“ユーザー数”と“健全性”を担保する「TVer」
2015年10月にサービス提供を開始した「TVer」は、民放公式のテレビコンテンツを配信するサービス。2024年8月の月間ユーザー数は4,100万MUBで、月間動画再生数も4.9億回を超えているという。
ユーザー構成について蜷川氏は「人口の分布に近い形で利用されている」としつつ「若年層のテレビ離れが進む中でも、若年層ユーザーに多く利用していただいています」と説明した。
池田氏は「プロコンテンツを配信している」ことを特徴として挙げて、「安心安全かつブランドセーフティが期待できる環境で、(広告を)生活者に届けることができるプラットフォーマーだと思います」と印象を語った。
蜷川氏は「広告主からいただいた広告費、ユーザーからいただいた課金による収益を制作側に戻すことで、質の高いコンテンツを作り続けられる環境を維持していきたい」としつつ「その中で、メディアとしての健全性を担保していく必要があると思っています」と語った。
「TVer」が考えるCTVの重要性
現在、「TVer」ではCTV(コネクテッドTV)を強化しているというが、その理由について蜷川氏は「テレビでインターネットに繋いで『Netflix』や『YouTube』を見ている方も多く、これから(CTVは)選択肢としてどんどん広がっていくでしょう。時代の波には抗えず、より多くの人々に届けるために、また健全性を担保するためにも重要であると考えています」と説明した。
また「ユーザーアクセシビリティを良くするために、リモコンボタンを付けて、視聴の入口を作っていくことにも専念しています。これが数年先、私たちの財産になっていくかが鍵でしょう」と続けた。
CTVの再生比率として、総再生数の33.4%(2024年8月時点では36%)がテレビデバイスという結果が出ていることから「元々、テレビ局が作っているコンテンツで、大画面で長く見ていただくように作られているので、そういった観点でも伸長していくと思われます」とした。また、CTVにおける「TVer」の平均利用人数が1.7人であることに触れて、「複数人で視聴しているユーザーが多い」と分析した。
これに対して池田氏は「複数人で視聴しているということは、企業側が伝えたいメッセージを盛り込むことで、家族あるいは親子にも同時に届けることができ、コミュニケーションの場として良質な環境と言えるのではないでしょうか」と応じた。
さらに、池田氏はCTVにおける「専念視聴比率」に注目して、「どれだけコンテンツに専念して視聴しているかのデータで、例えば、地上波は家事をしながら、子育てをしながら視聴することがあると思うのですが、CTVは見たいコンテンツを自ら選んでいるので、専念視聴比率が高い傾向があります」と“良質な視聴環境”であることを説明した。
スポーツコンテンツのアップデート
「TVer」は、CTVのほかスポーツコンテンツの強化も行っていて、国内大会だけでなく主要な世界大会などを配信し、一部CTVでのライブ配信も実施している。スポーツコンテンツの強化について蜷川氏は「公共性の観点から、より多くの人々に見ていただくことが私たちの大きな使命だと思っています」と語る。
「パリオリンピックをTVerで配信、また地上波放送との同時配信も初めて実施しました。それだけでなく、テレビアプリでの一部競技のライブ配信や、競技のハイライト動画を大会期間中、毎日配信しました。その結果、オリンピックコンテンツの総再生数は1億1,000万を突破しました。『TVer』のライブ配信とオンデマンド配信の両方で見ていただけるという特長を活かすことができました」(蜷川氏)
「『TVer』を認知していただける機会にもなりましたし、今後、さらにスポーツコンテンツをアップデートしていけたらと思っています」と続けた。
「TVer」の今後の可能性
広告メディアとしての「TVer」の今後について池田氏は、4,100万MUBという規模に着目して「これからもユーザー数を伸ばして、定着させることが益々必要になると考えます。また、どうしても効果に対しての説明責任は求められると思います。きちんと可視化することができれば、可能性はさらに広がっていくのではないでしょうか」と期待した。
さらに、「幅広い層のユーザーが利用しているだけでなく、特にコンテンツ好きの人が集まるプラットフォーム。その特性を活かしたコンテンツ連動広告に親和性を感じます。そういった取り組みを実施する広告主も増えていくのではないかと思います」と推察した。
蜷川氏は、今後の課題として「現状、見逃したドラマを見にくるといった能動的なユーザーが多く、オンデマンド配信がメインのサービスとなっています。今後はニュースなども含めて、目的がなくても訪れてもらえるような、“情報インフラ”の役割を担うメディアを目指していきたいです」とした。
これに池田氏は「『TVer』のような動画配信プラットフォームは、ユーザーのニーズによってどんどん進化していくでしょう。有事の情報が、安心安全かつ日常的に触れているメディアに用意されていることは、世の中のニーズと合致していると思うので“情報インフラ”として実現できると思います」と私見を述べた。
「プロコンテンツを配信するプラットフォームとしてのブランド力を高める意味でも、情報インフラを目指して進化するべきだと考えています。そこを追求しつつ、さらなる規模化に向けて邁進していきたいと思っています」(蜷川氏)
蜷川 新治郎氏
株式会社TVer
常務取締役COO
TVerの事業戦略およびサービス企画開発の責任者。テレビ東京グループのインターネット事業、システム企画開発、配信事業を中心にコンテンツ戦略を10年ほど担当。PPJなどの共同プロジェクトの立ち上げに参加。
池田 純一氏
株式会社電通デジタル
執行役員
電通にて幅広い業種の事業成長に向けた統合ソリューションのPDCA業務、統合メディアダッシュボードの企画開発などに取り組んだのち、2024年より電通デジタルに出向し現職。アカウントプランニング、ストラテジー、統合ビジネスプロデュースの各部門を管掌。
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