日本の広い範囲でも、長時間にわたり津波警報や津波注意報が出される事態になった、トンガ沖の大規模噴火。
日本各地で船が沈没・転覆するなどの被害が確認されたが、当初、気象庁にとっても想定外の事態だった。トンガでは、噴火の直後に1.2mの津波が襲来。気象庁は約8000km離れた日本に津波が到着する時刻を予測したというが、それをはるかに上回る時間に日本で海面の変化が観測された。また、通常の地震による津波に見られる特徴がなく、「これは津波ではないのではないか」と考えたという。
気象庁も困惑する今回の潮位変化、また懸念される今後への影響について、テレビ朝日社会部・気象庁担当の川崎豊記者が伝える。
Q.火山の噴火に起因した津波と、地震が原因による通常の津波を伝える仕組みに違いはある?
そもそも、火山の噴火による津波に特化した仕組みはない。遠くの場所で起こった津波は、通常であれば日本に到達するまでの間にどこかで観測される。そういった途中の地点でのデータを元に、気象庁のシステムは時間を変更したり津波の高さを変更できたりする。しかし、今回はまったくといっていいほどデータが引っかからなかったため、“突然のように来た大きな波”ということになった。これを予測するのは、現状のシステムだとかなり難しい。
Q.津波の専門家は噴火による「空気振動」の影響をあげているが。
最初の微弱な潮位変動に関しては、気圧の変化ということが上げられているが、「空振」で津波もしくは潮位変動が起きるというのは今まで言われていなかった。しかも、8000kmほど離れている日本で起こると予想するのは難しいと思う。
Q.噴火が起きると寒くなる、という話は?
今回の火山の噴火は大規模だったので、そういったことを心配する声もあがっている。1991年にフィリピンのピナツボ火山が噴火した際の規模が、今回と同じようなレベルだと比較されることがある。この時に日本で何が起こったかというと、2年後の1993年に「平成の米騒動」があった。冷夏になって米のできが悪くなり、最終的にはタイ米を輸入することになった。
今回も気候に影響が出て、「また米騒動が起きるんじゃないか」という声がSNSであがっていることもあり、火山の専門家に聞いてみた。寒冷化の原因になるのは、太陽光を遮る硫酸ミストというもので、火山ガス(二酸化硫黄)が空気と反応することで硫酸のミストが発生し、それが太陽光を遮って気温が下がるというメカニズムがわかってきている。今回の噴火に関しては、硫酸のミストの元となる二酸化硫黄がかなり少なかったということで、大気への影響は小さいとみられるという。また、南半球で起きたこともあって、北半球で影響が出てくる可能性は低いのではないかと話していた。
Q.気象庁は今回、津波警報・注意報のスキームを使ったが、今後はどう対策する?
また同じような場所で同じような規模のことが起きれば、今回の例を活かし対応もできるが、今後同じようなことがおきるかはわからない。難しい対応が迫られる。庁内では今後どう対応するのかを有識者を入れた会議を作り検討していくことが考えられている。もうひとつ、気象庁は津波などの監視を7人で常時観測しているが、それを強化しようということも検討されているようだ。
今回驚いたのは、未だに私たちが経験したことのようないような災害が起こるんだなと。それと同時に、臨機応変に対応していくことが必要で、今回の気象庁の対応は、うまくできたところもあれば、足らないところもあったと思う。今後も同じ災害が起きるとは限らない。そういった柔軟な姿勢を続けていければと思う。