“可愛いの天才”は“優しさの天才”でもあった。星野みなみの卒業セレモニーは彼女の人柄が浮かび上がってくるような、あたたかで感動的な空間だった。

 2月12日、東京・東京国際フォーラム ホールAにて「乃木坂46 星野みなみ 卒業セレモニー」が開催され、会場に駆けつけたおよそ5,000人のオーディエンスと、さらにABEMAなどの生配信で見ていたファンが、およそ10年半にわたりアイドルとして活動し続けてきた星野のラストステージを目に焼き付けた。

 星野は乃木坂46の1期生オーディションに合格し、2011年8月に活動開始。2018年4月には、初のソロ写真集「いたずら」(白夜書房)を発表、昨年8月に加入10周年を迎えた。"可愛いの天才"と評される彼女は、個性的なメンバーを擁する乃木坂46の中でも唯一無二の存在感で、ファンから根強い人気を博した。卒業後は芸能界を引退することを表明している。

■キャプテン・秋元真夏がさっそく号泣「堪えるのは無理だった」

 影ナレを務めたのは1期生の和田まあや、4期生の遠藤さくら、筒井あやめ。その後、星野にフォーカスされた「OVERTURE」の映像が流れると、オープニング楽曲に選ばれたのは乃木坂46のデビューシングル「ぐるぐるカーテン」だった。パフォーマンス後のMCではキャプテンの秋元真夏がさっそく大粒の涙を流す場面も。気持ちを切り替え秋元は「みなみの最後のステージなので、最後まで見届けてくれたらと思います!」とファンに呼びかけた。

 卒業セレモニーの当日を迎え星野は「あんまり実感がなくて不思議な気分です。先に卒業していった子はどんな気持ちだったのかなって想像したけど、それもよくわからなくて。でも真っ白なサイリウム の景色を見て、少し実感が沸いてきました」と心境を明かした。すると横に立っていた同期の樋口日奈が涙を流しているのを見つける。樋口が「『ぐるぐるカーテン』で出た瞬間に、客席にいた女の子が泣いていて“わかるその気持ち”と思ってダメだった〜」と話すと、秋元も「ちょっと堪えるのは無理だったよね。みなみがいつも通り振る舞ってくれるから、逆に周りは寂し さもあるよね」と同調していた。

 するとここで星野にまつわるクイズ企画「みなみクイズ」と題したコーナーが開催されることに。コーナーのMCを務めたのは加入前から乃木坂46ファンでグループに関する知識が豊富な久保史緒里、矢久保美緒で、期別ごとのチーム編成で正解数を争った。次々と問題が出題されていったが、3期生は最後の問題まで0ポイントという結果に。しかし救済措置として最後の問題は373ポイント獲得できることとなった。すると“星野推し”で知られる向井葉月が最後に見事正解を出し、星野が自らで用意したクマのグッズをうれしそうに受け取っていた。

 それから「指望遠鏡」を1期生のみでパフォーマンスし、ライブが再開。5人になった1期生がステージの端から端まで使って笑顔を届けると、画面上にはうれしそうな表情を浮かべるファンの顔も映し出されていた。続けて「ぐるぐるカーテン」のカップリング曲である初期の名曲「失いたくないから」も5人で寄り添うように歌い上げ、場内をセンチメンタルなムードで満たした。 

■「今日から友達」「よろしくお願いします」あしゅみなの約束
 
 ここからは星野と期別ごとでパフォーマンスするコーナーに突入した。4期生とは「シャキイズム」をフレッシュに届け、3期生とは「ロマンティックいか焼き」を披露。同曲の終盤にはダブルセンターを務めた星野と向井が“ハートマーク”を作って見せ、視聴者を盛り上げた。2期生とは「Am I Loving?」をキュートに歌い踊った。

 続けて星野が参加したユニット曲「無口なライオン」を向井と2人で披露した。同曲は生駒里奈、井上小百合、斉藤優里、桜井玲香、西野七瀬、星野、堀未央奈、若月佑美の8名が参加した楽曲だが、これでオリジナルメンバーは全員卒業生に。パフォーマンス中、星野と目があった向井はたまらず大粒の涙をこぼしたが、歌い継いでいくかのように丁寧に歌唱する姿は視聴者の胸を打ったようで「すごく良かった…!」「これは泣いちゃうよ」といった声が寄せられていた。

