにもならない」。

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 謝罪の意図について尋ねると、「悪いところを誰も指摘しないんだから、分からないじゃない」「怒鳴り声だけは届くけど、声が届かないんだよ」と訴えた。

 「何も言わずに怒鳴っているだけで、どうやって修正するの?あなただったらしますか?『分かりました、謝ります』って言うの?私は言わないよ、そんなこと。どこを直せば、その人たちの了解がとれるのか全然分からない。ある意味、“言論の暴力”だから。私に理解してほしかったら理解してもらう、理解できるような話し合いだったらいつでも応じますからということ」。

 「今、LGBTについて話をすると、良い方向の話ならOKだけど、ちょっとでもマイナスの話をしたら徹底的に叩かれる。マスコミさんを中心にしてワーっと騒ぎになり、言った人が徹底的に叩かれてしまう、しかも反撃も防御もできないかたちで叩かれる。魔女狩りに遭っちゃう。今の日本が“言えない雰囲気”になっていることは事実だ。日本は個人の意見も言えないような社会ではないんだから。いくら脅かしたって、怒鳴ったからって、いいことなんて絶対出てこないって」。

 足立区には賛同の声も寄せられているというが、区議会自民党は白石区議に対し厳重注意。足立区議会も鹿浜昭議長の名前で「9月25日の本会議における白石正輝議員のLGBTに関する発言の中で、議員としてふさわしくない誤解を招く表現があり、不快な思いをされた方々に心からお詫び申し上げます」とのコメントを発表している。

 この点について白石区議は「厳重注意というよりは、あまり大騒ぎしないでください、という話だ。執行部としてはそう言わざるをえない立場なんでしょう。だから私も執行部の立場は分かりましたと言っただけだ。LGBTの教育をやっちゃいけないなんて一言も言っていない。やっていいんですよ。ただそれと並行して、今言ったように子どもをちゃんと育てるための教育を、大切さを教える教育をちゃんとしてくださいよと。どこが間違っているの?。私は私の考えを正しく言ったと思っている。怒鳴りまくられて脅かされて、“はい、すいませんでした。間違ってました”なんて、そんなやわな議員じゃないから、悪いけど」。

■“正常な”という言葉を入れる必要があるのだろうか」

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 作家の乙武洋匡氏は、白石区議が問題の質疑で「正常な結婚をし、子どもを産み育てることは、人として最も崇高な使命であると思う。学校教育の中で、子ども達にしっかり伝えるべきと思う」と発言していることに注目、「“正常な”という言葉を入れる必要があるのだろうか。あえて“正常な”と入れるところに、僕はLGBTQの方々に対する蔑視が滲み出ていると感じてしまう。政治家としては少子化問題に向き合わなくてはならないが、大事なのは産むことを望まない人や望めない人に圧力をかけることではなく、産みたいと思っている人が経済的な事情や労働環境的な理由で産めない状況改善することだ」と指摘する。

 「確かに子どもができなれば人類が滅んでしまうというのは間違いない。しかし“普通の結婚をし、普通に子どもを育てることが最も崇高である”というのは価値観の問題であって、それが一番いい価値観だと学校で教えるのは、“教育”ではなく“洗脳”だ。そこは絶対に間違えないでいただきたい。もちろん考えの違いは認められて当然だと思うし、ものが言えなくなるような社会はおかしいと私も思う。ただ、白石さんの発言の中には明らかな事実誤認があるし、それを指摘されているのに、正しい知識をきちんと入れて、発言を修正していこうという動きが見られないのは非常に残念だ」。

■「こういうキャラクターのおじさん議員が必ずいる」

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 ノンフィクションライターの石戸諭氏は「普通じゃないというようなことを彼は“普通の結婚”というような表現をしている。逆に言えば、LGBTは普通ではないと言っているということだ。別のインタビューでは“民法にはない生き方だ”とも表現している。LGBTの歴史を振り返ってみれば分かることだが、これらは明らかに差別発言だ。この“正常な”とか、“普通な”というのは、世の中にいっぱいいる、その枠に入れない、入らない人たちに対する想像力の欠如だ。それなのに“意見も言えないのか”と“被害者面”をしている。“何が間違っているのかちゃんと言え”と言ってはいるが、冷静に反論している人たちもいっぱいいる。それらを読んでいるのかといえば、読んでいないのだろう」と厳しく批判する。

 「また、白石さんは“周りにいない”と言っているが、本当にそうなのか、もう一度問い直すべきだ。確率的には、今まで接してきた人の中にもいた可能性が高い。そして新聞記者時代に地方議会を取材していたから分かるが、こういうキャラクターのおじさん議員が必ずいる。結局、この人は支持されているということだ。選挙で通っているということは支援者がいて、こういう発言を許してきてた土壌があるということにも思いを馳せるべきだと思う」。

■「政治家の発言は有権者の問題でもある」

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 さらに慶應義塾大学の夏野剛特別招聘教授は「足立区民全体を代表して、足立区がいかによくなるか頑張らなきゃいけないのが足立区議会議員のはずだ。それなのに、“私の周りにいませんから”という基準を振りかざすのはどうか。ただ、白石区議は11回も当選している。おそらくこれまでもこういう発言を繰り返してきたはずだ。そこに票を入れてきた足立区民のは話もすべきだし、足立区民は恥を知るべきだと思う。こうしたポリティカル・コレクトネスに関係する政治家の発言の問題は国政レベルでも出てくるが、他人事のように批判するだけでなく、選んでいる有権者の問題でもあるということを考えなくてはならない」と指摘した。

■「自民党にとっても大変マイナス」

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 元参議院議員でゲイであることを公表している松浦大悟氏は「自民党の中にはLGBT特命委員会という組織があり、白石議員のような発言に対してもコミュニケーションを取る。しかし菅政権発足後、ゲイの当事者の方がされているアドバイザーの再委嘱手続きが滞っている。それで今も白石議員の言葉がメディアに流れ続けているということだ。この状況は自民党にとっても大変マイナスだと感じる」と話す。

 「社会からのプレッシャーが厳しかった70年代、80年代のゲイは異性愛者の女性と白石議員の言う“普通の結婚”をして子どもを設けていたケースも多かった。しかし90年代に入ると、ありのままの自分で生きたい、プライベートにおいてもパブリックにおいてもゲイとして生きたいという人が増え、声を上げるようになった。だから白石議員の言うように、確かに“普通の結婚”はしなくなったかもしれないし、子どもを設けなくなったことで少子化になったのかもしれない。しかし、誰かに迷惑をかけているわけでもないし、一度きりの自分の人生じゃないか。同性婚はまだ認められていないが、ゲイカップルで暮らす方も増えてきた。それを否定することができるのだろうか。私は悲しい」。

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 その上で、「杉田水脈議員が“LGBTには生産性がない”と言ったが、問題なのは、このように子どもの“再生産”を第一の価値に掲げる考え方が、保守だけではなくリベラルにもあるということだ。クィア学者のリー・エーデルマンが子どもの再生産を価値としないクィアの居場所がなくなる、右も左も同じ穴のムジナだ、と指摘したが、民主党政権の“チルドレン・ファースト”というスローガンを聞いて、確かに私もゲイの当事者としては疎外感を覚えた。一方で、政治家として共同体の持続可能性を考えた時、子どもの再生産を否定するのは大変難しいことだとも思った」と話し、丁寧なコミュニケーションの必要性を訴えた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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