福山雅治、“表現の原点”に立ち返った「AKIRA」で“ポップスター”の魅力を再認識させる圧巻パフォーマンス

 今回のライブで福山は、12月8日にリリースされた6年8カ月ぶりのニューアルバム「AKIRA」の全楽曲をパフォーマンス。カメラアングルによって背景演出を変化させられる【センターステージ】、全面が白で覆われた【ホワイトステージ】、アルバム「AIKRA」のアートワークとリンクした【「AKIRA」ステージ】の3つのステージを設置し、アルバム「AKIRA」の世界を表現してみせた。また、事前にファンから募集した拍手、歓声が使用されるなど、オンラインライブならではの演出も。ライブ前に発表されたコメントで福山自身が語っていたように、「約2時間に渡る、「AKIRA」という一つの映画を観ていただくような、今しかできない音楽表現、今しかできないエンターテイメント」を味わうことができた。

【画像】全ての言葉を“手渡すよう”に歌い上げる福山雅治

 ニューアルバム「AKIRA」をフィーチャーしたキャリア初のオンラインライブは、「2020年春」「世界からかつてのようなライブが消えた」というアナウンスから始まるドキュメンタリー映像からスタート。予定していたライブを停止させた福山雅治は、バンドメンバーとスタジオに入ることすら出来ない状況のなか、それでもクリエイティブを止めなかった。その根底にあったのは「バッドハプニングもグッドハプニングも」「すべてを有機的にエンターテインメントへと帰結させていく」という決意。「それこそが自分が歩いてきたクリエイティブの本質なのではないか」という思いを胸に制作を続けた福山は、内なる声と向き合い、自らのクリエイティブの原点に立ち返ることになる。

 福山雅治は17才のときに父親と死別している。そこで生まれた死生観を抱えながら音楽の道を歩んできた彼は、デビュー30年を迎えた2020年、6年8カ月ぶりとなるアルバムに辿り着く。タイトルの「AKIRA」は、父親の名前。アルバムの全収録曲を映像とともに描き出す今回のオンラインライブは、福山にとって新しい試みであると同時に、彼の表現の根源につながっているのだ。

福山雅治、“表現の原点”に立ち返った「AKIRA」で“ポップスター”の魅力を再認識させる圧巻パフォーマンス

歌声、ステージングはまさに“ポップスター”そのもの

 画面はスタジオに切り替わり、1本のスタンドマイクが映し出される。そこに登場したのは、白の衣装に身を包んだ福山雅治。

「こんばんは、福山雅治です。『30th Anniv. ALBUM LIVE AKIRA』にアクセスいただき、ありがとうございます。今ご覧になってるあなたにとっては、そして僕にとっても、1年前はまったく想像していなかった形でのライブです。ですが、今しか出来ない音楽、今しか出来ない映像表現、存分に楽しんでいただけたらと思っています」

 オープニングは、アルバムの1曲目に収録された表題曲「AKIRA」。アコギ、キーボードを演奏するミュージシャンの手元の映像とともに、『何をすべきかわかっている/それはこの血が知っている』という歌詞が届いた瞬間、福山雅治の奥深い音楽の世界に誘われる。父親に対する思い、父親が生きたかった未来、脈々と受け継がれる鼓動を綴ったこの曲はもちろん、アルバム「AKIRA」の核となる楽曲だ。マイクの前で真摯なパフォーマンスを続ける福山の姿--全身から目のアップまでーーを捉えるカメラワークも素晴らしい。

 ここで福山は【「AKIRA」ステージ】に移動。バンドメンバーとともに自身が出演するレグザX9400シリーズのテレビCMの為に制作されたインスト曲「煌(こう)」、そして、アルバム2曲目の「暗闇の中で飛べ」を披露する。アコギの響きとハンドクラップ、『Wow~Wow~Wow』というコーラスにより、ライブの高揚感は徐々にアップ。『暗闇の中で飛ぶんだよ』というメッセージを響かせる福山の真っ直ぐな視線から目が離せない。壮大なスケール感をたたえたサウンド、ステージの周囲と床に設置されたスクリーンに映し出される映像も、楽曲に込めた思いをしっかりと増幅させていた。