 齋藤飛鳥、星野、山下美月の3人で「Threefold choice」をキュートに届けた後は“あしゅみな”の2人で「制服を脱いでサヨナラを…」をパフォーマンスした。曲中、飛鳥は星野への思いを伝えると、堪えきれず涙を流し、星野もこの日初めての涙を見せた。齋藤が「この際だからちゃんと言おうと思って。若かった頃に“もっと頑張らないと”と奮い立たされたのも、“もうちょっと頑張ろう”と粘れたのも、いろんな優しさを受け入れられるようになったのも、多分みなみのお陰だと思う」と涙声で語り、続けて「みなみは今日もみんなに気を使って、みんなが負担ないようにっていつも周りに気を使ってくれていたから、明日からはみなみが1番みなみのことを可愛がってください」と素直な思いを口にすると、星野は「ありがとう、卒業しても会ってね?」と返す。齋藤が「それはわからない(笑)」と“彼女らしい”返しをすると、星野は「なんでよ〜。それはダメ。今日から友達になろう」と提案し、最後に齋藤は「よろしくお願いします。卒業おめでとう!」と笑顔で受け入れていた。

 ここから卒業セレモニーは終盤戦に。星野がフロントメンバーを務めた「全部 夢のまま」を軽やかに届けると、「そんなバカな…」をエネルギッシュに披露し、オーディエンスを盛り上げる。そして最後は「おいでシャンプー」をパフォーマンス。曲中、秋元のきっかけでメンバーが揃って「みなみのことが大好き!」と叫ぶと、星野はうれしそうな表情を浮かべていた。

■「本当に素敵なメンバーがたくさん」星野みなみ卒業スピーチ全文

 鳴り止まぬ拍手の音とコメント欄に並ぶアンコールを受け、再びステージに登場した星野は最後のスピーチとして、以下の内容を述べた。全文を掲載する。

 「緊張しちゃう。何を話そう…。まず、こんな可愛いドレスを着させてもらいました。もう大満足です。

 昨日も“何を話そうか”と悩んだんですけど、逆にあんまり考えないで来ようと思って。その時に思ったことを伝えられたらと思っているので、言葉足らずだったらごめんなさい。

 まずは、今日来てくれてありがとうございます。会場の上の方までいっぱいで、サイリウムがきれい。そんなに上の方で怖くないのかなと思ったんだけど(笑)、たくさんの人が来てくれているんだなと思いました。皆さんパワーをありがとうございます。そして配信をご覧になってくださっている皆さん、お家からでもすごいパワーは届いているし、本当にファンの方にはありがとうの気持ちです。誕生日の時にケーキを買ってお祝いしてくれていたり、あとは乃木坂駅にポスターを貼ってくれていたり、誕生日の時に可愛い動画を作ってくれたり、今日も手作りでうちわを作ってくれている人もいたり、ペンライトとかタオルとかもたくさん…それをライブで見られるのが私はすごい楽しみで、ライブは乃木坂のお仕事で1番好きでした。だから最後がライブで良かったなと改めて思いました。みなさんありがとうございます。

 乃木坂に入ったのは中学2年生の13歳の時で、10年も前で…ああ、泣いちゃう……最初は友達がAKB48さんを好きで、『こんなすごいグループがいるんだよ』って教えてくれて、私も曲を聴いて、大好きになりました。そこから乃木坂のオーディションの話を知って、友達に勧められて受けました。だから、ほかのメンバーみたいに、次の目標があったりだとか、“アイドルになりたい”という子が多い中で、まさか受かるとは思ってなかったので、最初は“なんで私なんだろう”という気持ちがありました。そして、そんな気持ちを抱いている中で、1stシングルでフロントに選んでいただいて。

 やっぱり一緒にフロントに立っていた、生駒ちゃんと生ちゃん(生田絵梨花)がすごすぎて、2人と一緒に並べる人じゃないのになってすごく思っていて…だから最初は楽しめてなかったのかな……やっぱり“なんで自分なんだろう”というのがすごくありました。特別すごいものを持っているわけじゃなくて、自信がなかったと今になっても思います。

 その自信のなさがみんなに伝わっちゃって、選抜じゃなくなった時もあったんですけど、そこでファンの方が改めて『どんな場所でも応援するよ』って握手会でたくさん伝えてくれて、そこで特別な特技がなくても、1人でも応援してくれる人がいるってすごい特技だなとみなさんのおかげで思えるようになりました。そこから段々、活動が楽しくなってきました。

 そこから私は特に前に行きたいという気持ちがなかったから、応援してくれる皆さんはどういう気持ちだったのかなというのはあるけれど、メンバーを後ろから見たりだとか、どの場所でもすごく楽しめていたので、本当にファンのみなさんの言葉ってすごいなって握手会やライブを通して思うことができました。

 乃木坂に入って、昔は自信がなかったけれど、みんながたくさん『かわいいよ〜』とか『応援しているよ』とか言ってくれるから、自信がたくさんついて、自分のことが好きになりました。

 私は特に乃木坂を卒業と共に引退するということもあって、みなさんとこうして会う機会はなくなってしまうんですけど、今日1番好きなライブができて、本当に楽しかったと思うし、後悔なく終われちゃうなと思います。これからは乃木坂を応援する側として皆さんといられるんじゃないかなと思うので、よろしくお願いします。

 最後にちょっとだけ、1期生のメンバーにいいですか? まずは真夏。真夏は途中から入ってきたけど、本当に優しくて、すぐに人を受け入れてくれる。周りもちゃんと見ているし、乃木坂のために一生懸命で、付いていきたくなる、支えたくなるキャプテンだなって思います。こないだも元気が出るようにクッキーなんかも作ってくれて、本当に優しい真夏が大好きです。いつも真夏、ありがとう!

