緊急事態宣言が9月末で解除され、行楽の秋がいよいよ本格化する。
観光庁は「ワクチン・検査パッケージ」の活用に向けた実証実験の対象となるツアーを発表した。対象となるのは、日本旅行や阪急交通社など11社・38件、北海道や沖縄などのツアーで、早いものは8日から始まる。
さらに、新たに「GoTo2.0」という計画も浮上しているという。その内容について、テレビ朝日経済部の中村友美記者が解説する。
Q.「GoTo2.0」とは?
岸田総理が先月の総裁選中に発言していたが、「GoTo2.0という名称をつけて取り組みを進める」という新たな構想だ。去年実施されていた「GoToトラベル」は、感染拡大につながってしまったのではないかという指摘があったことから、そのまま再開するのではなく、バージョンアップした2.0というかたちで展開したいという考えだ。
Q.バージョンアップの具体的な内容は?
今検討されている内容は、ワクチンの接種証明や検査の陰性証明を提示すると割引率がアップするというものや、クーポン券のデジタル化。また、前回のGoToの時は大手のホテルや旅館、高級ホテルに予約が偏ってしまったという指摘もあったので、中小の旅館や旅行会社を使ったら割引率をアップするといった内容が検討されている。こうしたことによって、旅行客はより安心して旅に出かけられ、観光業界にとっては幅広く恩恵を受けられるようにしようという狙いがある。
6日、新しく国交大臣になった斉藤大臣のインタビューでは、どうしても土日や祝日に旅行の需要が固まってしまうため平日にずらすという策や、前回は公共交通機関の運営会社にあまりお金がいかなかったという話もあり、そこへの配慮も検討していきたいとしている。
去年GoToが実施された時には累計で5000万人以上がキャンペーンを使って宿泊したということで、観光業界の中ではかなり期待が高まっている。
緊急事態宣言が明けたばかりなので、急に旅行というと慎重になる人も多いと思う。今注目されている動きとして「リベンジ消費」というものがある。リベンジ消費とは、旅行の予定が立てられなかったり飲み会が中止になったりということで、コロナで使われなかったお金20兆円(日本銀行の試算)を、感染状況が落ち着いてきたら使っていくというもの。こうした貯まったお金が消費に回っていくと、旅行需要にも伸びていくとみられている。
Q.いつ頃からスタートすることになりそう?
政府関係者に聞くと、「岸田総理が総裁選中に掲げた経済対策になるので、感染状況次第ではあるが、できる限り早く始めたい」と話している。選挙中はなかなか難しいと思うので、選挙が終わった後に一気に制度設計など動きが見えてくるかもしれない。
ただ、観光庁の実務の担当者の話からは、中小の事業者だけ割引率をアップするとして、どういう制度設計が必要なのかをこれから検討していくとなると準備が大変だ、という雰囲気が漂っていた。
いきなり「こういう制度でやります」と言われてすぐに対応できるかというと、中小事業者の支援も主軸になることを考えると、準備に時間を設ける必要がある。観光庁の担当者も「実施するまでには周知期間をしっかりおいて、みなさんが準備をちゃんとした状態で迎えられるようにしたい」と話している。実施までは、やることが決まってからある程度の時間がおかれることが想定される。
Q.「GoTo2.0」を再開する感染状況の基準などはある?
GoToトラベル自体、ステージ2以下になれば始められるということで、専門家も話し合っている。GoToトラベルは全国一斉適用というのが想定されているが、47都道府県のすべてがステージ2以下の状態になることが今後出てくるかというのも見通せない部分がある。そうした時に、政治判断で実施するほうに舵を切るのか、それはこれからの話になってくると思う。
仮に始められたとしても、その後感染が再拡大してきた時にどの段階で止めるのかは、基準を設けていきたいとは大臣も話していた。専門家と相談しながら制度を決めていきたいとしているが、どこで線引きするのかは極めて難しいと思うので、これからの問題点になってくる。