2016年夏に行われたオーディションに合格し、乃木坂46の3期生としてグループ入りした大園。2017年8月に発売された18thシングル「逃げ水」では同期の与田祐希と共にWセンターに抜擢され大きな注目を集めた。その後、一時の活動休止を経験するも選抜の常連メンバーとして活躍。ステージ上では唯一無二のアイドルスマイルを武器に、多くのファンを魅了し、人気を高めた。2021年7月4日にブログを更新し、27thシングル「ごめんねFingers crossed」の活動をもってグループから卒業することを発表。卒業後は、惜しまれつつも芸能界から引退する。ラストライブの会場チケットは完売したが、配信も行われ、多くのファンが大園のラストステージを目に焼き付けた。
生田絵梨花の影ナレの後は、前日の公演に続き、3期生の九州・沖縄出身メンバーによるトークコーナーが展開された。ラストステージを前に大園は「緊張しすぎて、このライブ始まって欲しくないと思ってる(笑)。でも頑張る!」と意気込んだ。その後、同期の3人と鹿児島に関するクイズコーナーを繰り広げ、いつも通りの大園スマイルをファンに見せた。
大園桃子&与田祐希「今日は噛みしめながらやろうね」
「OVERTURE」を経てステージに登場した乃木坂46は、センターに立った遠藤さくらの「福岡ライブ2日目! 最高の思い出をたくさんたくさん作って、最高の1日にしましょう!」という掛け声をきっかけに、「太陽ノック」から勢いよくライブをスタート。それから「ロマンティックいか焼き」「あらかじめ語られるロマンス」「13日の金曜日」「裸足でSummer」といったアッパーチューンを連投し、オーディエンスのボルテージを高めた。
前日に初披露された、乃木坂46の10周年を記念してプロデューサーの秋元康が書き下ろした新曲「他人のそら似」をパフォーマンスすると、この日初めてのMCコーナーに突入。9月に予定されていたツアーファイナルの東京・東京ドーム公演は新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期となってしまったが、齋藤飛鳥は「とりあえずは今日が一旦見納めになってしまうのかなと思うので、さっきパフォーマンスした『裸足でSummer』では、タオルを掲げるお客さんのことを目、ガン開きで見ておきました」と笑顔を見せた。またキャプテンの秋元真夏は前日にラーメン3杯食べたことを生田から暴露され、これに秋元が「昨日食べすぎちゃったから今日のライブで全部消費させようと思ってる」と語ると、飛鳥は「そういうのに、ライブを使わないでくれる?」とツッコミを入れていた。
また同期の与田が「今日で桃ちゃんがライブ最後だから、1曲1曲披露するたびに大事な存在なんだなと改めて思わされて、心がぐるぐるしているんですけど、ツアーを回る中で、桃ちゃんとの思い出を思い返して、1番は『逃げ水』の期間のことがバーっと出てきて…」「『逃げ水』を今後ライブで披露するとき、桃ちゃんがいないことを思うと辛いんだけど、どうしたらいいかな…」と語ると、大園は「ごめんね」と謝る。しかし最後は2人で「今日は噛みしめながらやろうね。頑張ろうね」と、お互い目を見合って誓い合った。
大園桃子&遠藤さくらで「友情ピアス」を披露
和田まあやをセンターに据え「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」を情熱的に届けると、岩本蓮加が真ん中に立ち「~Do my best~じゃ意味はない」を軽やかにパフォーマンス。続けて飛鳥、梅澤美波、山下美月の“映像研トリオ”が「ファンタスティック3色パン」を披露すると、曲中にはミニゲームが行われ、敗者となった飛鳥が“ぶりっ子萌え台詞”を披露することに。「飛鳥ちゃんね、大好きだお」と言って客席を沸かせたが、飛鳥は恥ずかしさからか、たまらずステージに座り込んでしまった。それから、飛鳥は気を取り直して、星野みなみとの“あしゅみなコンビ”で「制服を脱いでサヨナラを...」が爽やかに届けた。
ここからは期別コーナーへと突入。2期生と3期生による「空扉」が披露されると、1期生が「Against」を迫力満点にパフォーマンス。4期生楽曲「I See...」の曲中では、センターの賀喜遥香が「桃子さんの事が大好きだー!」と叫び、ファンの感動を誘った。このバトンを受け2期生が「アナスターシャ」を丁寧に歌い踊ると、それから3期生が「トキトキメキメキ」をキュートに届けた。期別コーナーは1期生と4期生による「ひと夏の長さより・・・」で締め括られ、Wセンターを務めた秋元と賀喜は曲の終わりに、見つめ合いギュッと手を握り合っていた。
