1日に死去した作家で政治家の石原慎太郎氏に対する批判的なSNS投稿について、「亡くなった当日に鞭打つな」「お悔やみの言葉が必要だ」といった声が相次いでいる。
例えば社民党の大椿ゆうこ副党首は訃報が伝えられた直後の1日午後2時半過ぎ、「今後、追悼番組が放送されるだろうが、称賛で終わるのではなく、彼が撒き散らしたレイシズム、性差別、障害者差別等についても、なかったことにしないでもらいたい」とツイート。これが賛否を呼び、3日現在で5000件を超えるリツイートや3000件を超える引用リツイート、さらに1万2000件超の「いいね」が付いている。
2日の『ABEMA Prime』に出演したフリーアナウンサーの宇垣美里は「亡くなるということはとても寂しいことだし、哀悼の意を伝える必要があることは分かる。少なくともその日のうちは…という気持ちも分からなくはない。ただ、同性愛者の方にひどい発言をしたこともあったし、様々な発言によって傷つき、怖い思いをした人がいることは確かで、私もとても怖かった」と話す。
その上で、「これが近所のおじさんや親族であれば“ムチャクチャなことを言う人だったけど、まあいい人だったよね”と言ってもいいかもしれないが、公人。“石原節”と括るのはいかがなものかと思うし、多少は時間を置いたとしても向き合わなければ、また同じことが繰り返されてしまうのではないか」と問題提起した。
実際、テレビ番組などでは主に氏の功績を中心に構成されており、問題視された数々の発言についても「石原節」といった表現となっていることから、毀誉褒貶のあった人物であることが若い世代には分かりづらいという見方もある。スタジオでも、20代のあおちゃんぺが「何をされた方なのか全く分からなかった」、上田彩瑛も「私も同じで、世代的には東京五輪の招致活動をしていた人というイメージが先行する方」とコメントした。
一方、石原氏と何度か会ったことがあるという慶應義塾大学の夏野剛特別招聘教授は「個人的に会うと、普通のいいおじいちゃんだった」と明かし、「“歯に衣着せぬ発言”が多く、批判を気にしない方だった。だからこそ支持している人も多かったという側面もあると思う。その意味では、“コロナウイルス”と言わず“チャイナ・ウイルス”と言っていたトランプさんに似ている。今も天国で“騒がせてやったぞ”と笑ってるんじゃないか。そういう人だ」との見方を示す。
「(テロップで紹介された“三国人”“ババア”という発言について)これらは20年前の発言で、今の常識で見るととんでもない発言なんだけど、去年の森喜朗さんほどの騒ぎにはならなかったと思う。擁護するわけではないが、時代も違うし、すでにおじいちゃんだった。“三国人”という言い方も、差別だと思って使っていたかどうかも分からない」。
それでも中国の環球時報は「日本の右翼政治家」、韓国の聯合ニュースは「日本の極右妄言製造機」、同ソウル新聞は「『慰安婦妄言』日本の極右政治家」と評しており、パックンも「石原さんは中国に対して差別的な呼称を使っていた。“他国は怒っているけど”と笑う人もいるかもしれないが、日本国内には中国系、韓国系の方はいっぱいいらっしゃる。傷ついているのは外国に住んでいる人ばかりではない。夏野さんの言う通り、トランプ前大統領とは支持層が似ていると思うし、本人も“社民党の副党首がなんと言おうが、俺は俺だ”というスタンスだと思う。その意味では、(死者だからといって)別に庇う必要もないと思う」と指摘した。
「どの国でも、亡くなった方に対してはある程度の気遣をすることが期待されると思う。アメリカでも、その日のうちに猛烈な批判を連発する人はそんなにいない。ただし公人なので、その経歴や実績を振り返る時には、ちゃんと伝えないといけない。例えば去年、イラク戦争を起こした一人で、その罪は重いといわれるドナルド・ラムズフェルド元国防長官が亡くなったが、すぐに“あんたのせいで知人が亡くなった”“あんたのせいで僕の国は崩壊させられた”とったイラク国民の声が社説に載った。逆に言えば、“このタイミングで言うのは品がない”という批判も受ける覚悟ならやってもいいアメリカでは捉えられているということだ」。(『ABEMA Prime』より)
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