「いよいよ海洋放出を決断しなければならないタイミングが来た」細野豪志議員と考える福島第一原発の処理水問題
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 東日本大震災による福島第一原発の事故から9年あまり。稼働できなくなった原発の廃炉は決定したものの、かかる時間は最長で40年と言われており、融け落ちた核燃料は今も高い熱を出し続けているため、日々水を注入して冷却している。

・【映像】2022年夏には貯蔵タンクが満杯に...処理方法の議論は?

 こうして毎日170トンほど生まれるのが、原子炉内部に残っている燃料デブリの冷却などで高濃度の放射性物資を含んでしまった状態の水、「汚染水」だ。そして、「汚染水」から、除去の難しいトリチウム以外の大部分の放射性物質を除去した状態の水、「処理水」が、福島第一原発の敷地内にある約1000基の貯蔵タンクに保管されている。

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 この「処理水」137万トンについては、2022年夏ごろに再浄化、さらに海水で薄めて国の排出基準の40分の1程度にし、30年~40年程度かけて海洋へ放出するというのが、3月に東京電力が公表した処理案だ。

 しかし、この「処理水」、さらに再浄化した「処理水」のことも「汚染水」と呼び、海洋放出に反対している人たちもいるのが実情だ。

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 政府も海洋放出の方が確実に実施できるとの報告書をまとめたが、先月30日に行われた意見聴取会では、福島の住民や漁業・観光団体などから「国民の理解が進んでいないので必ず風評被害が起きる」「水産業はいまだ回復していない。10年の努力が水の泡」「風評被害対策の具体性・実効性に欠ける」といった、風評被害に対する不安の声も上がっている。

■細野氏「決断をしなければならないタイミングが来た」

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 こうした状況について、“海洋放出すべき”との立場から、YouTubeなどで積極的に情報を発信しているのが、民主党政権時代に環境大臣・原発事故担当大臣として対応に当たった細野豪志衆議院議員だ。

 「私が担当していた2011~12年当時も、この水を最終的にどう処理するかが重大な問題だった。ただ、その頃は多核種除去設備(ALPS)の能力が十分に高くなかったため、トリチウム以外の物質がまだ含まれていたこと、国民の皆さんが放出について落ち着いて受け止められる状況ではなかったことから、まずはしっかりと保管することに重点を置いていた。しかし、いよいよ決断をしなければならないタイミングが来た。2022年の夏には、タンクが敷地いっぱいになってしまうという現実がある。ちょうどあと2年、しっかりと国民の皆さんに説明をし、準備をして、スタートを切らなければならない。私自身、非常に責任を感じていることもあり、昨年から情報発信をしている」。

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 その上で細野氏は、現状のタンク貯蔵を続けることのリスクも踏まえ、次のように説明した。

 「現行のタンクはかなり丈夫には作ってあるものの、あくまでも一時的なものであって、恒久的なものではない。決して高レベルのものではないが、放射性廃棄物になるので、それ自体の処理の問題も出てくる。また、台風や地震などに見舞われてタンクが損傷する可能性もある。加えて、落下事故によって死亡事故も起きている。あれだけの広大な敷地を管理し続けるのは、金銭面や人的な面にもリスクがある。一方、ALPSの性能は数年で非常に上がっていて、現段階で処理されてタンクに貯められているものは海洋放出してもいいレベルになっているし、初期に処理しきれなかったものでも、最新のALPSであれば十分に処理ができることが確認されている。加えて、放出の仕方については国民にチェックをしてもらわないといけないが、その仕組みも確立できると思っている」。

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 実際、ヨーロッパではイギリスやフランスなど6カ国、北米ではアメリカ、カナダ、南米ではブラジル。そして、アジアでは中国や韓国、日本でも大飯、女川、柏崎刈羽などで処理水を海洋放出が行われてきた(経産省調べ)。

 細野氏は「福島の人が懸念を示すのはよく分かるし、丁寧に説明していくべきだ。また、仮に食料品などに損害が出た場合は補償もすべきだ。しかし、福島以外の人がこのことについて批判するのは正直、理解できない。例えば核燃料再処理工場のある青森県では2007年に1000兆ベクレルを超えるトリチウム水を放出している。そして、そのすぐ北側を泳いでいる大間のマグロを、みんなおいしく食べてきた。しかし、福島から放出される総量は、それよりも少ない。それなのに、なぜ福島のことだけを、福島の外の人が“福島は危ない、危ない”と言うのだろうか。それは率直に言って福島に対する差別だということを言いたい」と訴えた。

■福島の海に排出する方法はないのか

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 しかし、福島の取材を続けてきたジャーナリストの堀潤氏は「僕も世界各国が海に流しているという現状に鑑みて、それよりも厳しい基準で流すのであれば問題ないと思っている」としながらも、「万が一にも安全基準を満たしていないものが出てきてしまった場合、取り返しのつかない風評被害になってしまう。その点のリスク、対策についての議論は煮詰まっているのだろうか。もう一つは、福島以外の海に流す可能性は検討されているのだろうか。福島の原発で作られた電気を東京が使ってきたことも考えると、全てを福島に負わせるということに対して申し訳ない気持ちでいっぱいになる」と指摘する。

