このツアーのうち、1月30日と31日に東京都・東京国際フォーラム ホールAにて行われる公演がABEMA PPV ONLINE LIVEで配信される。ABEMATIMESではこれに際し、HYDEへのインタビューを実施。配信ライヴについてはもちろん、これまでの20年間を振り返ってもらいながら、2020年という“特殊な1年”が彼にもたらしたものを聞いた。

世界中のミュージシャンが僕のメンバーになりうる

──2021年はHYDEさんのソロ活動20周年、さらにL'Arc-en-Cielも結成30周年という節目の年ですね。

HYDE:そうだね。

──ソロとバンドの両方でこれだけ長いこと一線にいる人はかなり珍しいですよね。ほかには桑田佳祐さんくらいしかパッと思いつかないんですけど、なぜそんな離れ業が可能だったんだと思いますか?

HYDE:うーん、好きなことをやっていたらいつの間にか20年経っていた、って感じで……。僕はソロに関しては基本的にあまり“売れる曲”というものを目指してるわけじゃないから、アンチな作品が多いんですよね。「時代が今こうだから、逆にこうしよう」みたいな。それでもファンの人がちゃんとついてきてくれるのは、真摯に音楽を作っているからじゃないかなと思っていて。僕は自分の好きな音楽をやっているだけだから、びっくりするような作品を突然リリースすることもあるけど、単に興味本位で作っているわけじゃなくて常にクオリティをしっかり追求してきた。だからファンのみんなも安心して聴いてくれるっていう、その関係性をうまく築けているということなんじゃないかな。

──ファンとの信頼関係が肝であると。ソロとバンドで、意識の違いは?

HYDE:ラルクはある意味リーダーが4人いるような感じなので、どうしたらメンバーに気に入ってもらえるかを意識したりはします。その点ソロは自分だけなんで、気楽といえば気楽ですよね。

──ソロでやることの喜びは、やはりそういう部分にあるんでしょうか。

HYDE:最近気がついたんだけど、ソロでやってると、ある意味では世界中のミュージシャンが僕のバンドメンバーでもあるなと。バンドで活動する場合は固定のメンバーで全部完結しないといけない雰囲気があるじゃないですか。ベースはこの人、ドラムはこの人、ギターはこの人って決まっている上で何ができるかという世界だけど、ソロの場合は、たとえばカッコいいベーシストを見つけたらすぐ「ちょっと弾いてよ」ってできる。

──ギターを何人にするかとか、編成自体にも囚われなくていいということですね。

HYDE:そうだね。ただ逆に言うと、責任が全部自分にかかってくるということでもあって。ワンマンになりすぎてもダメだし、ソロをやっているといろんなことに気づかされます。たとえばラルクではてっちゃん(Tetsuya / B)がリーダーなんだけど、「リーダーって孤独なんだな」と彼の気持ちがわかるようになりましたよね。バンドのためにと思った指針を評価されないことも多々あるし。

積み上げてきたものがゼロになる感覚 自分のロックを追求した20年

──20年間ソロ活動をしてきて、HYDEさんにとって最も大きな出来事はなんでしたか?

HYDE:VAMPS(HYDEがOblivion DustのK.A.Zと2008年に結成したロックユニット。2017年に休止)の活動が止まったときかな。なんだかんだ、この20年って自分のロックというものを追求する期間だったと思うんだけど、その中でもVAMPSではけっこういろんなことをやれたんで。自分の夢をそこに賭けてたから、それがうまく回らなくなって「これ以上は進めない」と感じた経験は僕にとって大きなものだった。それまで積み上げてきたものがゼロになるような感覚はありましたね。

──単に活動を休止するという以上の喪失感みたいなものがあったわけですね。

HYDE:あとは、やっぱりスタートかな。2001年に初めてラルクを出て自分の作品を作ったとき。あれは自分にとってかなり大きな仕事でしたね。その頃はまだ「世界中のミュージシャンが自分のバンドメンバーだ」なんて思ってもいなかったから、「全部自分で考えなきゃ」って。怖かったし、メンバーのありがたみがわかった。その代わり自由もあるから、自由と不安が表裏一体というかね。

──それから20年やってきて、得たものとしては何が大きかったと思いますか?

