逃げる男性、高い未婚率、困難な就職…15歳で母親になった少女が訴え「同じ立場の人の助けになれたら」
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 愛知県に住む幸希くん(2)。面倒を見るのは、お姉さん、ではなく、母親の横井花さん(17)だ。中学3年生だった15歳の時、妊娠・出産した。相手は交際していた同級生だった。

 「不安だらけで、妊娠したらどうなるのか、携帯でめちゃくちゃ調べた。相談窓口に電話するのも、病院に行くのも怖くて、1人でずっと抱えていた。でも、お腹が動くと愛情が出てくる。私の母は離婚していて家庭が暗かったし、自分が子どもを産むことで家庭が明るくなると思う、頑張って産んで、ちゃんと育てて、責任を取りたかった」。母・浩子さんは「お風呂に入った時、(お腹が大きくて)ん?と思ったけど、まさか…ということで、何も考えられなかった」。

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 さらに出産1か月前には、子どもの親である同級生から、LINEなどがブロックされ、連絡が取れなくなってしまったという。「“自分の子どもじゃない”と言われてしまった」。それから2年、連絡が来たことは一度もない。「自宅も変わっていないようなので、学校に聞けば連絡先は教えてもらえると思う。でも、関係を持っているのが嫌という感情もある。母からも、会うのも、子どもを見せるのもダメだと言われていた。最初はそれを受け入れられなかったけど、出産と同時に本当にやめて欲しいと言われたので、そのまま連絡が取れないような形にした。やっぱり生活は大変だし、養育費が欲しいなという気持ちはある」。

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 高校進学を諦め、今は母・浩子さんと一緒に、実家で支援を受けながら生活している。収入は学童保育所のアルバイト代の7万円。節約のため、服やおもちゃは中古品を購入。スーパーに行っても割引品を狙い、必要最低限しかお金は使わない。「これからお金がどんどんかかってくるので、どうやってやりくりしていけばいいのかな」と、将来への不安は募るばかりだ。それでも「子どもは宝物だし、幸せの塊みたいな感じ」と笑顔を見せる。浩子さんも「産んでよかったかなという思いはある」と話した。

 出演の動機について、「同じような経験をしている方はいっぱいいるので、その人たちの助けになれたらなとか、そういう経験をしてしまうかもしれない方たちに、こういう状況になるだよ、ということを伝えたい」と話す桃花さんに、「偏見の目を向けられることもあるのに、勇気を持って出た。ありがとうございます」と話すのは、NPO法人「10代・20代のにんしんSOS新宿」の佐藤初美代表理事だ。

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 佐藤氏は「なぜ桃花さんは男性と連絡を取らないのか、と感じる方もいると思う。しかし、私たちが対応してきた中高生のケースでは、特に男の子の親が息子を守るのに必死になり、男性遍歴があるかのような噂を流され、女の子の側がどんどん地域社会、学校に居づらくなり、傷つくケースも少なくなかった。桃花さんのお母さんが連絡を取るなとおっしゃったのも、そのためだと思う。出産すればDNA検査で証明されるので、それまでは相手の男性を責めたり、連絡を取ったりすることは勧めない」と慮った。

■親に愛されなかった分、子どもを愛して愛される立場になりたかった

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 桃花さんのように10代で母親になる女性は年に約9000人に上っており、さらにそのうち約35%が婚姻届を提出せず、シングルマザーになるという調査結果もある。

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 元地下アイドルのユウナさん(19)もまた、交際相手の男性に逃げられてしまった1人だ。「“女の子だったらいいね”とか言っていた。一緒に寝る時も人形を子どもに見立てて、私との間に置いて一緒に寝たりしていた」。しかし「お金がないから」と、妊娠発覚からわずか半月後にユウナさんの元を去っていった。

 「父親が些細なことですぐカッとなっちゃう人で。ガラスに思いきり体を叩きつけられたり、制服の襟元を引っ張られて破かれたり。いじめにあって、友達もいなくて、家の中でも孤立している状態だった」。そんな家族との関係に悩んできたからこそ、子どもを産んで、明るい家庭を築きたいと願っていただけに、そもそも中絶という選択肢は無かった。

