「三途の河の手前で生還」 コロナ感染の医師が語る壮絶闘病「ドクターが『ここでだめだったら死ぬ』と」
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 「三途の河の手前で生還しました」

 Facebookで壮絶な入院生活を振り返ったのは、医療法人社団 医献会 辻クリニックの理事長を務める辻直樹医師。年末に倦怠感を感じてから、あっという間にICUまで症状が進行していったという。『ABEMAヒルズ』の取材にこう答える。

【映像】コロナ生還の医師が語る壮絶闘病

 「最初は呼吸の回数が増えてくる。呼吸の回数が増えてくるということは、ゆっくりとした呼吸では酸素濃度を保てないので、呼吸の回数を増やすことで酸素を維持している。(12月)28日に酸素濃度が下がってきて、これはもうだめだとなってコロナ病棟に入院。入院した次の日にはさらに悪化して、酸素を吸っても(血中濃度が)上がらなくなって、肺も一気にだめになってきてそのままICUで挿管になった。『どこまでいったらどうで、ここでだめだったら死ぬしかない』という話はドクター同士でしていた」

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 入院中には症状と対策について医師として考える中、最悪のケースも想定。コロナウイルスと向き合う中で感じたのが、症状の進む速さだったという。

 「(進行が)速い。倦怠感が出て、熱が出て、呼吸がおかしくなるまであっという間。増殖スピードがすごい。息苦しくなればまだまし、119番できるから。無症状で終わる人が15%、あとは普通の風邪のような症状で終わる人が結構いるので、『コロナはただの風邪だ』となってしまう。ただ正確にいうと“風邪様症状”で、風邪でなくてもインフルエンザやマイコプラズマなどもあるが、一般の人は症状でしか判断しない。熱が出て、咳が出て、節々が痛くてというのは、変な病気がそこにある。コロナに関しては定まった症状の流れがない、だから難しい」

 辻院長は入院生活で10キロほど痩せ、今も味覚や筋肉の異変が残るなど後遺症もあるという。

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 「完治はまだしていないと思う。味覚がまだ駄目で、階段をワンフロア上がると呼吸が上がってしまう。治療ってすごく難しくて、感染症を火事に例えると、火事が起きている状態(コロナ)に対して一生懸命消火している。退院した段階は火が消えた状態。でも考えてみると、火が消えても家がない。その状態で家を建て直さないといけない」

 自らの体験として、症状が進むスピードが速く、その行きつく先の予想が難しいと感じたコロナウイルス。とにかく感染者とそうでない人との接触を減らすなど、基本的な感染予防に努めてほしいと訴える。

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 「ロシアンルーレットだ。無症状、軽症、中等症、重症、どういう人がそうなるのか本当にわからない。結局悪いのはウイルスで、世間がぎくしゃくするのも善と善の戦い。『ウイルスをなくしたい』『死にたくない』という一方、飲食などの人たちも死にたくないからお店を開けたい。それでどっちが悪いかとなっているが、論点はウイルス。ウイルスをどうやれば防御できるのか、わからないことが多すぎるので、ロックダウンみたいなことしかできない。そこをお互いもうちょっと冷静にならないといけない」

 こうした当事者にもなった医師の発信について、臨床心理士で明星大学准教授の藤井靖氏は「これが今必要なナラティブ(生の)情報ではないか。もちろん日々の感染者数など数字も大事だが、医師でありながら患者になったご自身の体験をこれだけ赤裸々に話していただいて、我々はそこから症状や経緯などの情報を得て、あらためて気をつけなければならないという認識を持つことが必要だと思う」と話す。

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 また、一部の専門家の中から出てくる「感染はピークアウトしたのではないか」「〇〇をしなければ感染しないから、外出自粛をする必要はない」といった楽観論には注意が必要だと指摘。「そういった話は、単なる一つの視点に止まらず、予想以上に大きなインパクトを人の心に与える。コロナが長くなればなるほど、少しでも光明を見出したいという気持ちがあって、そこに楽観的な情報は入り込んでくる。コロナはただの風邪ではないと思っていても、慣れればなれるほど気持ちは薄れていく。改めてこういう罹患された方の話を聞いて自分自身も考えていきたい」と述べた。

 さらに、日本は医師信仰が強い傾向があるとした上で、「病気になったら『お医者さんにかかればなんとかなる』という考えが強いとも言われている。臨床医に、必ずしも専門ではない公衆衛生やコロナに関連した政策についてコメントを求めている番組も多くある。しかし、ドクターであってもコロナにかかるし、ドクターでもコロナをどうにもできないという状況がそれなりに高頻度で起こりうる。それを辻先生自らお話しいただいたので、『コロナに感染したら病院にかかればいいや』ということではなく、かからないことを大前提に考えていきたい」と促した。

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

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