HYDE:VAMPSの活動が一旦終わって、「もう一度ゼロからVAMPSと同じ位置まで行ってやろう」と前向きな気持ちになれたこと。この20年間を背負って「今が一番充実してる」と思えていることが、得たものとしては大きいかな。

──実際、VAMPSという名前でもHYDEという名前でもしっかり結果を残してきました。そうなると、仮に今後また別の名前で活動することがあったとしても、どこまででも行ける自信があるのでは?

HYDE:それは全然考えてないですけど(笑)。でも、いつでもスタートはできると思いますよ。

「東京にいる必要、あんまないな」と感じた1年

──2020年という年はあらゆる人にとって困難な1年だったと思います。HYDEさんにとってはいかがでしたか?

HYDE:いろんなやる気がなくなりましたね。ツアーがなくなったりして、「じゃあ音源作るか」って前向きに考えたりもするんだけど、それすら締切が曖昧で。「今すぐ完成させなくても、べつに来月でもいい」みたいな状況が続いてたんで、なかなか気合が入らない感じでした。ファンの子たちにはなるべく前向きなことを言ってあげたいんだけど、その気力すら出なくて。自分がやる気ないのに空回りするのも嫌だし、けっこうダラダラ仕事してましたね。

──それがもどかしかった?

HYDE:それはそれでダラダラ生きていけるのが良くも悪くもね。計画は再開の目処もたたないし。もちろん、だからといってクオリティは落としたくなかったから、出した作品ではちゃんとしたものを作りましたけど。

──逆に、こういう状況だからこそ見えたものもあったんじゃないでしょうか。

HYDE:リモートの生活かな。「東京にいる必要、あんまないな」というのはすごく思いましたね。これを機に、一度みんな東京から離れてみたらいいと思うんだよ。「あ、東京じゃなくてもいいな」って気づいている人も多いんじゃない? そうすることで、また違った面白い社会になるんじゃないかな。

──HYDEさん目線で言えば、それこそ「アメリカにいなくてもいいな」みたいな……

HYDE:まあ、ライヴがないからね。レコーディングにしても、スタジオに集まって一緒に作業することが難しいからネット上でつないで進める感じでしたけど、それで成立してるからすごいよね。作品のクオリティも落ちてないし、「できるんだな」って。

この状況に合わせた曲を作る余力はない

──2020年の印象をざっくりまとめると、それはHYDEさんにとってポジティブなものになりますか? それともネガティブなもの?

HYDE:いやあ……難しいな、それ。

──もちろん両面あるとは思うんですけど……。

HYDE:あるよ。でも、ポジティブでありたいね。なんだかんだで長期のお休みみたいなところもあったし、この時期だからこそできたこともあったなと思うと。がんばってきたご褒美として、ちょっとゆっくりさせてもらったというか。

──その“この時期だからこそできたこと”を、何かひとつ具体的に挙げられますか?

HYDE:自宅の庭の木にね、顔を彫ったの。

──顔? ご自分のですか?

HYDE:いや、おじいさんの。ずっと庭を眺めながら「おじいさんの顔を彫りたいなあ」と思ってたんで、この機会に実行に移しました。ノミとかチェーンソーとかを買ってきて、グワーって掘って。カッコいいのができましたよ(笑)。今、その木が庭を見守ってます。

──人面樹が。掘ったのは1本だけですか?

HYDE:それは試作品で。もう1本でかい木があるからそっちで本番をやろうと思ってるんですけど、それはまた先の楽しみですかね。

──まさにこの時期ならではのエピソードですね。そんな2020年を経て、2021年はいろいろな新曲をリリース予定と伺っています。どんな音楽を届けていこうと考えていますか?