「どうもありがとう!(事前に募集した観客の歓声が響き渡る)。今回は大きな会場に3つのステージを用意しました。では、3つ目のステージに移動してみます」とセンターステージに移動。「本当にたくさんの声(歓声)をいただいて。一人一人の声をミックスすると、こういう大声援になったんですよ。ありがとうございます!」「この声を聴くだけで、みんなの顔が浮かびます」という言葉、そして、アルバム「AKIRA」がオリコンウィークリーランキングで1位を獲得したことを報告し、感謝の気持ちを伝えた。

 さらにアルバム「AKIRA」に改めて言及。「『AKIRA』は、僕が17才のときに他界した父の名前を冠したアルバム。ソングライティングの時間は、17才のとき、非常に無力感を感じたときの自分――51才の僕が17才のときの自分に会いに行く旅といいますか。それはなぜかというと、自分がソングライティングをやりたいと思った動機は、あの苦しい時期から始まったんだろうなと思うようになったんですね」とコメント。アルバム「AKIRA」に込められた深い意味を真っ直ぐに話した後、収録曲を曲順通りに披露していく。

 美しく、可憐なピアノのフレーズから始まったのは、「革命」((映画『新解釈・三國志』主題歌)。ステージの周りに炎が立ち上がり、赤と青が混ざり合うライティングのなかでドラマティックなメロディが広がっていく。福山自身のギターを軸にしたアレンジ、迫力あるホーンセクションがせめぎ合うサウンドメイクも最高。自分自身と戦いながら、「新しい世界に飛び込め!」と鼓舞する歌詞は、先が見えない2020年の社会に向けられた鋭い刃のようだ。

 続く「Popstar」では、福山のファンキーなギターフレーズに導かれ、バンド全体がさらに濃密なグルーヴを生み出す。煌びやかなレーザー、カラフルなライティングに彩られたステージ、“絵になる”としか言いようがないステージングはまさに“ポップスター”そのものだ。しかし、歌詞はかなりシリアス。「明日もPopstar/売るのさ/醜聞も音楽も/人格も人生も/全部」というフレーズには、ポップスターとして生きる彼自身の覚悟でもあり、世間が求めるスター像に対するちょっとした反発のようにも感じられる。この繊細な表現をダンサブルなポップチューンに結びつけ、極上のエンターテインメントに昇華できるセンスもまた、福山雅治の凄さだろう。

福山雅治、“表現の原点”に立ち返った「AKIRA」で“ポップスター”の魅力を再認識させる圧巻パフォーマンス

全ての言葉を“手渡すよう”に歌い上げる それが福山の魅力

 ド派手なステージを決めた後は、再び【「AKIRA」ステージ】へ。

 「ライブというものは、オーディエンスがいてこそ完成するものだと思っています。とは言え今回、こういう状況で対面でのライブができないということで。だからと言って諦めるという話ではないので、今だからこそやれる表現にトライしてみようと。『AKIRA』というライブは、ライブの実験場でもあり、ショーケース。ここからも画面越しでお楽しみください」という言葉を挟んで演奏されたのは、ラテンのフレーバーをたっぷりと注ぎこんだ「漂流せよ」。アコギでイントロを爪弾き、官能を感じさせる旋律を描いていく姿からは、大人の色気がムンムンと伝わってくる。何かに縛られているような日々を抜け出し、五感を解き放とうとする歌詞の内容、そして、切ない情熱をたたえたギターソロにも惹きつけられた。

 ここで2017年にミュージックビデオの撮影のために訪れた故郷・長崎での映像が映し出される。36年ぶりに訪れた小学校で福山は、子供たちに会った。その目的は、トモエ学園の創立者である小林宗作の「大人たちが考えていることよりも、子供たちが考えていることのほうが全然大きいから」という言葉。さらに自由教育の実践の場だったトモエ学園に昭和15年に転校した黒柳徹子の幼少時代が紹介された後、【センターステージ】で「トモエ学園」(テレビ朝日系 帯ドラマ劇場『トットちゃん!』主題歌)が披露された。自由という言葉を「すべての個性を肯定すること」と捉えて制作したという「トモエ学園」。違いを認め合い、個性を認め合うことの大切さを綴ったこの曲には、分断と格差が広がる今の社会に向けた大切なメッセージが込められている。ピアノ、ストリングスを中心とした有機的なサウンドのなかで、全ての言葉を手渡すように歌う福山。キャンドルとスモーク、星のような照明によるロマンティックな空間もこの曲の世界観にぴったりだ。

