「みんなが自分のあこがれ、幸せ、なりたいものを目指して手を前に伸ばそうと努力する国を作りたい」河野太郎氏が語ったワクチン接種推進の教訓
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 今週17日の自民党総裁選の告示を前に、河野太郎・規制改革担当大臣が『ABEMA Prime』に生出演。ワクチン接種推進の裏話やコロナ対策とテレワークの普及、外交・防衛まで幅広く語った。

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■やってみたら接種150万回を超えました、みたいな感じ

 菅内閣で新型コロナワクチン接種推進の担当大臣として頭指揮にあたってきた河野氏は。出馬会見などでも、その成果を自身の強みとして繰り返し強調してきた。

 「菅さんは、どちらかというと“結果で勝負”というタイプの方。古いタイプでもあり、背中で語るみたいな感じだと思う。僕はどちらかというと、データを出して、“これを見ると、こういうふうに考えられるから、政府としてはこうやりたい”と説明して、納得をしてもらいたいタイプだ。だから“ワクチン接種、1日100万回”と言われた時、僕は正直、“殿ご乱心”だと思って、“7~80万で大丈夫です”と言った。すると、“いや、俺の決定だ、100万いけ”。ドヒャーという感じだったが(笑)、やってみたら150万回を超えました、みたいな感じだ。

 菅さんが設定する“100万回”とか“7月末”とか、次から次へと、しかもかなり高いハードル付きのゴールに対して、必死にこなしていった。金を出すのは財務省、ワクチンを持ってくるのは国交省、注射針を用意するための金型を早く回してもらうのは経産省、自治体を動かすのは総務省、学校の施設を借りるのは文科省、接種するのは厚労省、そして打った後の注射器や針は環境省と、ありとあらゆる省を使いながらやった。そういう意味では指揮官というか、タクトを振って“はい、こっちのパート。はい、じゃあ次はヴァイオリン”みたいな役割も、割とできたかなという気はしている」。

■最初、自治体の課長さんにすごく怒られた

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 行政改革担当相として、ワクチン接種推進を通して行政組織の課題についてどのように感じたのだろうか。

 「役割分担は必要だし、縦割りはある。問題は、そこにちゃんと横串を通せるかどうか。それが政治の仕事なのではないか。今回、結構面倒臭かったのも、縦割りのせいではなくてルールだった。1億人に対して、1日も早く2回の接種をしろという非常事態の中、平時のルールでやろうとしていた。

 例えば治験。“日本は感染者数が少ないから、治験をやっても時間がかかるばかり。だから日本は飛ばす”とも言われたが、実はファイザーはアメリカ在住の日本人学生や企業の駐在員、その家族を百数十人集め、治験をやっていた。そのデータがちゃんと取れているよ、と言ったが、“いやいや。アメリカに住んでいる日本人は、日本に住んでいる日本人と食い物が違うだろ”と言って蹴ってしまった。“いやいや、日本に住んでいたってスパゲッティ食べるだろって。アメリカでだって米の飯は食えるんだし、向こうで食ってるだろ”と(笑)と。

 あるいは有効期間。モデルナの場合、他国は7カ月としているが、日本だけ6カ月だった。だから“もう少しこっちへ出してくれ”と言っても、“だって日本は6カ月だから、貼るラベルから何から全部違う。余ってても、そっちに振り分けられないだろ”と言われた。そこで“全部そっちに合わせて、有効期間を長くするからいいじゃないか”と言って進めた。

 それから、僕は最初、自治体の課長さんにすごく怒られた。1月18日にワクチン担当になったときに、厚労省が出していたワクチン接種の手引きを見ると、“接種券を送って下さい。そして予約を取ってください”となっていた。多くの市長さんから、“高齢者は時間の融通が効くから、あなたは何月何日に来てくださいと言えば、その日に来てくれるはずだ。どうしても都合の悪い人だけ電話をしてくれ、と言えばいいのに、接種券を出してから予約するようにしてしまったから、電話が殺到してパンクしている”と。“お前ら分かってないだろ”と。“それはおっしゃる通り、失礼しました”と言った」。

■いろんな人がいて物事が決まっていくことが大事

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 同時に、規制改革の必要性も痛感したと明かす。

 「ワクチン担当大臣に指名されたとき、1億人の2回の接種を紙で記録するというので、そんなの無理だろう、あと2カ月しかないけど、システムを作るぜ、やらなきゃダメだと言って、名だたる国際的な大企業へもヒアリングをしたが、日本の創業7年目くらいの小さな会社が一番できそうじゃない?ということになった。競争入札をしている時間はないから、私が責任とるから随意契約でお願いしますといってやってもらった。そもそも入札になっていたら、その企業は参加の資格がなかったかもしれない。その辺から変えていかないとダメだよねと痛切に感じた。

