新型コロナウイルスの新規感染者が連日20万人前後に上るイギリスでは、隔離による職員の欠勤が相次ぎ鉄道や飲食業界への影響が広がっている。
イギリスでは連日20万人前後の新規感染が確認されている影響で、約100万人が自主隔離を余儀なくされている。このため労働者不足が深刻化し、鉄道の減便などが相次いでいる。
これを受け、政府は自宅でも受けられる簡易検査で陽性だった場合、PCR検査を受けずに隔離に入る方針に変更した。隔離までの期間を短くすることで経済活動への影響を抑える狙いがある。
そんなイギリスの現状について、ANNロンドン支局の山上暢記者が伝える。
Q.イギリスの現在の対策は?
感染を防ぐ対策というよりも、感染による経済活動の停滞をどうするかという対策に舵を切っている。症状が出たり濃厚接触がわかってからPCR検査で陽性判定が出るまでに2、3日かかり、そこから最短7日間は自主隔離をしなければならないとなると、社会復帰するまでに10日前後かかってしまう。それによって経済活動が停滞しているが、自宅で受けられる検査キットで陽性となれば、PCR検査を受けずに自主隔離に入る方針に変更した。これには、なるべく早く社会活動に復帰してもらうという狙いもある。
確かに感染状況は悪化しているように見えるが、重症者や入院患者の数は去年1月のピーク時に比べたらかなり少なく、ジョンソン首相もそういったことを根拠にロックダウンを見送ると話している。感染者数の増加によって停滞してしまっている経済活動をどう動かしていくかに重きが置かれている。
Q.医療現場はひっ迫していないということ?
イギリスの地方で働いている看護師にうかがうと、「去年の1月やパンデミックが始まった2020年3月ごろに比べると、かなり余裕がある状態だ」と話していた。患者の治療という面ではそうだが、医療従事者への感染が広がれば当然欠勤せざるを得ないので、人繰りの面で大変になってきているということだ。
Q.感染者が急拡大する中で人々の危機感は?
街中で人々に話を聞くと、「感染者を減らさなきゃ」といった危機感を持っている人は少ない印象だ。それはやはり、重症化している人が少ないということや、ブースター接種が対象者の6割まで進んでいることが背景にある。「自分たちはかかってもそこまで重症化しないという安心感があるんだ」「鉄道の減便などの影響は大変だが、そこまで恐れすぎる必要はないのではないか」と話す人もいた。
やはり、イギリスの人と日本の人とではかなり感覚が異なると思う。重症化しにくい傾向のなかで、経済も回さないといけないという、そのバランスをどうとっていくか。日本の報道を見ていると、「感染者数何千人超え」などとそこ(感染者数)に重きを置いていて、重症者や入院患者の数はそこまで気にしていない印象だ。重症者や入院患者の数、死者がそこまで増えていないというのを、ジョンソン首相はかなり強調していて、日本とイギリスで政府が掲げる方針の違いもあると思う。