橋下氏「陸軍墓地を放っておいて、何が靖国だ」、野口健氏「参拝を問う解散をしてもいいと思う」戦没者慰霊のあり方めぐり議論
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10月30日のABEMANewsBAR橋下』にアルピニストの野口健氏がゲスト出演。先の大戦の戦没者慰霊のありかたについて議論した。

【映像】橋下徹×野口健 尖閣&靖国"保守論者"に言いたいコト

橋下氏「陸軍墓地を放っておいて、何が靖国だ」、野口健氏「参拝を問う解散をしてもいいと思う」戦没者慰霊のあり方めぐり議論
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橋下:国のために命を落とした方々にきちんと手を合わせるというのは、国家の背骨だと思う。それがなければ国を守る、それこそ尖閣で殴り合いをやろうというところにも影響する問題だと思う。その点、野口さんは、天皇陛下も国のリーダーである首相も靖国を参拝して当然だという考え方だと思うが、どうだろうか。

野口:いや、僕は“靖国絶対主義”ではない。行きたければ行く、行きたくなければ行かない、ということでいいと思うし、僕も行く年と、行かない年がある。そして今は戦没者の遺骨収集をやっているので、実はそちらの方がウエイトが高い。

最初はフィリピンのレイテ島にあるカンギポット山だった。そこに1万人ぐらいの兵士が立てこもり、集団自決もあった場所だ。戦後になり、海岸については収集が行われていたが、山の方はまだだということで入った。ものすごい灼熱地獄だったし、人が登るような山ではないので、まずナタで道を作るところから。大変だった。

僕の感覚では、ご遺骨が発見されやすいのは洞窟を出て、海がよく見える場所だ。なおかつ磁石を見ると、向こうに日本があるという場所。ゲリラが下から上がってくる中、さまよう日本兵が最後に死に場所を見つけるとき、“向こうには日本がある”と思いながら亡くなったんだと、ジャングルの中で考えた。

今は沖縄だ。ショッピングセンターや住宅街のすぐ近くのガマ(洞窟)から、いまだにいっぱい遺骨が出くる。そういう、忘れられたご遺骨を見つけるほうが僕にとっては大事なことになっているということ。

戦争は過去のことだが、しかし同時に、国のために亡くなっていった方々を未だに放置している。そういう国のために、これから誰が命をかけるのかということ。その点、アメリカはかける予算額が全く違う。

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橋下:本当にそうだ。アメリカは遺骨収集を本気でやっている。全国にある陸軍墓地のうち、大阪市の真田山墓地は日本最大規模のものだ。ところが日本が戦争で負けた後は、そういう場所で手を合わせるのは良くないということになり、GHQが自治体に渡して国が管理できないようにした結果、予算もつかず、荒れ地になってしまっていた。しかし僕は大阪府知事、大阪市長のときに抜かっていて、そのことを知らなかった。

僕は歴史が好きなので、民間人になってからガイドさんに付いてもらって史跡巡りをやっているが、そこで初めてこのことを知って、全国の陸軍墓地はどうなっているのかと調べたてみたら、どこも予算がついてなくて、墓石が倒れていたり、納骨堂があってもお骨を簡易な容器に入れてバーッと適当な棚に並べているだけ。靖国については国会議員もあんなに騒ぐのに、日本の政治家はどないなっとんねんと。

そこで松井さんと吉村さんに見てもらったところ、当時の菅官房長官と安倍首相に掛け合ってくれて、全国の陸軍墓地に予算が付くことになった。こっちを放っておいて何が靖国だと。

野口:まさにそういうことだ。靖国に行ったらそれでチャンチャンというか、“ポーズ”に見えてしまう。それはそれとして、やらなければいけないことはもっと具体的にいっぱいあると思う。例えばマニラにあるアメリカ軍の戦没者墓地はものすごく立派な施設だ。一面芝生で、塔が建っていて、すごくきれいに管理されている。一方、レイテやシンガポールなど、あちこちにある日本人墓地は戦友会や遺族会が民間のお金で細々やっているだけで、しばらく誰も行っていないところになるとボロボロだ。そのコントラストはすごい。国のために戦って亡くなった方に対してリスペクトするのは国の姿勢、最低限のプライドのはずだ。

橋下:靖国神社については、僕は首相、そして最後は陛下に手を合わせに行っていただきたいという思いがある。でも、国のことをものすごく想っていると思われていた安倍さんでも1回しか行けず、首相を辞めてから行かれた。菅さんも安倍政権の官房長官、それからご自身が首相だったときには行けず、辞めてから行かれた。裏返せば、首相が行けない現実があるのなら、行けるようにな環境を整えるべきだと思う。神道からは逸脱しているかもわからないが、国と国との殴り合いの時にはボクシングのように環境を整えるのと同じように、戦争指導者を分祀した方がいいのではないか。

野口:石原慎太郎さんもけっこう右寄りというイメージがあるが、靖国については意外と違う考え方を持っている。A級戦犯についても、いろいろあって一緒くたにできないから。

橋下氏:歴史を勉強すると、日本の戦争指導者たちはひどい。調べれば調べるほど疑問を持った。高市早苗さんと議論になったとき、どういう人であれ、亡くなった人に対しては手を合わせるんだ、墓を掘り返すようなことはしないと言われたけれど、やっぱり自分の子どもが戦争指導者・政治家のバカな指示によって戦地で倒れたとしたら許せない。僕は靖国に行くけれど、できれば兵士と戦争指導者とは分けて、百田尚樹さんとか高市さんは、戦争指導者の方にも手を合わせに行けばいい。

橋下氏「陸軍墓地を放っておいて、何が靖国だ」、野口健氏「参拝を問う解散をしてもいいと思う」戦没者慰霊のあり方めぐり議論
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野口:政治家が靖国に行くことを日本のメディアが報じることで、国内の政治問題化になっている。当然、そこに中国と韓国が乗ってくる。だから僕はあまり問題にするべきではないと思う。仮に日本の総理が毎年参拝した場合、直接的なアクションはどこまで出るのか。韓国は感情的に強く出てくるかもしれないが、中国はものすごくしたたかだし、一応は抗議するだろうが、日本との経済的な交流による経済的なメリットを失ってまでバサッとやるだろうかと思っている。

橋下:その通りだ。だから僕は行けばいいと思う。そこを自民党総裁選のときに高市さんに問うてみた。行けばいいと思うが、観光客を止められたときに、訪日観光客の大半は中国人だし、大阪なんかはかなりダメージを食らうことになる。その状態では参拝をやめるのか、するのか、優先順位はどっちかということを問い続けた。

野口:総理が参拝したくなければそれでいい。ただ、日本の代表である以上、僕は参拝してもらいたい。そこで中国がドーンと出てきたときに、国民はどう思うのか。日本の代表は行くべきなのか、行かないべきなのか。ある意味、それを問うて解散してもいいと思う。(ABEMA/『NewsBAR橋下』より)
 

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