コロナ禍で吹き荒れる罵詈雑言、フェイクの嵐…「SNSとの付き合い方」でひろゆき氏と佐々木俊尚氏が激論
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 新型コロナウイルスの感染拡大が進む中、ネット上には正義感に駆られた過激な言説や、フェイク情報が拡散を続けている。誰でも自由に意見や情報を発信できるSNS時代。今、私たちは情報にどう向き合えばいいのだろうか。

 24日の『ABEMA Prime』では、2ちゃんねる創設者のひろゆき(西村博之)氏と佐々木俊尚氏を中心に議論した。

■「根拠のない意見や個人攻撃、聞くに堪えない罵声が」

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「新型コロナウイルスのことばかり聞いているのがつらいのではなかった。ずっと、誰かが誰かを責め立てている。これを感じるのがつらいのだ。責めるな。じぶんのことをしろ」。

コピーライターの糸井重里氏によるこのツイートに対し、「こういう言葉が本当に困って声を上げている人を責めている」「弱い立場の人たちが追い詰められているのが分からないのか」などの批判の声が殺到した。今、公権力(政府や自治体など)に対するものも含め、ネットを使って批判するということをどう考えればいいのだろうか。

ひろゆき:今は皆が家にいなければならない時期なので、当然ネットがコミュニケーション手段になる。その中で尖った言葉が出てくるのは当たり前だと思う。

ただ、糸井さんの“他人を責めるな”には反対だ。感染を防ぐために安倍政権が必要な政策を打っていないのだとすれば、「こうした方がいいのではないか」という声を上げることによって変えていくこともできると思う。その意味では“政府を責める”というのも必要な手続きではないか。

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佐々木:ただ、批判の中には根拠のない意見や個人攻撃、聞くに堪えない罵声も混じっている。批判のためには何でも許されるかといえば、そうではない。しかも、そういうことを指摘しても、“うるさい、俺たちは正しいことを言っているんだから”と言い返されてしまう。

こんな状況が続けば、正当な批判や、批判するということそのものに対して人々が嫌な気持ちを抱いてしまう可能性がある。我々が今後もきちんとした批判を行っていくためにも、根拠のないことを言いまくったり、個人攻撃や罵声を浴びせたりするようなことは止めさせなければならない。そういう大前提が共有されていないことが、この混乱につながっていると思う。

ひろゆき:大前提としてはそうかもしれないが、ネット上に根拠のない非難やデマがなかった時代があったかと言えば、そんなことはない。

そもそもネットってそういうものでしょ、と思うし、皆がコロナの問題で疲れて感情的になっている状態の中、ネットにユートピアのような状況を作るのは無理だ。

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佐々木:ネットのなかった時代にも鬱憤の捌け口はあったし、今も居酒屋に行けば、おじさんがテレビを見ながら“何だよ、あいつはけしからん”と言うのが聞こえてくる(笑)。確かにインターネットも罵詈雑言が溢れかえる一種の“遊び場”だし、SNSがなかった時代のパソコン通信や2ちゃんねるもそうだった。だから自分の声が相手に届いているとは思っていないのかもしれないし、そういうのは無視すればいいとも思う。

ところが2011年の東日本大震災以降、インターネット上、特にSNS上の空間は、良くも悪くも議論が行われる場、公共圏とみなされようになった。それなのに「所詮は2ちゃんねるみたいな遊び場だから、好きなように罵詈雑言を飛ばしていればいい」と言い続けていると、民主主義の根幹が揺らぐという問題にもつながってくるのではないか。ユートピアになるかどうかは先々のこととして置いておいたとしても、正当な議論がされる場を作っていく努力をしていくことは民主主義社会において重要なのではないかと思う。

■「“SNSは嘘があるメディアだ”という認識を持てばいい」

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感染が拡大する中では、トイレットペーパーの買い占めの引き金になったデマなど、様々なフェイク情報も拡散した。

紗倉まな:私のところにも「お茶を飲むといい」みたいな情報が回ってきた。衝撃を受けたのは、「別に信じてはいないし、嘘も含まれているだろうけど念のため…」と書いて転送してきたこと。“9割は嘘かもしれないけれど、1割は本当かもしれない”、ということが“安心材料”になっているんだと思った。

ひろゆき:TwitterにしろFacebookにしろ、簡単にアカウントが作れてしまうし、誰でも参加できるSNS上の情報は基本的に信用できないもの、という認識を持った方がいい。最初から「SNSは嘘があるメディアだ」ということが分かっていれば、疑いながら情報を見ることができる。そもそも情報が欲しければ、まずはSNSではなく、ニュースのサイトを見るべきだ。

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佐々木:それはおっしゃる通りだが、問題は発信者が影響力のあるインフルエンサーだった場合、デマツイートなのに多くの人が引きずられ、何万回もリツイートされたり、いいねが付いてしまうことだ。ただ、3.11後の教訓で言えば、2種類の人がいた。一つは不安でパニックを起こしてしまった人。もう一つは、政治的な意図を持ってデマを流す人だ。