「失敗学」(日本テレビ系 水曜ドラマ『正義のセ』主題歌)、「甲子園」(NHK高校野球テーマソング)は【「AKIRA」ステージ】でパフォーマンス。

 福山がバンジョーを演奏した「失敗学」は、カントリーの雰囲気を取り入れたナンバー。ルーツミュージックに立ち返りながら、現代的なポップンセンスを取り込みながら再構築したこの曲は、「AKIRA」の音楽的なスタンスを象徴する楽曲の一つだ。アレンジの意図を深く理解し、生き生きとしたサウンドを立ち上げる演奏も文句なく素晴らしい。“失敗してもいい。それを学びに変えて進んでいこう”と語り掛ける歌詞も心強い。

 ライブ中、ABEMAのコメント欄では「皆さんファン歴どれくらいですか?」「20年です!」「まだまだ10年ちょいです」「30年」といった答えが寄せられるなど、ファン同士のやり取りも。こうしたファン同士のつながりも配信ライブの楽しみだろう

 「甲子園」はタイトル通り、高校球児にエールを送る楽曲。2020年は高校野球をはじめ、多くのスポーツ大会が中止に。この楽曲に勇気づけられ、前を向くきっかけを得た10代も多いのではないだろうか。

「次の曲は(タイアップではなく)アルバムのために書き下ろした曲です」という「ボーッ」は、【ホワイトステージ】で演奏。「僕はボーッと出来ないんですよね。考えてもどうにもならんな、とか、今じゃないなってこともあるけど、それでも考えちゃうんですよ」

 そんな言葉に導かれたこの曲は、パスカルの「パンセ」の一文「人間は考える葦」にインスパイアされた楽曲だという。レゲエのリズムに乗せて『今日はボーッとしようぜ』と歌い上げると、ライブは穏やかな空気に包まれる。優しい笑顔と深すぎる歌詞のコントラストも興味深い。

 「ボーッ」のリラックスした雰囲気から一転、「心音」((日本テレビ系 水曜ドラマ『#リモラブ ~普通の恋は邪道~』主題歌))では、切なく、愛らしい恋愛感情をエモーショナルに歌い上げる。コメント欄には「いつも思うけど、ましゃの生歌、CD聴いてるのと変わらない。すごいなー!」という言葉が。どんなテイストの楽曲も正確に歌いこなすボーカルは、やはり格別だ。

「お肉やおさかな、お野菜もそうですけど、僕らは命をいただくことで生きてる。そういう当たり前のことは当たり前じゃなかったんだなと改めて気づかされたのが、コロナ禍だったんだなと思います」というMCに導かれたのは、「幸せのサラダ」((キユーピーハーフ CMソング)。命への感謝、慈しみを綴ったこの曲は、“サラダ”をモチーフにしつつ、“命”そのものを描いた楽曲だ。オーガニックな音響と素朴なメロディ、そして、普遍的なメッセージを含んだ歌詞が一つになったこの曲もまた、死生観をテーマにしたアルバム「AKIRA」を象徴するナンバーだ。「この曲流して朝は朝食とってるよ」「明日のサラダ何にしよう?」というファンの反応も可愛かった。

福山雅治、“表現の原点”に立ち返った「AKIRA」で“ポップスター”の魅力を再認識させる圧巻パフォーマンス

画面が8つに…配信ならではの自在なカメラワークも圧巻

 ここからついにライブは後半へ。まずは【「AKIRA」ステージ】に移動、モノトーンのジャケットに着替えて(コメント欄には「生着替え!」「かっこいい!」の文字が並んでいた)、「1461日」((テレビ朝日系列リオ五輪/平昌五輪テーマソング)を演奏。自問自答を繰り返し、ときには残りの人生に思いを馳せながら、4年に1回の晴れ舞台に挑む者たちに勇気をもらい、泣きそうになってしまう。アスリートへのリスペクトを刻んだこの曲は、2020年を生きる全ての人へのエールのようだった。金の紙吹雪が舞うステージでバンドメンバーとの演奏を楽しむ福山の笑顔も印象的だ。

