7日のABEMA『NewsBAR橋下』にゲスト出演した国際政治学者の三浦瑠麗氏が、政治と専門家の役割について橋下徹氏と議論した。三浦氏は先月から、自身の参加する民間有志チーム「CATs」(Collective Analysis Teams)による、東京都での新型コロナウイルス感染症の第6波ピーク予測を連日公開してきた。
橋下:尾身さんたち専門家の皆さんが日々努力をされていることには敬意を表するんだけど、ちょっと“同族グループ”すぎたんじゃないか。尾身さんっていう権威がいて、同じような考え方の、いわば弟子というか、知り合いを引っ張ってきちゃったから。違う考え方の専門家もいっぱいいるわけだし、そういう人たちも含めてどういう会議体にするか、そこは、最後は政治の責任だが、日本のコロナ対応で混乱が起きたことの一番の問題点は、専門家が“同族”すぎるからというところにあると思う。
三浦:予測については、例えば経済学者の仲田泰祐・東大准教授によるものなどが出てくるようになって、少し良くなってきたと思う。最初は西浦博・北大教授しかいなかったが、一人では背負えない。西浦さん本人もおっしゃっていたが、“予測”じゃなくて、こういった仮定の場合こうなるよ、という“シミュレーション”をしていただけだった。
そして、私が出しているもの含めて東京都の感染者予測時を系列で並べてみると、ピークアウトの時期も本当に様々だし、“専門家”って言うけれど、“これだけバラバラなんだ”“一義的に決まった結論なんてないのね”ということが分かると思う。
だから人々は私のことを“感染症の専門家じゃないじゃないか”って言うけれど、逆に感染症の専門家もビッグデータなどはできないわけだし、尾身さんが公衆衛生の専門家だからと言って、感染予測についても一人でゴリゴリ出せって言うのは間違ってるでしょう?
確かに私の専門は国際政治学であって統計分析の専門家ではない。だからそうした専門家を束ねてチームにして政策のアドバイスをしたり、メディアに対して“こういう報じ方をしたらリスクコミュニケーション上、正しいよ”というアドバイスをしたいと思ってCATsを立ち上げたということだ。
橋下:これだけの感染症対策というのは誰も経験したことがないことなんだし、尾身さんが一生懸命に頑張ってくれていることは本当にありがたい。ただ政治とメディアは、専門家の意見をワンボイスにする部分を専門家にやらせちゃいけない。そこは政治家の仕事。
それはみんなの合意を取るやりかたもあれば、多数決を取るやりかたもある。それでもダメだったら、決定権者が決める。いろんな意見をひとつにまとめるのが政治家の仕事なのに、それを分科会に任せちゃってるから、尾身さんが政治家の役割をやってしまっている。提言を出して、政治家に文句を言われたら修正して…ということになっているが、本来、そういうことを専門家がやっちゃいけない。専門家は“データはこうなってます”と意見を出し、政治家がその中でどれを採用したり、どう一つにまとめたりするかを考える。それが日本はできていない。
感染症対策だけの問題ではない。今、ウクライナや台湾の問題が出てきているが、このままでは安全保障の問題が出てきたときに大変だ。日本は第二次世大戦で、データで判断するのではなく感覚でいってしまって、大失敗した。“竹槍でB29を突き落とせ”みたいな話もでてきた。データでちゃんと判断するということをやらないと絶対に誤ってしまう。
三浦:究極のリアリズムが必要なところで理想を振りかざしてしまうと、本当に危険だと思う。我々はかつてほどの大国でもないし、米国という“兄貴分”が国内政治でいっぱいいっぱいな中で米中対立時代に入ってきている。もし台湾問題でヘマをしたら、本当に国運を左右する事態になりかねない。(ABEMA/『NewsBAR橋下』より)