チームは準優勝、決勝で初黒星。それでも断トツの成績が曇ることはない。女流による早指し団体戦「第2回女流ABEMAトーナメント」の本戦トーナメント決勝、チーム西山とチーム加藤の対戦が12月6日に放送され、西山朋佳女流三冠は個人2勝1敗だった。第3局では加藤桃子清麗に敗れ、今大会初黒星を喫したものの、予選から決勝まで4試合、全てで3局指し、計12局で11勝1敗は圧巻。公式戦でも見せてきた早指しの能力が、この超早指し戦という環境下で、さらに光り輝いた。
【動画】チームは準優勝も個人は11勝1敗と断トツの西山朋佳女流三冠
男女通じて、大会初の無敗による「完全優勝」まで、あと少しだった。予選2試合・6局、本戦の準決勝・3局と、負け知らずの9連勝で決勝まで進んできた西山女流三冠は、公式戦でも早い指し手が特徴でもある。ただ、持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算というフィッシャールールにおいて、大会前は後ろ向きな言葉が続いていたが、蓋を開ければ他を寄せつけない連勝ロード。準決勝の第9局、里見香奈女流四冠との“女流頂上決戦”は、タイトル戦級の注目を集め、かつ大熱戦の内容に、多くのファンから喝采が飛んだ。
ところが、決勝ではいきなりつまずいた。第1局、第2局と仲間の上田初美女流四段が連勝し、スコア2-0とリードした場面で登場した第3局は、加藤清麗とのリーダー対決になった。これまでチームとして劣勢の場面を任され、踏ん張ってもきたが、珍しくリードを奪っての登場にこれまでと勝手が違ったか、序中盤と進むに連れて不利、劣勢に。さらに最終盤の勝負どころでは見落としもあったか、一気に敗勢まで追い込まれ、そのまま100手で投了した。「もちろん(加藤清麗は)手強い印象だったんですけど、勝負どころで失敗してしまった。攻め込んできた時に対処を間違えた」。自らのミスで敗れ、チームの勢いにブレーキをかけてしまったことを反省した。
それでも、ここから気合を入れ直したのか、残り2局は強かった。スコア2-3とリードされた後、第6局で加藤清麗と再戦。この一局も序盤、中盤と押し込まれたが、蓄えていた持ち時間が活き、相手の緩手を咎めて、終盤で逆転に成功すると、一時はタイに戻す大きな勝利をチームに持ち帰った。さらに第8局ではスコア3-4とカド番の状況で香川愛生女流四段と戦ったが、泣いても笑っても最後の一局と能力を全開放すると、序盤でリードを奪ってからは怒涛の攻め。解説していた阿久津主税八段からも「すさまじい破壊力。香川さんを粘らせずに押し切った会心譜」と絶賛される内容で今大会11勝目を挙げた。
リーダーとして、常に全て勝つことを求められるような状況で盤に向かい続けた西山女流三冠。チームはスコア4-5で惜敗し、準優勝に終わったが、個人成績11勝1敗は、参加した女流棋士18人の中でも断トツの数字。決勝後は「いろいろな相談や思い出を共有した結果です。今は充実感でいっぱいでございます」と、穏やかな表情で大会を振り返った。チームメイトの上田女流四段、山口恵梨子女流二段はドラフトで指名しながらも、ほぼ会話をしたこともなかったが、2人の先輩と共有した時間は、確実に西山女流三冠に新たな刺激と経験を与えた。準優勝とはいえ、晴れやかな顔であいさつをしたのは、新たな自分になれたことを実感したからかもしれない。
◆第2回女流ABEMAトーナメント 第1回は個人戦として開催され、第2回から団体戦に。ドラフト会議で6人のリーダー棋士が2人ずつ指名し、3人1組のチームを作る。各チームには監督棋士がつき、対局の合間にアドバイスをもらうことができる。3チームずつ2つのリーグに分かれ総当たり戦を行い、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。チームの対戦は予選、本戦通じて、5本先取の9本勝負で行われる。
(ABEMA/将棋チャンネルより)