個人戦優勝者も、久々の超早指しにドキドキの連続だった。女流による早指し団体戦「第2回女流ABEMAトーナメント」の予選Aリーグ第2試合、チーム里見とチーム伊藤の対戦が10月16日から配信され、チーム伊藤のリーダーを務める伊藤沙恵女流三段は2勝1敗の好成績で、チームの勝利に貢献した。個人戦だった第1回大会は、優勝候補の筆頭・里見香奈女流四冠を下して優勝したが、約3年ぶりとなる超早指し戦に「震えました!」「怖かった」と冷や汗をかきっぱなし。それでも指すごとに感覚を取り戻したのか、次第に持ち味を出し、勝利を手繰り寄せた。
【動画】激闘を勝ち抜いたチーム伊藤の3人
冷静に見える対局姿から一転して、チームメイトの顔を見るやいなや、その胸中が解き放たれた。自らチームの初戦、開幕局を引き受けると、タイトル通算43期のレジェンド・清水市代女流七段と対戦。相掛かりの将棋になると、じっくりとした序盤から局面、持ち時間ともにペースを握る戦いぶり。チームメイトの後輩・石本さくら女流二段からも「さすがリーダー。全てにおいて完璧」という言葉まで出るほどの内容で、109手で勝利を収めた。ところが、次局に備えた会議のために戻ってくると「震えました!震えまくって、ドキドキが収まらなくて…。私、ダメだったぁ」と苦笑い。表には出さずとも、相当のプレッシャーを感じていた様子だった。
続く自身2局目、チームとして4局目には、女流棋界の第一人者・里見女流四冠とぶつかった。公式戦でも何度もぶつかっている相手に、後手番からでも積極的な動き。中終盤では、はっきりと勝機を掴んだ局面もあったが、わずかなところで届かず逆転負け。対局後には「あれは負けちゃいけないやつだ。すごくいいと思って手堅く行こうとして、悪いのを引いちゃいました。悔しいなあ。あれはさすがに勝ちたかった。だいぶ悔しい」と、その思いを隠さないことで、さらにチームの士気を高めた。
チームの土壇場でも強さが光った。スコア2-4とカド番で迎えた第7局、攻め将棋が特徴の里見咲紀女流初段とは、受けて立つように激しい攻め合いに。解説を務めた門倉啓太五段も「正面からの殴り合い。受け止めるのは大変なので、かわしながらパンチを出すようなもの」というほど激しい勝負になったが、終盤でも相手に決定打を許さす111手で勝利。これが仲間に勇気を与え、後の逆転勝利へとつながった。
タイトル戦の出場回数も多く、初タイトル目前といった状況が続く伊藤女流三段。個人戦だった第1回大会優勝も「過去の話なので」と多くは語らないが、超早指しにおける力が、女流棋界で最高レベルにいることは間違いない。言葉よりも将棋でチームを引っ張るリーダー。一局ごとに、その強さはさらに増す。
◆第2回女流ABEMAトーナメント 第1回は個人戦として開催され、第2回から団体戦に。ドラフト会議で6人のリーダー棋士が2人ずつ指名し、3人1組のチームを作る。各チームには監督棋士がつき、対局の合間にアドバイスをもらうことができる。3チームずつ2つのリーグに分かれ総当たり戦を行い、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。チームの対戦は予選、本戦通じて、5本先取の9本勝負で行われる。
(ABEMA/将棋チャンネルより)