MCコーナーを経て、岩本、久保史緒里、与田、清宮レイ、田村真佑、筒井あやめ、早川聖来による「他の星から」がパフォーマンスされると、大園と遠藤がユニット曲「友情ピアス」を弾き語りで披露。2人の奏でる優しいハーモニーが場内を包み込み、演奏終了後には、客席からあたたかな拍手がステージに送られた。
ここからライブはいよいよ終盤戦へ。アンダー楽曲「生まれたままで」「My rule」が連続で披露されると、VTRが挟まれ、選抜メンバーが「世界で一番 孤独なLover」「何度目の青空か?」「逃げ水」「ガールズルール」を立て続けにパフォーマンス。「逃げ水」では途中、大園と与田が目に涙を浮かべながら手を繋ぐ場面もあり、その姿にコメント欄には「泣ける」「2017年が懐かしく感じる…」「これは涙が止まらない」「もうこれ聴いたら泣いてまうやん」などの声が届いていた。そして最後は「ごめんねFingers crossed」を情熱的に歌い踊って、ライブ本編を締めくくった。
大好きなみんなと過ごせたこの5年間をずっと宝物に
鳴り止まぬスティックバルーンの音とコメント欄に並ぶ盛大なアンコールを受け、再びステージに登場した大園は最後のスピーチとして手紙を用意し、以下の内容を述べた。全文を掲載する。
「たくさん知っている方もいるかと思うのですが、私は地元の先輩に勧められて、乃木坂46のことを何も知らない状態でオーディションを受けてしまいました。大人の前に立って、自分をアピールすることが初めてで、何をしていいのかがわからなくて、本当によくわからないまま、時間だけが進んでいき、気づいたら引き返せないところまで来ていました。3期生として加入して、乃木坂を大好きで入ってきた子、覚悟を持って入ってきた子がたくさんいて、申し訳なくて、罪悪感でみんなの目をすごく気にしていたのを覚えています。
たくさんの人が夢見る大きな舞台に立たせてもらったり、たくさんの人が注目してもらえる位置に選んで頂いたり、ありがたいことなのはわかっていたはずなのに、とてもとても怖かったです。自分で自分を責めることもたくさん、周りからあまり良くないことを言われることもありました。もともと、自信のない私は、本当に押し潰されそうで、毎日生きることが精一杯でした。
よく“目標はありますか?”と聞かれることがあります。毎回、上手く答えることができず、そんな自分が嫌でした。自分のことが大嫌いで、目標のないそんな私が、乃木坂として何かできるわけもないと、塞ぎ込んでしまった時期があります。あの時は優しくしてくださる先輩や同期のみんなに本当に申し訳なく思っていました。今までたくさん迷惑をかけてしまいましたが、今は、5年間、乃木坂にいることができて、良かったなと思うことができています。そう思えるのは、本当に家族、メンバー、スタッフさん、そしてファンの皆様がたくさん励まし続けてくれて、たくさん引き止めてくれたからだからだと思います。
メンバーが喜んでいるとき、笑っているとき、このグループは本当にあたたかいグループだなと感じることができました。ずっと見捨てず思ってくれて、助けてくれて、本当にありがとうございました。みんなが支え続けてくれたその優しさで前を向けました。
たくさんのステージにみんなと一緒に立って、みんなと同じ制服…衣装を着て、いろんな場所に行くことができて、それも素敵な思い出になりました。卒業したら会える機会が少なくなると思うと、寂しいです。みんなが笑って、楽しく過ごせたらいいなと思っています。
最初はみんなと違う気持ちで、乃木坂に入りましたが、5年間の活動を経て、私は乃木坂46になることができました。これは表面的な意味ではありません。周りの力を借りながらではありますが、“私は5年間頑張ってきたんだ”と私自身が自信を持って、そう思えるようになったからです。人はこんなにも変われるんだと驚くくらい、前と比べると想像がつかないくらい、明るく物事を考えられるようになり、明るい気持ちで、卒業できることをうれしく思います。
私は乃木坂46に入って、うれしいこと、辛いことを経験して、大好きなみんなと過ごせたこの5年間をずっと宝物にしたいと思います。本当にお世話になりました。今までありがとうございました。私は乃木坂46が大好きです!」
齋藤飛鳥「桃子、よく頑張ったな。卒業おめでとう」
