所持での検挙数が過去最多…日本でも「医療用大麻」を認めるべきなのか?賛成派・反対派の意見は
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 大麻の所持容疑による逮捕が相次いでいる日本。検挙人数も年々伸びており、2019年には4321人と過去最多を更新しており、逮捕されていない人も含め、一度でも使用したことがあるという人は160万人以上にのぼるとの推計もある。

・【映像】医療用で海外解禁も日本は? 賛成派・反対派と考える

 1948年に制定された大麻取締法では、「大麻」を「大麻草及びその製品」と規定、大麻取扱者の免許がなければ所持・栽培・譲受・譲渡、また研究のための使用もしてはいけない(ただし使用には罰則なし)ことになっており、大麻から製造された医薬品の施用なども禁止されている。

 一方で、成熟した茎や種子、その製品は「所持」の対象から除外されており、免許による栽培も行われてきた。農業としての大麻の歴史は古く、高安淳一・大麻博物館長によれば、福井県にある1万年前の縄文時代の遺跡から見つかった、縄として加工された大麻が最も古い国内での使用跡なのだという。

 こうした規定の背景を、日本薬科大学の船山信次教授は「大麻を栽培しているときには、麻酔(あさよい)という成分が副流煙のような形で体内に入ってくることになる。その場合、検査をすると大麻を使用したのと同じになってしまうことになるが、これを罰するわけにはいかないという考え方だ」と説明する。

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 しかし海外に目を向けると、嗜好用や医療用として大麻が合法化されている国もある。とくに医療目的での大麻使用に関しては、カナダやウルグアイ、アメリカでは30州以上、オーストラリア、イスラエル、イギリス、韓国、タイといった国々で認められている。日本でも合法化は議論され続けており、実業家の堀江貴文氏は新著『東京改造計画』の中で“大麻を利用して性行為の快感を高めることができれば少子化対策になる”と主張している。

 日本でも医療用大麻を解禁すべきなのだろうか。17日の『ABEMA Prime』で議論した。

■推進派の医師「お酒の方が危ないという結果が出ている」

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 医療大麻の事情に詳しい、一般社団法人「GREEN ZONE JAPAN」代表理事の正高佑志医師は「近年の研究の進歩によって、思っていたほど危ないものではなく、実は安全だということが証明され、医薬品としての有用性に関する知見もたまってきている」と話す。

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 「人間の体に備わるエンド・カンナビノイド・システムという情報伝達の仕組みの研究が1990年代から劇的に進み、僕たちの体の中に大麻の成分と同じような神経伝達物質が存在していて、それが体のバランスを整える仕事を担っていることがわかってきた。全ての病気にエンド・カンナビノイドが大なり小なり関わっているので、そこを大麻によって補うことにより、様々な病気の治療につながるということだ。大麻に関する論文は年に2000本、日に5本というペースで出ていて、新しいことが発見され続けている。だからこそ、これだけたくさんの病気に効果があると自信を持って言うことができるということだ」。

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 また、用途について正高医師は「多いのは、痛み止めとして使うケースだと思う。例えばロキソニンや医療用の麻薬は神経痛には非常に効きづらいケースが多いが、そこに医療用大麻が役に立つということがある。また、アメリカで注目を集めているのは医療用大麻によってPTSDやてんかんが楽になったと証言している方が大勢いる。イスラエルでは、がん患者から抗がん剤の副作用がなくなる、痛みが取れる、不安が弱くなる、食欲が増す、よく眠れるといった研究も出ている。さらにチョコレートやクッキーのようなものに入れ、認知症の方に食べてもらうことで、生活の質を落とすことなく落ち着くことができる。がん患者さん食欲のない時にクッキーを作って食べるというのは世界中で行われていて、アメリカにはエイズ患者にブラウニーを焼いて配っていたことから“ブラウニー・メアリー”と呼ばれた有名な女性もいる。さらに塗り薬、貼り薬、湿布や代替医療、サプリメントとして使用されているものも多い」と説明。

 依存症などの懸念についても、「2010年に行われたイギリスの研究では、最も危ないのはお酒で、その後にタバコがあり、大麻さらにその後にくる。スコアで言えば、お酒の危険度が71点に対して大麻は20点。つまり、トリプルスコアでお酒の方が危ないという結果が出ている」とした。

■反対派の研究者「幻覚剤であって、非常に危険なもの」

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 他方、前出の船山教授は「大麻成分の幻覚作用のリスク、医療用としての効能が証明されたわけではないこと」「“医療大麻”というものはなくまやかしの産物であること」「危険ドラッグへの流れを作るもの(ゲートウェイドラッグ)だから」といった理由から、医療用であっても合法化してはならないとの立場を取る。

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 「大麻は幻覚剤であって、非常に危険なものだ。アメリカでも連邦法では禁止されている。合法大麻・脱法大麻、合成大麻という形に発展していき、日本でも危険ドラッグが出てきたという事実もある。そして大麻と大麻成分は分けて考えなくてはいけない。医療用として大麻を使う場合には、非常にいろいろなものが入っていて、含量も違うの、誰でも同じ用に使うのは難しい。そして、“いろんなものに効果がある”ということは、言い方は悪いが“何にも効かない”ということだ。リウマチ、不眠、てんかん、ぜんそく、がんにも効くという、いわゆる万能薬という考え方は、薬としてアウトだ。ペテンに近いという感じがする」。

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 その上で船山氏は「やはり今の段階ではダメだと思う。“蟻の一穴”を開けてしまうことで、蔓延してしまう可能性が高い。こういうことを言うと、“日本は遅れている”と言われることもある。逆だ。日本人と大麻との付き合いは1万年になるというくらい古いもので、下駄の鼻緒や弓道の弦、タコ糸、神社のしめ縄など、神聖な植物として扱い、うまくやってきた。しかし戦後、GHQが大麻吸引というものを持ち込み、麻薬取締法の対象に入れてしまった」と訴えた。

■皆保険制度の日本で導入することのリスクも

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 全米に先駆けて完全合法化したコロラド州出身のパックンは「複雑な思いだ」と話す。「僕の知り合いにも、エイズに苦しんで亡くなった人がいるが、食欲が無くなった時に大麻のおかげで食べられるようになり、すごく救われたと語っていた。一方で、医療用大麻の合法化が、嗜好用大麻の入り口になってしまうことがあると思うし、コロラドの場合、そもそも大麻が蔓延していた。また、アメリカで嗜好用大麻を合法化した州は、睡眠薬の過剰摂取やアルコール依存症よりは大麻の方が危険性は低い、という考え方をしていた。そういう国々と、日本を単純に比較できるのだろうか」。

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 依存症対策にも取り組む元経産官僚の宇佐美典也氏は「依存症の治療として、管理しながら少しずつ減らしていくハームリダクションという考え方があるし、代替品として大麻のニーズがあるのかもしれないが、副作用があることも間違いない。日本ではどこに目的、スタート地点をおくのかだと思う」、慶應大学特別招聘教授の夏野剛氏は「僕は別の観点から今のところ入れるべきではないという意見だ。効果うんぬんの前に、日本では皆保険のおかげで薬が3割負担、高齢者の場合には1割負担で手に入る。だからこそ、お医者さんや薬剤師さんには申し訳ないが、高齢者はものすごい量の薬を出され、薬漬けのようになってしまっている。そこに医療用だったとしても、大麻のような常習性のあるものが解禁されてしまえば、非常に危険なことになる。薬の処方に10兆円の税金がかかっている中、財政的な問題にもなってくる」と指摘した。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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