実に頼りがいのある姐さんだ。女流による早指し団体戦「第2回女流ABEMAトーナメント」の予選Bリーグ第2試合、チーム西山とチーム加藤の対戦が11月6日に放送された。チーム西山の上田初美女流四段は、2局に登場しチーム初勝利を含む1勝1敗。また仲間を時に励まし、時に喝を入れる精神的な支柱となり、チームを鼓舞し続けた。これにはファンからも「初美無双」「姐さん惚れました」と称える声が続出。将棋という競技が、実にメンタルに支えられたものだということを再認識させる大活躍となった。
上田女流四段は、タイトル2期の実績があるトップクラスの女流棋士でもあり、夫も棋士の及川拓馬六段。25歳で結婚し、現在は2児の母でもある。また文筆業でも才能を発揮するなど、パワフルに活動する女流棋士だ。リーダーの西山朋佳女流三冠からドラフトの指名を受けた際には「びっくりしました」というほど、ろくに会話もしたことがなかったが、この上田女流四段の存在が、初戦をスコア5-2という勝利で飾ることに大きく作用した。
まずは盤上で、その頼もしさを見せた。第1局で山口恵梨子女流二段が、不出来な将棋で敗戦。落ち込む仲間を見た後、第2局に出場が決まると、相手はリーダーでタイトル経験もある実力者・加藤桃子女流三段。「(相手は)勢いをつけたいんでしょう。(逆に)ここでリーダーを叩けば」と、一気呵成に攻めてくるだろう相手を返り討ちにしようと狙っていた。得意の四間飛車から穴熊に囲い臨戦態勢を整えると、序盤で作戦勝ちし、そのまま押し切るような快勝。「1局目、山口さんが不本意な展開で敗れてしまったと思ったんで、ここで(自分が)負けると結構さっきの負けを気にしちゃうかなと思った。なんとか頑張りたいと気合を入れていきました」と、後輩の黒星を帳消しにして余りある白星を持ち帰ると、仲間に「仕事してきました」と誇らしげに語った。
次に光ったのが盤外だ。3人1組の団体戦。仲間との会話が、次の対局に向かう精神状態を大きく左右する。第3局、初の対局に向かう西山女流三冠が不安そうにするのを見るや「大丈夫ですよ。本当に大丈夫だから。元気づける大丈夫じゃなくて(持ち時間)5分は意外とある。3分とかじゃないんで。練習どおり、自分の力を出し切ることに集中すれば」と、力のある言葉で背中を押した。また、第6局では痛い敗戦を引きずる山口女流二段が顔をひきつらせながら「本業はマネージメント業だと思って」と、おどけようとしたところ「違う、違う」と喝。「ここで勝ってくれないと困る」と気合を注入すると、山口女流二段も「わかった。頑張る」と真剣な表情に。これが効果を発揮したか、加藤女流三段から価値ある1勝をもぎ取ることになり、山口女流二段は涙まで流すことになった。
強く戦い、仲間を全力で支える。戦いを見守る時も、思い切り応援する。団体戦において、これほど心強い仲間はいないというほど、上田女流四段の存在は、試合が進むほどに大きなものに。これにファンからも「初美燃えてたね!」「男前はつみん」「まじかっけー!!」と絶賛する声が止まらなかった。団体戦ならではの醍醐味を存分に見せた上田女流四段。このチーム西山が頂点に向かって突き進むとすれば、西山女流三冠のまさかの指名は大成功だ。
◆第2回女流ABEMAトーナメント 第1回は個人戦として開催され、第2回から団体戦に。ドラフト会議で6人のリーダー棋士が2人ずつ指名し、3人1組のチームを作る。各チームには監督棋士がつき、対局の合間にアドバイスをもらうことができる。3チームずつ2つのリーグに分かれ総当たり戦を行い、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。チームの対戦は予選、本戦通じて、5本先取の9本勝負で行われる。
(ABEMA/将棋チャンネルより)