「個人請求権があるとすれば、それは韓国政府に対するもの。問題解決を妨げたのは挺対協やナヌムの家だ」慰安婦訴訟で日本政府に賠償命令、元駐韓大使が強調
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 韓国の元慰安婦ら12人が戦時中に精神的・肉体的苦痛を強いられたとして損害賠償を求めた裁判で、韓国のソウル地裁は8日、日本政府に対し1人あたりおよそ950万円の支払いを命じる判決を言い渡した。これを受け菅総理は「慰安婦問題については1965年の日韓請求権協定において完全かつ最終的に解決済みだ。このような判決が出ることは断じて受け入れることができない」とコメントしている。

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 11日のAEBMA Primeに出演した、徴用工問題で原告代理人も務める崔鳳泰弁護士は「この裁判は、判決ではなく互いに譲歩して問題を解決する手続き、“調停申請”から始まった。だから和解に至らず、判決が出たことは非常に残念だ」とした上で、次のように主張する。

 「これまで日本国民が被害者の人権救済のために頑張ってきたことは事実だし、私も心から敬意を表する。被害者たちも自分の人権を救済するため、韓国政府を相手に今も裁判を戦っている。その上で、個人請求権をどのように救済し、消滅させるかが問題だ。両国の司法府、そして行政府さえ、個人請求権が消滅していないことを一致して認めている。例えば2018年11月にも河野外相が国会答弁で“消滅したわけではない”と明言している。両国の行政府が協議しても解決できなかったので司法部に訴えるしかなかった、ということだ。その意味で、今回の判決は当たり前の判断だ。私としては、平和的に対話によって解決することが必要だと思う。請求権協定3条には、解釈上の紛争が生じた場合は協議して、調査にかけて解決せよと書かれている。そこは両国に責任がある。今回の判決のきっかけにして、お互いに請求権協定の約束を守りながら第3条のように協議を始めるのが大切だ」。

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 判決でソウル地裁は、日本政府が主張する、主権国家は外国の司法権に服さないとする「主権免除」の原則は「反人道的行為には適用されない」として認めていない。控訴期限は2週間後だが、日本政府は外国の裁判権に国が服さない「主権免除」の原則から裁判そのものを無視する考えだ。

 「主権免除」について、元在大韓民国特命全権大使の武藤正敏氏は「ある国が別の国を裁くということになると、争いの元になる。そこで国同士が裁かないようにしましょうという、主権免除が国家には認められている。今回の判決では“普遍の価値ではない”としているが、国際司法裁判所(ICJ)は認めている。唯一、イタリアが認めなかった例があるが、相手方のドイツがICJに持って行ったところ、やはり認めた。ただし、日本としては主権免除だからと逃げているわけではなく、この問題にはずっと取り組んできたし、後ろめたいやましいことは一切ないということだ。菅総理が言っていたように、1965年の日韓請求権並びに経済協力協定によって、“完全かつ最終的に解決”されている問題だからだ」と説明する。

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 「韓国側は、この交渉過程で慰安婦の問題が取り上げられなかったから未解決だと主張しているが、全ての問題を取り上げることはできないかもしれない、漏れる問題もあるかもしれない、しかしそれらも含めて全て解決済みにする、ということだった。韓国政府としても、この問題を取り上げるということは、慰安婦だった方々を再び傷つけることになるという立場だった。それでも日本はその後、韓国政府と協力しつつ、人道的な立場から様々な支援をしてきた。なぜかと言えば、慰安婦だった方々が世間から冷たい目で見られ、家族からも見放され、恋愛も結婚もできず、子ども作れず非常に苦しい思いをしてこられたからだ。私が課長の時も、大使の時も、公使の時もそうだった。いつまでも未解決だと言われるのは心外だ。

 日本政府は村山総理談話で謝罪もしているし、アジア女性基金の時にも総理の“日本が朝鮮を植民地支配したことによって非常に苦痛を与えた。非常に申し訳ありません。謝罪します”という親書を付けて渡している。そうした動きを妨げたのが、韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)だった。それらの経緯も踏まえ、2015年の12月に日韓両政府は“最終的かつ不可逆的な解決”を図った。韓国政府も、それまでは挺対協やナヌムの家、元慰安婦の支援団体としか話をしなかったが、この時は全ての元慰安婦の方々と話をし、説得した。結果、約75%の方が納得し、日本側が作った基金からのお金を受け入れるということで了解した。

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 しかし、それに反対したのが文在寅政権だ。自分たちを支持する市民団体や、所属する元慰安婦の方々が受け入れてないと言っている以上、受け入れられないというのがその主張だ。確かに100%の方が受け入れるということはないだろうが、それでも75%の慰安婦の方々がこれを受け入れるとしているわけで、国民として、国として受け入れたことになるというのが常識だろう。ナヌムの家に関しては、最近になって寄付金の横領の問題が出てきている。やはり問題を解決させようという意識がなかったのだと思う。

 また、元慰安婦の方々の個人請求権が仮に消滅していないとしても、それは韓国政府に対するものであって、日本政府にあるのではない。1965年の日韓請求権並びに経済協力協定によって、日本政府は韓国政府に対し無償資金協力3億ドル、有償資金協力2億ドル、民間資金3億ドルを拠出、その後も80年代くらいまでは定期閣僚会議を通じて資金を毎年拠出してきた。徴用工問題についても、韓国政府は個人補償を提案した日本政府に対し、“結構です。これは自分たちでやります。お金は全て韓国政府に下さい”と言ってきている。」

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 東洋経済新報社の山田俊浩・会社四季報センター長は「断固として受け入れられないという姿勢はわかるが、感情的な部分についてもう少し配慮した発言、反応の仕方もあるのではないか。融和して、これからも長く付き合っていかなければならい隣国同士なのに、このままでは解決の方向に向かわないし、不幸だ」とコメント。

 ジャーナリストの堀潤氏は「ソウルで元慰安婦の支援をしている方や元韓国軍将校の方に、さらなる謝罪や賠償を求めるのは何故ですか、根幹にあるものはなんですか、と尋ねたことがある。やはりポイントは安倍政権だった。第一次安倍政権の時、安倍総理は「強制性について、それを証明する証言や裏付けるものはなかった」と発言した。これが国際社会に、慰安婦問題自体が無かったかのようなニュアンスの発言として伝わってしまった。加えて第二次安倍政権発足前の総裁選では、河野談話の見直しにも言及した。そういう動きの中で、日本の政権与党は歴史修正主義なのではないか、との不満が強まっていくのを肌で感じた。カリフォルニア州グレンデール市に慰安婦像が建立されたとき、現地の日系人は“私たちは批判の最前線に立たされている、願わくば日韓両国が一緒に研究をし、博物館を作るなどして、そこで議論してほしい”と言っていた。やはりこのままではお互いが主張しあって譲らない。ドイツが国としてナチスドイツを研究したような、そのような道もあるのではないか」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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