大園が手紙を読み終えると、3期生のほか11人もステージに登場し、3期生初めてのオリジナル曲「三番目の風」でアンコールをスタートさせた。続けても3期生楽曲「思い出ファースト」で客席のボルテージを高めると、“大園の大切な曲”「やさしさとは」をグループ全体で披露した。曲中、飛鳥は「桃子、“卒業おめでとう”を言う前に直接ずっと言いたかったことがあります。桃子が『乃木坂も悪くないな』(映画『いつのまにか、ここにいる Documentary of 乃木坂46』より)って言ったあの時、普通に聞いたら多分、“どの立場で言ってんだ”と思われるかもしれないあの言葉…でも当時、私はほかの人より、ほんのちょっとだけ桃子の近くにいたから、桃子があの言葉を言ったときの気持ちが痛いほどよくわかりました。だけどあの時、あんなに近くにいたのに、なんで私の力で“乃木坂って良いな”って思わせられなかったんだろうって…それがずっと心残りでした。力不足な先輩で本当にごめんね。最近、楽しそうに活動している桃子を見て、すごくうれしかった。今日ここで、初めて言わせてください。桃子、よく頑張ったな。卒業おめでとう」と所々、涙で声を詰まらせながら伝え、大園も大粒の涙を流しながら「ありがとうございます」と感謝し、2人は熱い抱擁を交わした。
「孤独な青空」「転がった鐘を鳴らせ」では大園がトロッコに乗り込み、会場中をまわりオーディエンスに笑顔を届ける。曲が終わると、同期を代表して梅澤が「なんとなく桃子とはずっと一緒にいられるんじゃないかなって思っていて、それくらい私たちにとって卒業は遠くにあるような気がしていたけど、気づけばデビューから5年経ってて、卒業というものがすごく近くにありました。桃子から卒業の意思を初めて聞いた日から何度も何度も引き止めてごめんね…。でも桃子は私にとっていなくてはダメな存在だったから、これから桃子がいない中で、乃木坂を過ごすことを考えると、すごく寂しいけど、私たち3期生は11人になっても頑張るからずっと見ていてね。そして誰よりも幸せになってください」と涙ながらに大園へ思いを伝えた。
会場がセンチメンタルな空気で満たされる中、メンバーは「乃木坂の詩」を全員で歌唱。最後に秋元は「3期生を送り出すのは初めてなんですが……本気で戦って、必死に“乃木坂になろう”と頑張ってきた後輩の背中はこんなにかっこいいものなんだなとこの5年間で知ることができました。桃子本当にありがとう!」と感謝のコメント。そして会場のファンがサプライズで「5年間お疲れさま」と書かれた紙を一斉に頭上に掲げると、この光景に大園は「ありがとうございます」と笑顔を浮かべた。
この日はWアンコールを“乃木坂46側”が用意し、「逃げ水」を再び披露した。全ての曲が終わると、大園は「本当にもう思い残すことはありません。これから先、いろんなことがあると思うんですけど、私のことはそんなに心配せずに、“遠くで頑張ってるかな”って思ってくれてたらうれしいです! 本当に今までありがとうございました」とファンに告げ、笑顔でラストステージの舞台を後にした。
卒業スピーチにあった通り、“アイドルを目指していたわけではなかった”大園が、加入直後に乃木坂46のセンターに指名され、戸惑うことも多くあったことだろう。実際、大園はメディアの前でも人一倍涙を流してきたメンバーであることに間違いはない。
とはいえ、ライブで見せる大園の笑顔は特別なものだ。大園ような透明さと純粋さを持ち合わせているアイドルはなかなかいないだろう。国民的アイドルグループの中でも、その存在感は唯一無二だった。
初期の頃、オーディションやお見立て会などで震えながら挨拶をしていた1人の少女が、乃木坂46として5年間を駆け抜け、ラストライブを最高の形で締めくくった。最高の仲間に囲まれた中で見せた、大園スマイルはファンの胸の中に永遠に残り続けることだろう。
■乃木坂46「真夏の全国ツアー2021」8月22日福岡公演 大園桃子ラストライブセットリスト
M00. OVERTURE
M01. 太陽ノック
M02. ロマンティックいか焼き
M03. あらかじめ語られるロマンス
M04. 13日の金曜日
M05. 裸足でSummer
M06. 他人のそら似
M07. あの日 僕は咄嗟に嘘をついた
M08. ~Do my best~じゃ意味はない
M09. ファンタスティック3色パン
M10. 制服を脱いでサヨナラを...
M11. 空扉
M12. Against
M13. I See...
M14. アナスターシャ
M15. トキトキメキメキ
M16. ひと夏の長さより・・・
M17. 他の星から
M18. 友情ピアス
M19. 生まれたままで
M20. My rule
M21. 世界で一番 孤独なLover
M22. 何度目の青空か?
M23. 逃げ水
M24. ガールズルール
M25. ごめんねFingers crossed
EN1. 三番目の風
EN2. 思い出ファースト
EN3. やさしさとは
EN4. 孤独な青空
EN5. 転がった鐘を鳴らせ
EN6. 乃木坂の詩
W-EN1. 逃げ水