 規制改革についても、テーマを提案してくれている企業はスタートアップみたいなところが多い。それはやっぱりチャレンジしようとしても、規制があるからできませんと言われるからだろう。しかしそれらを外してあげれば、新しい技術やアイディア、サービスがどんどん世の中に出てくるんじゃないかと思うし、そういう人たちを応援する体制を経済界にも組んでもらった方がいいのかなと思う。

 そもそも日本の企業経営者はだいたいが日本人で、男で、55歳かそれ以上、卒業してすぐその会社に入ったという人にほとんど限られている。もっと若い人や女性、日本人でない人がトップにいてもいいはずだ。これは政治も同じことかもしれないが、そうやっていろんな人がいて物事が決まっていくことが大事だと思う」。

■現実的な議論ができない野党、ちょっと残念

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 政府はこの日、5割の人がワクチンの2回接種を終えたことを明らかにした。重症化リスクが高いとされる高齢者については9割近くが2回の接種を済ませており、10月~11月には希望者全員への接種の完了を目指している。こうした状況を踏まえ、経済界からは海外出張からの帰国時の隔離期間の緩和など、行動制限の段階的な解除を求める声も強まっている。

 河野氏は「これはやっていかなければいけない。ごく限られた人たちが重症化する可能性はあるかもしれないけども、大多数にそういう可能性がないなら、もう少し前へ進めるよねとなる」とした上で、次のように指摘した。

 「よく言われるのは、ワクチン接種済か、PCR検査で陰性かだ。陰性なら人にうつすことはない。しかしワクチンを打っていてもブレイクスルー感染をする可能性はあるし、そこにワクチンを打っていない人が“安全だよ”と言って入ってくれば感染してしまう可能性もある。そういうリスクも含めて説明した上で、“やりますか”と言うのか、それとも“9割5分ぐらいの人が接種済になるまで打ってくれませんか”とお願いをするのかだ。

 9割5分まで行けば違う景色が見えてくると思うが、若い人たちがなんとなく“かかっても軽症だろうし、面倒くさいから打たなくていいや”と言って接種率が下がってしまうと、そこから感染が起きることになる。だからこそ、“こういう状況になったらこういうことを考えている”ということをお示しして、“じゃあしょうがない。面倒くさいけどワクチンを2回打つか”と多くの人が思ってもらい、接種率が9割を超えていくような状況を作る。そのためにも、徹底して説明していくことが大切だ。

 与党というのは、現実と向き合って、背負っていかなければいけない。例えば野党はこの間の国会のときも“ゼロコロナ、ゼロコロナと繰り返していた”。しかし本当にコロナをゼロにするためには、どれだけ経済を押さえつけなければいけないのか。どれだけの期間、人流抑制をやらなければいけないのか。それはやはり現実的ではないと思う。今の野党も一度は政権を取っているわけだから、そういうところも分かっているはずだが、昔に戻ってしまったような気がしている。それでは同じ土俵で、現実的な議論をしようよということにならないんじゃないか。そこがちょっと残念だ」。

■霞が関が先頭に立ってテレワークの旗を振りたい

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 「FAXとハンコ以外になくしたいアナログなものは?」と尋ねると「満員電車」と話す河野氏。衆議院議員に立候補するまでの10年間は、当時の富士ゼロックスなどで会社員として働いた経験も持つ。

 「1985年12月にアメリカの大学を卒業して、翌年の1月21日にアルバイトで富士ゼロックスに入り、2月21日には正社員になった。当時、全世界がネットワークで繋がっていて、電子メールが飛び交っていた。日本の設計図をその日のうちにヨーロッパの技術者やアメリカの技術者が直し、次の日には完成している、みたいな。世界って、こうなっているんだと思った。当時としては極めて特殊な企業だったということだが(笑)、すごいと思った」。

 また、「去年の後半、テレワークなどが原因で東京から人が減り始めた。ゼロックス時代にはテレワークやサテライトオフィスの実験の現場責任者をやっていたこともあって、東京にいなくてもいいんだということをインセンティブで促して、もっと現実にしていきたいと思っている」とも話す。

