指す弟子も見守る師匠も、ハラハラドキドキの連続だ。「第1回ABEMA師弟トーナメント」予選Bリーグ2位決定1回戦、チーム谷川とチーム森下の対戦が2月5日に放送された。この第4局でチーム谷川・都成竜馬七段(32)がチーム森下・森下卓九段(55)に勝利し、スコア3-1でチームの勝利を決めたが、終盤に入ったところで必勝と思われていた都成七段の手が泳ぎ、本人も控室にいた谷川浩司九段(59)も揃って大慌てになる事態が発生。ファンからもこの慌てぶりに「叩き合い大変」「ひやひやしたねー」と大盛り上がりになった。
この一局は、都成七段の先手番で始まり、戦型は相掛かり。2人とも中住まいで構えるバランス型で指し進め、早い段階から戦いが始まった。序盤からペースを握った都成七段が中盤、終盤と差を広げて押し切るかと思われたが、ここからが“劇場”の始まりだった。
残りの持ち時間がわずかであることをチェスクロックが「ピッ、ピッ」という音で知らせると、都成七段の緊張感もどんどんアップしていった。対局後には「うまく戦機を捉えて優位に立ったんですけど、終盤5秒将棋になるとかなり乱れてしまって…。何が起きてもおかしくなかった」と、軽くパニックになり、対局中に思わず髪をかき上げては天を見上げるようにのけぞった。
こんな様子を見せられては、応援している方もドキドキだ。谷川九段は「引きますか、一旦は。いや、やりすぎでは…」と、時間がない中でぎりぎりを攻め込む弟子に肝を冷やすと、なんとか勝ち切った後にも「はぁ。いやー、しかし…」と疲労感たっぷりのため息をついた。
実は大会前から、都成七段が時間ぎりぎりに指す点を心配していた谷川九段。その通りのことが大会中、しかも重要な一局で出たことで、予選突破につながるチーム勝利こそ手にしたものの、気苦労が絶えないといった表情を浮かべていた。またファンからも「激しい叩き合いだったなー」「いやー面白かった!」といったコメントが多く集まっていた。
◆第1回ABEMA師弟トーナメント 日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の着想から生まれた大会。8組の師弟が予選でA、Bの2リーグに分かれてトーナメントを実施。2勝すれば勝ち抜け、2敗すれば敗退の変則で、2連勝なら1位通過、2勝1敗が2位通過となり、本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで、チームの対戦は予選、本戦通じて全て3本先取の5本勝負で行われる。第4局までは、どちらか一方の棋士が3局目を指すことはできない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)