 妖しい雰囲気のストリングから始まった「聖域」((テレビ朝日系 木曜ドラマ『黒革の手帖』主題歌)では歌謡、ジャズ、ロックが混ざり合うハイブリッドなサウンドが響き渡る。スタンドマイクを持ち、腰を揺らし、指を鳴らしながらセクシーな声を響かせる福山はまさに大人のエンターテイナー。最後のサビで画面が2つ、4つ、8つに分かれるなど、配信ならではのカメラワークも楽しい。

 バンジョーギターの音色とチャールストン風のアレンジが楽しい「いってらっしゃい」((日本テレビ系 朝ドラマ『生田家の朝』主題歌)で“がんばりすぎず、日々を乗り切りましょう”と軽やかに歌い上げた後、「すべてのパフィーマンスを最前列でご覧いただきたいと思っております!」「もっともっと一つになりますよ」というMCから「零-ZERO-」(「劇場版『名探偵コナン ゼロの執行人』主題歌)へ。ステージの周りで炎が立ち上がるなか、スパニッシュの香りが漂うギターソロを披露。『真実はひとつでも/正義は そう 涙の数だけ』というラインを高らかに歌い上げ、熱量の高い管楽器を軸にまるで西部劇のようなサウンドが生み出される。赤、オレンジを貴重した照明と映像を含め、視聴者のテンションを一気に引き上げた。

 続く「始まりがまた始まってゆく」(「ダンロップ ビューロ CMソング」)は、マーチングバンド風のビート、クラシカルなストリングスが溶け合うナンバー。『僕が知らない僕に会いに行こう』というフレーズからは、音楽シーンにおける確固たるポジションを手に入れながら、常に未来に向けて歩き続ける福山の姿勢が伝わってきた。

 ライブはいよいよクライマックスへ。ラストの「彼方で」の前に福山はこんな話をした。

「アルバム『AKIRA』の1曲目から曲順通りにお送りしてきましたけど、いよいよ次で最後の曲になります」「旅立った人に対する、残された者の思いを歌った歌です。発売になって、ラジオ、Twitter等々、聴いてくださった間奏、受け取った思いを見させていただいてますが、本当に様々な受け取り方と解釈、思い浮かべる方が一人一人違っています」「今日最後に歌わせていただきますが、どんな人を思い浮かべてくださるのでしょうか」

 シックな響きのストリングス、切ない情感と深遠なスケールを共存させたメロディ、そして、遥か彼方にいるはずの“あなた”への思いを響かせる歌詞。普遍的な魅力を感じさせるこの曲を福山は、ファルセットを交えたボーカルで表現し、大きな感動で包み込んだ。命の尊さとつながりの素晴らしさを歌い上げた「彼方で」は今後、福山雅治の新たな代表曲として浸透することになりそうだ。

「いろんなところで、いろんな場所で、いろんな人たちがいろんな楽しみ方をしていただけたと思います。またやろう! また逢おう!」と手を振り、ライブはエンディングを迎えた。アルバム「AKIRA」の深く、豊かな世界を多面的な演出によって描き出した、きわめて意義深いオンラインライブだったと思う。

福山雅治、“表現の原点”に立ち返った「AKIRA」で“ポップスター”の魅力を再認識させる圧巻パフォーマンス

■『FUKUYAMA MASAHARU 30th Anniv. ALBUM LIVE AKIRA』セットリスト

M1 AKIRA

M2 煌

M3 暗闇の中で飛べ

M4 革命

M5 Popstar

M6 漂流せよ

M7 トモエ学園

M8 失敗学

M9 甲子園

M10 ボーッ

M11 心音

M12 幸せのサラダ

M13 1461日

M14 聖域

M15 いってらっしゃい

M16 零 -ZERO-

M17 始まりがまた始まってゆく

M18 彼方で

【映像】30周年オンラインライブ『FUKUYAMA MASAHARU 30th Anniv. ALBUM LIVE AKIRA』
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ABEMA
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