HYDE:僕的には、通常の世界に戻ってもらわないと困るんですよね。それを目指して曲を作ってるんで。そうなると信じて、今は曲を作っています。この特殊な状況に合わせた曲を作るような余力はないし、ライヴハウスで元のように激しいライヴができることを願いながら。

──ライヴハウスでファンのみんなと一緒に作りあげていくための曲をこれまでも作ってきたし、これからも作っていくと。

HYDE:そうですね、はい。

どんなホールでもうまくやる自信がある

──では、1月30日と31日に行われるABEMA PPV配信について伺います。現在行われている有観客ライヴツアー「HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE」の東京国際フォーラム公演が配信でも観られるということで。

HYDE:ホントはね、年末のアリーナはスタンディングでグチャグチャになってやるようなライヴを予定してたんだけど、それは今後1年くらいはできないんじゃないかということで、じゃあ座ってソーシャルディスタンスが保てるアコースティックスタイルにしようってなって。それがすごく面白い形になったから「これはぜひみんなに観てもらいたい」と思ったんで、この機会に配信でもやらせてもらおうと。

──昨年9月に東京・Zepp Hanedaで5日間にわたって行われたライヴ「HYDE LIVE 2020 Jekyll & Hyde」で、何か手ごたえをつかんだということですか?

HYDE:うん。そのときは「Rock Day」と「Acoustic Day」があったんだけど、アコースティック編成なら地方でもできるなと。これまで避けてきたホールでもうまくやれるんじゃないかな。叫んだり暴れたりっていうライヴはさすがに安全性が確保できないけど、着席で声を出さずに観てもらうぶんにはスーパーに行くより安全だし、このアコースティックスタイルは僕自身も楽しくやれるし。「この完成度をもっと上げていけば、すごく面白いものが見せられる」と思えたんで、その進化形として今回のツアーがあるわけです。

──実際にステージを拝見した感想としては、ホールどころかブルーノート東京やビルボードライヴのような会場にも対応できそうに思えました。むしろそういうシックなムードの会場でこそ観てみたいというか。

HYDE:そうだね。アレンジがちょっとジャジーになってるんで、そういうのも似合うと思います。

配信ライヴ、できる限り音量を上げて楽しんで

──配信で参加するファンの方へ向けてメッセージをお願いします。

HYDE:できる限り音量を上げて観てほしいね(笑)。寒い時期だから窓を開ける必要もないし、ちょうどいいじゃん。酒でも飲みながら、家の中は安全なんで叫んでほしいよ。多少は近所迷惑かもしれないですけど、そんなに遅い時間でもないし、コロナのあれこれに比べたら「近所に迷惑かけて怒られる」なんてかわいいもんじゃないですか(笑)。そういうところでうっぷんを晴らしてもらえれば、気持ちよく次の日を迎えられるというかね。「エンタテインメントがあってよかった」と思ってもらえると思うんで、そういう意味でも息抜きに全力で楽しんでほしいな。

──会場は入場人数も制限されていますし、配信ならチケットが取れなかった人や、地方の人でも楽しめますね。

HYDE:「地方へ来てください」という声が多いからって全国ツアーを組んでも、それでも来られない人は出てくるわけですよ。その人たちに観てもらいたいよね、この時期だからこそ。僕の配信ライヴはすごく面白いと自負しているので、この機会にぜひとも。

──ちなみに、HYDEさんはほかのアーティストの配信ライヴを観ることは?

HYDE:僕の好きなGASTUNKが去年配信ライヴをやってたんで、それは観たよ。暑い時期だったから窓は全開だったんだけど、テレビのボリュームも全開にして(笑)。大声で歌いながら観たら、「なんて気持ちいいんだ」と涙が出てきました。あれはけっこう、このコロナ世界において僕の中では大きな出来事でしたね。

──ご自身がそういうふうに楽しめたからこそ、みんなにもそれを味わってほしいと。

HYDE:そうそう。じっくり黙って観るのとは全然違うと思うよ。

取材・文/ナカニシキュウ

写真/奥山智明

【PPV ONLINE LIVE詳細】HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE
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