女流による早指し団体戦「第2回女流ABEMAトーナメント」の本戦トーナメント準決勝・第2試合、チーム加藤とチーム伊藤の対戦が11月27日に放送され、チーム加藤がスコア5-3で勝利、決勝進出を決めた。この結果、決勝は予選Bリーグで1位のチーム西山、同2位のチーム加藤による再戦に。強気に満ちた将棋を貫いてきた“野生の桃”が、リベンジマッチで頂点を目指す。
後輩のために強さを示すこと。これがチーム加藤を決勝へと導く原動力となった。リーダーの加藤桃子清麗は、里見香奈女流四冠と西山朋佳女流三冠という女流棋界の2トップを追いかける存在。この試合でも、後輩である野原未蘭女流初段に将棋と言葉で、先輩の姿を見せ続けた。戦いの流れを決める第1局に自ら登場すると、若手の石本さくら女流二段を相手に激戦。「あまり地に足がついていなかった」と、本来の将棋が指せなかったが、最終盤の勝負術で逆転勝ち。内容が悪くても勝ちを拾う勝負強さが出た。次の出番は第4局。またも石本女流二段との対戦になると、相手の中飛車穴熊に対して、居飛車穴熊で対抗。長い序盤戦を経由して戦いが始まると、自陣の穴熊の強度で勝り、中盤以降は優勢に。そのまま寄せ付けずに強く勝ち切った。
いつも以上に強気に攻めたのが香川愛生女流四段だ。第2局で初登場すると、相手のリーダー伊藤沙恵女流三段と、終盤に入っても二転三転する大激戦を展開。「(攻めが)切れ気味になって、まずいパターンにしてしまった」と苦戦を自覚していたものの「なんとか諦めずに指そうという気持ちで食らいついた」結果が功を奏し、126手で勝利。即詰みに打ち取り、チームに勢いを与えた。第6局は伊藤女流三段に敗れたものの、最大の見せ場は第8局。勝てば決勝進出という大一番で、室谷由紀女流三段とのライバル対決に向かった。公式戦でも数多く対戦がある同世代との一局は、まさに意地と意地とのぶつかり合い。それでも攻めの気持ちを隠さず出した指し回しが有利、優勢につながり「のびのび指せました」と振り返る快勝を収めた。
先輩2人の活躍に強く背中を押されたのが野原女流初段だ。第3局、第5局と、続けて室谷女流三段と対戦すると、内容としては押している時間が長かったものの、勝負どころで競り負けて連敗を喫した。特に第5局の後には、チームの力になれていないと思わず涙。先輩たちの元に戻ると「本当に申し訳ないです」と、普段の元気な様子も消えて、すっかり落ち込んでいた。ただ、ここで励ましてくれたのが加藤清麗、香川女流四段の先輩たち。「一緒に頑張ろう」「頑張ろう未蘭ちゃん!世界中が応援してるよ」といった声で気持ちを立て直し、第7局の石本女流二段戦には99手で快勝し、ようやく笑顔が戻った。試合後にも「2局目負けた時に、自分の情けなさと申し訳なさで涙がこぼれた。お荷物になっていると感じた」と苦しみを振り返ったが、この1勝を挙げられたことでチーム全体にも明るい光が差し込んだ。
女流棋界でトップクラスの実力を誇る2人と、次世代を担う女子高生という3人組。和気藹々とはまた違う、戦いながらの「成長」を感じられるのがチーム加藤だ。予選2試合に準決勝を戦い、確実に増した力が予選で敗れたチーム西山にどこまで通じるか。決勝は、その成果を全てぶつける場所だ。
◆第2回女流ABEMAトーナメント 第1回は個人戦として開催され、第2回から団体戦に。ドラフト会議で6人のリーダー棋士が2人ずつ指名し、3人1組のチームを作る。各チームには監督棋士がつき、対局の合間にアドバイスをもらうことができる。3チームずつ2つのリーグに分かれ総当たり戦を行い、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。チームの対戦は予選、本戦通じて、5本先取の9本勝負で行われる。
(ABEMA/将棋チャンネルより)