全世界累計発行部数2.600万部を突破した「ソードアート・オンライン(SAO)」シリーズは、2012年にTVアニメが放送され、これまでに4シリーズ全97話が放送されているメディアミックス作品。「SAO」シリーズ原作者の川原礫氏自らリブートした《アインクラッド》編を完全新作アニメーションで映画化した作品が、10月30日に公開の「劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア」だ。
「SAO」シリーズの始まりの物語となる本作では、ログアウトできなくなったデスゲーム《ソードアート・オンライン(SAO)》の世界の中で、《アインクラッド》の頂を目指して戦っていく様が、TVアニメで描かれなかったアスナ視点で新たに映像化。
本作の公開に先駆けて、アスナ役の戸松遥(とまつ はるか)にインタビューを実施。改めてアスナというキャラクターに向き合ったこと、原点回帰となるストーリーの見どころや本作の魅力について伺った。
「自分で言うのも変なんですが、思っていたより可愛い声でした(笑)」
――《アインクラッド》編のリブートとなる「劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア」ですが、最初にシナリオを読まれた感想を伺えますか?
戸松:原作があった上でのお話にはなりますが、新たに書かれたオリジナルのお話ということもあって、1冊の小説を読んだような気持ちでした。「SAO」シリーズの中では過去のお話なのですが、新作を読んでいるような新鮮な気持ちで読ませていただきました。
――原作には登場しないミトというキャラクターが、本作のキーポイントですよね。ミトは戸松さんから見てどんな子でしたか?
戸松:単純にカッコいいとか良い子というような言葉で括れない子だと思いました。ひと言で「こういう子なんです!」という枠では収まらないような、人間味がある子だなと。すごくいい意味で人としての強さと弱さを持っているので、見ていて切なくなったり辛くなったりするシーンもあるのですが、そのときの気持ちもすごくわかるのです。
見てくださる方にとっても初めて登場するキャラクターですが、ミトは一番共感しやすいキャラクターだと思います。
――TVシリーズで一度描かれた《アインクラッド》編をアスナ視点で描いている本作ですが、改めてアスナを演じる上でどんなところを意識されましたか?
戸松:「SAO」シリーズはストーリーが進むごとにキャラクターも歳を重ねているので、TVアニメ第1期をもう一度見返してアスナの当時の年齢に合わせるということはしたのですが、もう一度改めて新鮮な気持ちで演じようと思いました。お芝居としては当時の自分にしか演じられないことがあって、今の自分の表現の仕方とも変わってきている部分もありました。
もちろん、全く違うものにしようとは思っていなかったのですが、モノマネにならないように意識しました。それに同じシーンやセリフでもTVシリーズのキリト視点と本作のアスナ視点では受け取り方も変わってくると思うのです。アスナ視点の方が同じシーンでもコメディ寄りで描かれている印象でした。
――確かにクリームパンのシーンはそうでしたね。
戸松:TVシリーズではツンツントゲトゲしていたアスナですが、本当はこういう顔をしてたんだ、みたいな。そういう風になってしまった理由がちゃんとあって、気持ちがふさいでしまった過程も本作ではしっかり描かれるので、改めてそうなるよねと思いました。
――ちなみに、過去のご自身の演技を今ご覧になっていかがでした?
戸松:自分で言うのも変なんですが、思っていたより可愛い声でした(笑)。直近のTVシリーズ――《アリシゼーション》編で一番年齢的に大人なアスナを演じていたこともあって、改めて《アインクラッド》編のアスナを見ると、こんなに可愛い感じだったんだと新鮮でした。
《アインクラッド》編のときはお姉さんを演じているつもりだったのですが、ちょっとずつこの10年の間に、自分でもマイナーチェンジをしていたんだと思いました。
――出会ったばかりのキリトとの距離感も、今見ると印象的ですよね。アフレコはキリト役の松岡(禎丞)さんとご一緒だったんですか?
戸松:2日間の収録のうち、初日は1人で収録して、キリトが登場する2日目からは一緒に収録しました。本作では自分自身もキリトという存在を知らないというところまで戻さないといけなかったですし、《SAO》というゲームに対する知識や経験値もゼロに戻さないといけなかったので、今まで積み重ねてきたものをリセットする作業をしていました。本当に新しい作品に臨むような気持ちで演じていました。
「アスナの才能が開花する過程が描かれているので、その差がすごく面白かったです」
――本作は「SAO」シリーズの原点とも言える《アインクラッド》編が描かれているので、今までシリーズに触れてこなかった人も入り込みやすい作品だと思います。
戸松:そうですね。「SAO」というタイトルは聞いたことあるけれど、1からアニメを見ようとしたら「けっこう(話数が)ある!」って、見るのをためらっている方もいると思うんです。そんな方には、ぜひ本作をきっかけに「SAO」シリーズの世界に触れて欲しいなと思います。
ゲームとしての《SAO》がどんなものなのか丁寧に描かれているので、「劇場版SAOプログレッシブ」はシリーズ初見でも十分に楽しめますし、そこからキリト視点で描かれているTVアニメを見てみるのも面白いと思います!
