“生きたエサ食べさせる動画” 一体どこまで制限すべき? YouTuberを刑事告発した動物愛護団体代表と議論
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 ペットのヘビやトカゲに生きたままのハムスターやウサギを食べさせる動画を投稿していた男性が、動物愛護団体から刑事告発された。

・【映像】生きた動物をヘビの餌としてあげる動画は虐待?

 YouTubeにアップされた数十本の動画(現在は削除済み)には「閲覧注意」とのテロップが表示されるものの、動物が噛まれ、絞められ、飲み込まれる様子だけでなく、冷凍保存する前に”安楽死”(動画内での説明)させるためモルモットの脊髄を引っ張って殺したり、二酸化炭素で窒息死させたりする様子、また、ペットが噛まれないよう、ハムスターの歯をニッパーで切る様子が収められていた。

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 動画内で自称ユーチューバーの男性は「生き物を飼育していくうえで、飼いやすい、餌のキープがしやすいとか結構大事な問題だと思うんだよね」と説明。この点については爬虫類専門店「Maniac」のRyoさんも「生きているマウスを与えたり、ラットの場合は蛇を殺してしまったりする場合もあるので、餌をあげるためのテクニックとして(歯を切ることも)あると思う」と話す。しかし、動画の中には「Fight」「VS」など、煽るかのようなテロップも。

 動画を見た人たちからの相談を受けて男性を刑事告発した一般社団法人「日本動物虐待防止協会」の藤村晃子代表は「動物虐待の動画を投稿して逮捕されたケースと類似した内容だと思った」と説明。動物愛護法の「動物を殺さなければならない場合には、できる限りその動物に苦痛を与えない」(第40条)を踏まえ、次のように説明する。

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 「私は動物好きなので、感覚的には猿回しなども嫌いだ。マウスの実験などについても内容によっては反対する。ただ、生餌だから良いだろうというような話を突き詰めていけば、人を生きたままワニに食べさせてもOKということになってしまう。やはりどこかで線引きが必要になってくると思うし、そこはあくまでも法律として定められている部分に照らし合わせてどうなのか、ということだ。

 その点で言えば、生餌ということが直ちに刑事罰の対象になるということはないが、不必要に苦しみを与えることは対象になりうる。今回、生餌とされた動物に対して不必要な恐怖を味合わせているし、同時に動物が抵抗したことによってペットがケガをした可能性もある。どちらにとっても危険な行為であり、処罰の対象になりうると感じたので、そのことを告発状に記載し、受理してもらった」。

■「残酷かどうかで話をすると水掛け論になる」

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 一方、同じく動画を視聴したジャーナリストの佐々木俊尚氏は「法律の話、人間の感情、現実に起きている話、という3つのレイヤーがあって、それがゴッチャになっている感じがする」と指摘する。

 「僕は狩猟に行くことがあるので、ニワトリや鹿を解体したこともある。ニワトリを絞める時のやり方は、動画と全く同じ。首を手でちょん切り、切り口を下に向けて血を出して、羽をむしる。鹿は首を切った瞬間にキューンと鳴くが、これも動画でモルモットが死ぬ間際にギューと鳴くのと同じだ。確かにひどいし、残酷な行為だ。あるいは人を殺傷する危険が無く、ハードルも低いので銃ではなく罠を使うこともある。しかしこれは一発で死なずに苦しませることになるから銃よりも残酷だという意見もある。

 そもそも、家畜を殺めて肉を頂くという行為だって残酷だ。そうしたことを引き受け、リスペクトするのが人間の務めであって、今回のYouTuberの動画はそれが無かったという“見せ方”の問題であって、山から降りてきた動物が可愛かったからといって、被害に遭った農家の依頼を受けた猟師が“害獣”として駆除することをけしからん、残酷だ、というような軸で話し出すと、水掛け論に終始してしまう」。

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 また、ヘビがウサギを絞め殺し、丸呑みする動画を視聴したテレビ朝日平石直之アナウンサーは「ウサギはヘビよりも体が大きいので、ヘビの胴体が膨らむ。非常に生々しく、しんどいなと思った。ただ、餌なのであれば生きたまま食べさせてもいいのではないか、身体の大きさの問題なのだろうかとも思った。人間にとって愛玩動物かどうかは関係なく自然界では当たり前に起きていることだし、野生動物のドキュメンタリー番組などでは、そうした様子を扱うこともある。

 もちろん、(FightやVSなどの)テロップや決定的・印象的な場面のスローモーションやリプレイといった演出が必要だったかという問題はあるが、食卓に並ぶまでには何が行われているのか、ということは教育上触れた方がいいという考え方もあるし、生物では解剖の授業もある」と疑問を投げかける。

■「児童ポルノと同様、子どもの目に触れさせるのは危険」

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 こうした疑問に対し、藤村代表は「動物の殺処分に関する指針には“社会通念上許される範囲”という文言が入っているし、時代ごとの社会的な感覚によっても変わってくるところもあると思う。ただし事実確認のために電話で話をした時に、男性は“投稿をやめさせたいなら金を払え”というようなことを言っていた。見世物にして再生数を稼いでいたとしか考えられないし、そのような要素も鑑みて、動物虐待として通報したということだ」と説明。

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 「教育として家畜を殺す“命の授業”のようなことをする学校もあるが、お肉を食べない人だって世の中にたくさんいるし、殺す必要がないものをわざわざ子どもたちの目の前で殺さずとも、言葉で説明したり絵で示したり、ロボットのようなもので代用することもできると思う。お母さんにとっては小さな子どもがこういう動画を目にしてしまうのはショックだと思うし、与える影響も少なくないと思う。児童ポルノの問題と同様、子どもの目に触れやすいところに危険な動画をアップすることについては議論を深めた方がいいと思う」と訴えた。

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 しかし佐々木氏は「そもそもこれはYouTubeなので、見たくない人は見なくても済むわけだ。爬虫類の愛好家が情報を得る方法や、我々がどのようにして食肉を得ているのかを知る方法を奪ってしまうのは、逆に権利の侵害にもなりうる。嫌なものが出てきたら“これはNot for meだから”として見ない、という判断も有り得るのではないか。コンビニからポルノ雑誌を排除する動きが議論になったが、とにかくけしからんものは世の中からなくしていこうという動きは表現の自由との兼ね合いで問題がある」と、安易な排除に懸念を示す。

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 議論を受け、慶應義塾大学特任准教授でプロデューサーの若新雄純氏は「“動物愛護法”という言葉が変なのかもしれない。“動物を守ってあげる”という法律だが、むしろ人間は自分たちの都合で動物を守らないことの方が多いし、僕が今日のお昼に牛タン弁当を食べたということは、そのために少なくとも一頭の牛が死んだということだ。そうであれば、“動物愛好家に配慮してください法”の方がストレートで分かりやすいのではないか。動物を大切に思っている人たちに、“これが自然の摂理だからといってそのまま見せないでよ”という方がいい。その意味では、今回の動画だって、“今からそういうシーンが始まるからカウントダウン中に止めてくださいね”と受け止めることもできるし、子どもが見てしまう可能性がゼロにできないという前提に立てば、“何見てるの”と取り上げるのではなく、“今のはね”と冷静に説明し、“そういう覚悟があれば見ればいいし、そうでなければ…”と、ショックで終わらせない方法を考えるべきではないか」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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