 細野氏は「トリチウム水という形での海洋放水は日本も含めて世界で行われてきたことで、しっかりとモニタリングができるし、何らかの事故が起きれば、すぐに止めることもできる。そして、私も福島だけに負担を押し付けたくないという思いから、福島以外の海で放出することの可能性を探ってきた。しかし船で放出するのはロンドン条約違反になってしまうし、別の場所に新たに構築物を作り、そこから出し直すというのも、コスト面を考えれば受け入れられるものではない。国民的な議論を経た上で、やはり福島第一原発から出すのが最も現実的だ」と説明した。

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 一方、原子力市民委員会の後藤政志委員は「希釈して基準以下にしたらいいという考えで大量にある放射性物質を出すのはおかしい。モルタルに詰めて、外に流出しないようにすれば管理としていいんじゃないか」と指摘。同会座長代理の満田夏花氏は「石油の備蓄などに使われている堅牢な大型タンクよる長期保管か、モルタル固化して半地下で処分するサバンナリバー方式を提案している。後者の場合、地下水が流入しないよう外殻を作るようなやり方を提案していて、1000億円くらいでできると試算している。場所については福島第一原発事故の敷地の北側にある場所を使えば、大型タンクにして48年、モルタル固化にして30年分の敷地が確保できる計算だ。もちろん現在置かれている土を運び出さなくてはいけないので、それについては地元の人々と協議しなければならない」と話す。

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 この原子力市民委員会の提案に対しても、細野氏は「アメリカでは、少量の処理水を地下に埋設したという例があるという。ALPSの小委員会でその方法も検討されたが、福島の場合は濃度が低い一方、量が多い。あれだけの水を地下に埋設するとなると、また新たな問題が出てくる。仮にセメントなどに混ぜて固化したとしても、水と、成分の似ているトリチウムの蒸発を止めるのは技術的に非常に難しい。モニタリングも同様だ。加えて、どこにその場所を作るのか。探すだけでも大変な時間がかかる。つまり、多額の費用をかけ、できるか分からないことにチャレンジしなければならないということになる」との考えを示した。

■“反対派”が懸念する、健康への影響は

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 また、前出の満田氏は「東電は2018年まで“ALPSを通しているのでトリチウムしか残っていない”、あるいは“他の放射性物質は基準以下になっている”と説明していいて、同じ年の説明公聴会で出されていた資料にも“他の放射性物質は全部基準内”と書かれていた。しかしストロンチウム90やヨウ素129など、他の核種が非常に残存していることを共同通信がスクープした。東電がその後、“実はタンクの7割くらいの水でトリチウム以外の放射性物質が基準を超えて残存している”と発表し、2次処理するとした。ただ、ALPSをもう一度通すかどうかは明言していない。また、2次処理しても100%は取り切れないと思うので、何がどのくらい残存するのかということについての議論をしなければならないと思う。それからすでに2年くらいが経過しているし、試験を今年度実施すると東電は言っているが、まだ示していない」と不信感を示す。

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 「トリチウムを40分の1、6万ベクレル/kgにするということだが、ミスリーディングだ。実際にはトリチウムを1500ベクレル/kgにしているが、それは地下水バイパスやサブドレンの水など、他に残存している放射性物質も加味して、基準以内にしているからだ。もちろん2次処理すれば、ある程度除去できると思うが、例えばストロンチウム90は最大基準の1万4000倍という状況だ。トリチウムそのものの影響についても専門家によって意見が分かれていて、北海道がんセンターの西尾正道名誉院長は有機結合型のトリチウムがDNAに入った際の影響を指摘している、そういうこともあり、私は青森の再処理施設についても韓国の原発についても反対している。トリチウムという、取るのが非常に難しい物質については、原発の是非に関わるような問題だと思う」。

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 こうした疑問に対して、細野氏は「東電の情報公開の方法や説明の仕方に杜撰なところはあったと思う。しかし実際に放出するにあたっては、2次処理、3次処理とやらなければならないのが当然だと思っていたし、そこはもう一度、説明することが必要だ。また、トリチウム以外の物質については世界中の原発で同じような議論がなされて、同じような基準が作られている。私が1日中その水だけを飲んで生活したとしても、追加的な放射線量は1年間で1mmシーベルト程度なので、ものすごく安全サイドに立った基準だ。それが6万ベクレル/kgだ。その数十分の1まで薄めて放出するということなので、もはや影響が出るということは考えられないレベルだ。健康に被害があるかないかという議論をするのであれば、これは全く問題がないということだけはこの場所で断言できる」と反論した。

■カンニング竹山「メディアも含め、丁寧に説明していかなければならない」

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 震災以降、福島を何度も訪れているカンニング竹山は「僕は福島第一原発にも2回、入らせてもらって考えてきた。僕も基本的には海洋放出するしかないと考えている。水は溜まり続けるので、いずれは置き場所にも限界が来る。今はALPSの性能も向上しているし、言い方も“処理水”で間違っていないと思う」とコメント。「海外で放出されている場所でも、魚たちは問題無く生きている。やはりタンクを減らして、福島を復興させていく方がいいと思う。問題は風評だ。誤解や、感情論もある。原発推進・原発反対という考えもある。知ろうとしない人もいっぱいいるし、興味のない人もいっぱいいる。そこはメディアも含め、丁寧に説明していかなければならない」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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