――《ナーヴギア》の演出も詳細に描かれていますし、当時よりもVRが一般的になっているので入り込みやすいかもしれないですね。
戸松:そうだと思います。約10年の間に技術も進歩して、VRというものが日常的に家庭で楽しめるところまで追いついてきていて。まだ現実では叶ってはいないですが、フルダイブで現実の世界のような感覚で楽しめる《SAO》というゲームも、完全なファンタジーではなくなってきていると感じます。
私もゲームにそこまで詳しいわけではないのですが、オンラインゲームをやっていたときに、難しさと楽しさ、そしてその世界の中でのコミュニティーというもう1つの居場所というような、オンラインゲームあるあるみたいなものを体感させてもらった思い出があります。《SAO》も実際にプレイできたら、すごく楽しいだろうなって思わせてくれるのが最大の魅力なんだと思っています。
――アスナがゼロから《SAO》の世界に入り込んでいく様も、しっかり描かれていますよね。
戸松:アスナはゲームの才能はあるのですが、元々ゲームに詳しいわけではないんです。《SAO》に入ったときは右も左もわからずに本名をプレイヤーネームにしてしまうような素人の状態で。TVアニメで登場したときは戦闘の技術も高い状態でしたが、その前の知識ゼロ状態から登場している分、モンスターと戦うときも不慣れで不器用なアスナを演じられて新鮮でした。
――アスナの成長も見どころですね。
戸松:初めはゲームに対する知識もないし戦い方も知らなかったのに、急速な成長ぶりというかアスナの才能が開花する過程が描かれているので、その差がすごく面白かったですね。不慣れなアスナが、ある出来事があって心を閉じて、強く生きていくんだと決めてからの成長ぶりは、演じていてもすごく変化があって楽しかったです。
――それでは最後にファンに向けてメッセージをお願いします。
戸松:原作をベースにしてミトという新たなキャラクターが加わって、誰も知らない「劇場版SAOプログレッシブ」という作品ができ上がったと思います。《アインクラッド》編をアスナ視点で見てみたらどうなるのか、新しさと懐かしさの両方で楽しんでいただけると思いますので、「SAO」シリーズを見たことがある方もない方も、ぜひこの機会に見ていただけたら嬉しいです。
――ありがとうございました!
(C)2020 川原 礫/KADOKAWA/SAO-P Project
取材・写真・テキスト/miraitone.inc
「劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア 」概要
【CAST】
キリト:松岡禎丞
アスナ / 結城明日奈:戸松 遥
ミト / 兎沢深澄:水瀬いのり
クライン:平田広明
エギル:安元洋貴
シリカ:日高里菜
ディアベル:檜山修之
キバオウ:関 智一
キリト:松岡禎丞
アスナ:戸松 遥
ミト:水瀬いのり
【STAFF】
原作・ストーリー原案:川原 礫(「電撃文庫」刊) 原作イラスト・キャラクターデザイン原案:abec
監督:河野亜矢子
キャラクターデザイン・総作画監督:戸谷賢都
アクションディレクター・モンスターデザイン:甲斐泰之
サブキャラクターデザイン:秋月 彩・石川智美・渡邊敬介
プロップデザイン:東島久志
美術監督:伊藤友沙
美術設定:平澤晃弘
色彩設計:中野尚美
撮影監督:大島由貴
CGディレクター:織田健吾・中島 宏
2Dワークス:宮原洋平・関 香織
編集:廣瀬清志
音楽:梶浦由記
音響監督:岩浪美和
音響効果:小山恭正
音響制作:ソニルード
プロデュース:EGG FIRM・ストレートエッジ
制作:A-1 Pictures
配給:アニプレックス
製作:SAO-P Project
【音楽】
「往け」 LiSA(SACRA MUSIC)
作詞:LiSA /作曲:Ayase /編曲:江口 亮
【公式HP】https://sao-p.net/
【Twitter】https://twitter.com/sao_anime