 一人で産み育てることを決意したユウナさんだったが、やはり就職では壁にぶつかった。「就職試験を受けに行っても、“仕事と両立できる?”“育てられる?”と理解が得られず、正社員で採用されることは少なく、収入も少なくなってしまう。結局、多くの方が貧困に陥ってしまう」(佐藤氏)

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 また、2歳の娘を育てるレイさん(仮名、19)が妊娠したのは高校2年生だった16歳の時のこと。「学校に“大事な子どもができたんですけど…”と話をしたら、学業を続けさせるわけにはいかないからと言われ、自主退学になった」。さらには相手の男性との連絡も取れなくなり、「自分で育てたいという思いがあったけど、中絶することになった」。

 1年後、別の男性と恋に落ち、再び妊娠。しかしこの時も男性に逃げられた。「安易な考えではあったけど単純に自分の子どもが欲しいと思った。母が妹の面倒ばかり見ていた。安易な考えではあったけど、自分が妊娠することで目を向けてもらいたかった。自分が親に愛されなかった分、子どもを愛して愛される立場になりたかった」。

 しかし収入は少なく、子どもは両親に育ててもらう日々。レイさんの家の冷蔵庫はいつもガラガラで、「1袋か2袋くらい持って行って100円くらいになる」と、使用済みのペットボトルを換金するなどし、なんとか暮らしている。「10代というだけで周りの大人から色々言われることも多いし、精神的に自分を追い詰めることもある。自分なりに少しずつ周りに認めてもらうように努力していかないと」と、安定した生活のため、就職を強く望んでいる。

 佐藤氏は「自分を否定されて育った方が、暖かい家庭を作れるのではないかという期待を抱き、望んで妊娠することもある。しかし相手の男性はそういうふうに考えておらず、単なる性のはけ口としか考えていない場合すらある」と話す。「皆さん葛藤の中で産んで、守って、育てている。生活保護を申請しつつ、就労支援のハローワークのプログラムを活用するなど、胸を張って進んで頂きたいと思う」と話した。

■自治体のサポート、性教育の不足も背景に

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 このように、当事者が様々な課題に直面してしまう10代の妊娠。

 佐藤氏は「虐待予防の観点から母子保健法や虐待防止法、児童福祉法が改正されたが、相談窓口があることはまだまだ知らされていないし、私たちのような24時間対応の窓口は圧倒的に少ない。また、役所では多くの資料を配られるが、やはり10代の子にとっては理解できないことも多い。そこで10代の子たちはネットで検索することになるが、はっきり申し上げて9割方、間違った情報だ。それで余計に混乱する。余計に混乱してしまって、何をどうしたらいいのか分からなくなる。まずは相談しに来て欲しいし、医療機関の情報を見て欲しい。あるいは保健センターや子育て包括支援センターの保健師さんを窓口にして、自治体につなげてもらうことだ」と説明。

 また、「特に2000年以降、命の教育=人権という、全人的な教育としての性教育が行われなくなった。また、学習指導要領で、理科で受精や妊娠中の状態は学んでもいいが、実際の性行為や避妊には触れてはならないので、そこをきちんと教わっていない。かたや性に対する興味関心は小学校3、4年生から先行してしまい、スマホで調べてしまう。そして幼いがゆえに、好きだなと思っている女の子を、性に対する興味を試す対象としてしか捉えられない。その点、ヨーロッパでは0歳から性教育をということで、ピルの使い方も含めて、男の子にも女の子にも避妊のための教育を行っているし、産婦人科に行くことのハードルも高くない。そうしたことが無いので、日本では30週を超えても未受診という子が多くなる」と訴えた。

 相談は全国の「にんしんSOS」で受け付けている(佐藤氏のNPOでは18時~24時、03-5155-2907または080-4676-0428 SMSもOK)。

(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶映像:15歳で母親にシングルマザーの苦悩と葛藤は?10代の未婚&出産なぜ多い

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