 「関西に本社があった企業が“東京本社”と称して拠点を作ったところ、そこが本社っぽくなったというところもある。例えば東京から本社を移転したら、あるいは東京から社員が何%以上出て行ったら法人税を減税するというのもありじゃないかと思っている。もう一つは、社員の給料をこれだけ増やしたら法人税を下げるという方法。勝手に給料だけ上げると、経営者が株主に批判されてしまうかもしれないが、“給料を上げれば税金が下がる”と言えば、堂々と“なんか文句あるか”と説明ができるのではないか。最低賃金が違うから東京に人が集まってくる部分もあると思う。格差はなるべく減らさなければいけないと思っているので、テレワークで東京の仕事が外へ出て行けば、結果として最低賃金を統一する動きの後押しにもなるのではないか。

 霞が関も同様だ。両親が地方にいる職員の場合、後ろ髪を引かれながら仕事をしていることもある。外務大臣だった時に、優秀な人を海外に出そうとしたら“親の介護で…”と言われてしまったこともあった。でも、例えばアメリカが相手の仕事なら、東京にいても札幌にいても沖縄にいてもあまり影響はない。親の介護が必要になったら、親元からテレワークができるということができれば、優秀な人を失わずに済む。ダイビングが好きで、沖縄の海を見ながら仕事したいという優秀な人材も集まるかもしれない。消費者問題担当大臣の時、消費者庁を徳島に移そうとしたが、根強い反対に遭って一部しかできなかった。あの時は徳島出身じゃない人も徳島に持っていこうということだったが、今だったら別に霞が関に来なくていい、六本木もいいし、北海道でもいいということが現実味を帯びてきている。民間企業ではそれに近いことが行われているわけで、霞が関が先頭に立って旗を振りたい」。

■敵基地攻撃能力の議論は古い

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 また、この日は北朝鮮が長距離巡航ミサイルの発射実験を行ったことを公表。自民党総裁選の立候補予定者に対しては、敵基地攻撃能力の保有に関する質問も出ている。河野氏は防衛大臣を務めていた昨年、山口・秋田両県へのイージス・アショアの配備を断念している。

 河野氏は「外務大臣のときに北朝鮮の外務大臣と何度かやりとりをしたことがあるが、全くコミュニケーションができないわけではない。まずは相互不信のようなものを抑えていき、相手と話ができるかというところだと思う。外務大臣レベルで接触することはできていたのだから、次はもう少しレベルを上げ、接触をしていく」とコメント。

 また、「よく敵基地攻撃能力が話題になるが、この議論はミサイルの発射基地があって、そこから撃つという古い時代の議論だ。今はTELといって、トラックの後ろに発射装置を積んで、どこでも動けるようになっている。つまり、敵の基地を攻撃する・しないの議論では通用せず、相手が撃ってきたときに“百発百中撃ち落とせるぜ。だから撃っても無駄だぜ”、あるいは“撃ってきたら、こちらもポカンといくよ”という抑止力の議論になる。日米同盟など、さまざまな形はあるが、相手に撃つのを思いとどまらせる抑止力をどう高めていくのか、その議論をしていかなければならないと思う。さらに言えば、今後は実際の武器で攻撃をするよりも、漁民だかなんだかわからない、武器を持った人がゾロゾロ上陸してくるとか、あるいはサイバーテロ、情報戦を仕掛けてくるとか、グレーゾーンや見えない、分かりにくい形で色んなことが起こるんだと思う。そこに対応するために議論も必要だ」。

■みんなが手を前に伸ばし始めると、国はどんどん前へ進んでいく

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 最後に、「一人ひとりが自分のあこがれ、幸せ、なりたいものを目指して手を前に伸ばそうと努力する国にしたい」とフリップにしたためた河野氏。

 「少し字が汚くて申し訳ないが、本当はちょっと無理に手を伸ばしたら掴めるものを、今は何となく…という気がする。そこを、思い切って掴んでみましょうと。そう思ったのは、ワクチン100万回と言われて、ん?と思ったが、やってみたら150万回行ったこと、役所の書類の認印はやめちゃってもいいんじゃないの?という話をしたときに、“そんなの、できるわけがないだろう”と言われたけれど、99%無くすことができたこと。テレワークだって、コロナ禍で仕方なく始めてみたら、快適だよねとなったこと。

 何となく、今は無理だろうと、そういうものじゃないだろうと思っていてやらないんだったら、格好悪いと思っても、無理やり手を伸ばしてみんなで掴んでみようよと。そうやってみんなが手を前に伸ばし始めると、国はどんどん前へ進んでいくんだと思う。もしリーダーになれたら、国として手を伸ばす。それを見て、じゃあ国がやるなら自治体もやろうぜ。企業もやろうぜ、となる。そうすると、国民の皆さんも、自分もこういうことをやってみたかったと、どんどんチャレンジしてくれる。そうすれば国は前へ行く。そういう国を作りたいと思っているし、そういう国のリーダーになりたい」と語った。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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