今回も攻撃的なリプライをしてくる人を見ていると、明らかに不安そうな人と、自分のイデオロギーに忠実であろうとするあまり、敵対する勢力を潰そうと必死になっている人がいる。それらを一緒にして“けしからん”と言ってしまうと余計に不安を高めることになってしまうので、前者については不安な気持ちを和らげるような情報提供をし、後者は批判するという両面作戦でやっていくのがいいと思う。

ひろゆき:科学的に結論が出ていないことについて、専門家は断言的な言い方はできない。だから“可能性もある”というような言い方をしてしまう。コロナウイルスの抗体の問題に関しても、現状での正解は“分からない”ということだろう。

しかし、そういう専門家の考え方、言い方に対し、一般の人は“効果があると言っている”と受け止めてしまう。そこにズレがある気がしている。特に不安な人ほど“日本人はBCGを打っているから大丈夫だ”といったことを言いたがるし、信じて安心したがる。その意味では、不安に思っている人を本当に安心させられる科学的な材料や解決策は提示できないというのも事実だ。だからこそ、今は話し合いをすればするほど、余計に不安になるような材料しか出てこないし、そういう人がネットを使うのは間違いだと思う。

佐々木:まさに専門家は“絶対にリスクはゼロだ”というような言い方はせず、“可能性はあるが、それは限りなく低い”という言い方しかできない。抗体に関してもそうだ。また、専門家の中でも誰が信用できるのかということについては、医療クラスターの中に概ね共通理解があり、それはSNSを横断的に見ていれば、ある程度はわかる。そして、そのことを理解して付いてきている人もたくさんいる。

ただ、状況に合わせて対応策も変化しているということに付いて来られずワーワー声を上げている人たちに引きずられ、それが世論だというように思ってしまう。言っても分からない人は分からない、ということを僕は3.11の時に理解した。やはり、まずは専門家たちの意見を引き受けられる人たちの間できちんと議論のできる圏域を作っていくしかない。

■「誰かを叩くことが課題や目的になっている」

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一方、批判の矛先は専門家会議のメンバーにも向けられているほか、前線で働く医療関係者への差別的発言も後を絶たない。

佐々木:まさに3.11の後と同じ状況だ。あの時も多くの放射線治療や物理の専門家が「御用学者だ」という批判を浴び、黙らされてしまった。最近では北海道大学の西浦教授が政府の専門家会議の議論が伝わっていないからと、積極的にツイートしているが、それに対してバーっと反論が集まって来ている。一生懸命、善意で発信して、リプライを返しているのを見るのは本当に忍びないし、申し訳ない気持ちになる。

ひろゆき:西浦さんは自腹でホテル代を出しているような状態だと言うし、医療従事者についても、いじめられたとか、子どもを保育園に預けられなかったといった話が出ているのにネットではバッシングする人もいる。彼らが辞めてしまったらどうするのかということを考えていない。そういう頑張っている人への誹謗中傷は、“褒める”という方法で打ち消した方がいいと思う。フランスでは8時になると皆で拍手をして、医療従事者に感謝の気持ちを表す。イギリスでも同じだ。どれだけ誹謗中傷する人がいても、感謝する人はこんなにいる、というのを見せることが必要だと思う。

ただ、専門家の人たちの言うことが変遷しているということも背景にあると思う。当初はクラスターを抑えればいいということだったが、今はどこに感染者がいるか分からず、感染している人がそうとは知らずに病院に行って広げてしまうということも起きている。地域によっても正解は違ってきている。だから専門家は状況の変化に応じて発言しているわけだが、人々が理解できずに“こいつ言っていることが違うじゃん。嘘をついていたじゃん”という反応をしてしまう。

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紗倉まな:今回のような有事の際には、「100%これが正しい」とか、「これが一番正しい決断だ」ということを断言することは難しいし、状況が少しずつ明らかになるにつれて対策が変わってくるのは当然のことだと思う。ただ、自分たちが叩いて炎上させたから対策が変わったんだ、意見が反映されたんだという感じがしてしまうから、より燃えやすくなってしまうのではないかと思う。

今、何を、どれだけなすべきかということがわからない中、課題や目的を見つけることに飢えているのではないかと思うと、誰かを叩くことが、その一つになっているのかもしれない。

佐々木:先程も言ったように、本来は専門家の言っていることを横断的に見ていけば共通理解が分かり、自分なりの判断を下すこともできる。ただ、普通の人はそこまでできない。英語では「コミュニケーター」と言うが、そこで専門家の発言を翻訳し、一般社会に提示するのがマスメディアの役割だ。しかし、スポーツ紙やワイドショーが平気でデマを流してしまっているケースも散見され、言っては悪いが、今のマスコミは信用できなくなっている。それで皆が何を信用していいのか分からなくなり、余計に混乱を招いているのではないか。

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ひろゆき:説明したとしても、人は“ワンワード”しか聞かない。“抗体検査に意味あるのか、ないのか”、それだけだ。

佐々木:それは悲観し過ぎではないか。実際に書き込むなどして炎上に加担しているのはネットユーザーの0.5%しかいないという研究もある。逆に言えば、多くの人が見ているだけで声を上げないから、多数派のように見えてしまう。そういう認識は持ってもいいと思うし、日本人の理性、良識をもう少し信じてもいいんじゃないか。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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