 そして、飛鳥ちゃん。飛鳥は一緒にシンメで活動することが多くて、最初は『飛鳥とみなみは、そんなすごい人じゃないのに…』って戸惑って、自信持ってできなかったけれど、今日という最後はこうして自信持ってできて、本当に良かったと思うし、特にスペインに一緒に行った時(ABEMAの番組『#乃木坂世界旅 今野さんほっといてよ!』で齋藤と星野はスペインを訪れた)たくさん本音で話し合えたのが、本当に楽しかった思い出です。もうちょっと一緒に頑張れなかったけれど、これからはお友達として仲良くしてください!

 そしてひなちま。ひなちまはよく連絡くれたりとか、ちょっと暗い顔していると『大丈夫?』と抱きついてきてくれたり、ひなちまにとってはさり気なく言った言葉だと思うけれど、すごくそれに助けられました。こんなあたたかい人がそばにいたから、頑張れたんだなと思いました。ひなちま、ありがとう!

 そしてまあや。まあやは今日も朝『寂しいよ』と連絡をくれて、まあやのせいで寂しいスイッチが入っちゃったから(笑)。でも今日も楽屋で隣でずっと楽しい話をしてくれて、リフレッシュに外に連れ出してくれたりとか、連絡をくれたりとかいつも笑わせてくれた存在で、私だけじゃなく、みんなのことを笑顔にする天才だなって思います。まあや、いつも笑顔にしてくれてありがとう!

 本当に素敵なメンバーがたくさんいるので、みなさん乃木坂46をよろしくお願いします!」。

 それから星野が「すごく自分にとって大切な曲をみんなと共に歌いたいと思います」と言ってから、自身がセンターを務めた楽曲「初恋の人を今でも」を心を込めて歌唱した。

■“優しさの天才”星野みなみ

 そしてここからは、メンバーが星野に感謝を伝える時間に。星野とプライベートでも多くの時間を共にしていた北野が「私が『もうここ(乃木坂46)から逃げたい!』と言った時は手を差し伸べてくれて、引っ張ってくれて、ずっと助けてくれたよね。私が誰かの言葉に傷つき、落ち込んでいる時は『そんなのみなみがやっつけてやる』って言ってくれた。本当に感謝しています。感謝を告げようとすると、最初の最後までずっとあるから……みなみちゃんの存在が私をここまで繋ぎとめてくれました」と口にすると、星野は大粒の涙を流した。そのほか向井も樋口も、活動する中で挫折しそうになった時、星野の人柄に救われたことを伝えていた。4期生の掛橋沙耶香も「一緒に活動する中で、私にはない優しさだったり明るさだったりいろんな魅力を持っている方だと知ってどんどん好きになりました」と影響を受けたことを明かした。およそ10年間、1期生として乃木坂46を引っ張ってきた星野は、見えないところでずっとメンバーに寄り添ってきた、優しさの天才でもあるのだ。

 そして最後はしんみりした空気を吹き飛ばすように、「あらかじめ語られるロマンス」をパフォーマンスして、星野の卒業セレモニーらしく、華やかな雰囲気の中でエンディングを迎えた。星野が「10年間すごく楽しかったし、本当にやりきりました。皆さんと会えたことが楽しかったし、パワーをくれた人にたくさん出会えて、感謝しかないです。10年間本当にありがとうございました!」と挨拶すると、客席は「10年間 可愛い▲をありがとう」(※▲=ハートマーク)と書かれた紙をサプライズで一斉に掲げ、星野の卒業セレモニーは幕を下ろした。

■乃木坂46「乃木坂46 星野みなみ 卒業セレモニー」セットリスト

M00. OVERTURE
M01. ぐるぐるカーテン
M02. 指望遠鏡
M03. 失いたくないから
M04. シャキイズム
M05. ロマンティックいか焼き
M06. Am I Loving?
M07. 無口なライオン
M08. Threefold choice
M09. 制服を脱いでサヨナラを…
M10. 全部 夢のまま
M11. そんなバカな…
M12. おいでシャンプー
EN1. 初恋の人を今でも
EN2. あらかじめ語られるロマンス 

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