超早指しの緊張感と、若手に最新の将棋を教わることの効果か。「第1回ABEMA師弟トーナメント」準決勝の第2試合、チーム深浦とチーム鈴木の対戦が2月26日に放送され、チーム鈴木の鈴木大介九段(47)が、予選・本戦通じて無傷の6連勝を達成した。大会期間中、弟子である梶浦宏孝七段(26)と試合前に練習将棋を指していると明かし「その効果が公式戦にも出始めています。すごく勉強になっています」と、50代が近づく中で力がついた実感があると語った。
鈴木九段は早見え早指しの振り飛車党として知られる棋士で、竜王戦では1組10期、順位戦でもA級を4期務めた。タイトル挑戦は2回あり、早指しの棋戦も2回の優勝歴がある。2017年5月からは、日本将棋連盟の常務理事も務め、自身の対局・成績だけでなく、将棋の普及にも尽力している。
通算成績では、勝率.550前後の行き来し、年度勝率が6割を超えたのは、2007年度の.650(26勝14敗)まで遡る。2008年度以降は、勝率5割前後という成績が続いていた。ところが本人が「効果が出始めた」というように、この師弟戦に出るようになってからは、成績が一気に上昇し始めた。
同じルールのフィッシャールールでは団体戦「ABEMAトーナメント」に第3回、第4回と連続出場していたが、やはり今回の師弟トーナメントで、梶浦七段と練習将棋を指すようになった効果がてきめんの様子だ。直近10局の成績は9勝1敗で、2021年度の成績は15勝7敗、勝率.6818。勝ち越しはもちろん、2007年度以来となる勝率6割超えどころか7割も目前に迫っている。「棋士になってから弟子と過ごす時間がなかなかなかったんですが、この企画からいろいろ話している。こういう時じゃないと、弟子に頭を下げて将棋を教えてもらう機会もないですから。絶好調です」と、普段からにこやかな顔が、さらに明るくなっている。
弟子の梶浦七段は、特に竜王戦での活躍が目立ち、師匠に負けず24勝11敗、勝率.6857の好成績。トップ棋士との対戦も増えつつある中での高勝率だけに、周囲の棋士からの評判も年々上がっている。
持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算というフィッシャールール、さらに棋士で集まり意見を交換する団体戦という場は、大会期間中・大会後に活躍する棋士を生むことでも知られ始めている。ベテラン勢では森内俊之九段(51)が復調、若手なら新人王の伊藤匠四段(19)、加古川青流戦優勝の服部慎一郎四段(22)という棋戦優勝者も出ている。公式戦ではない「準公式戦」で、エンタメ性も強い大会ではあるが、盤上で繰り広げられる将棋の内容は、タイトル戦にも出てくるようなものもある。後の活躍棋士をチェックする意味でも、見逃せない大会になってきている。
◆第1回ABEMA師弟トーナメント 日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の着想から生まれた大会。8組の師弟が予選でA、Bの2リーグに分かれてトーナメントを実施。2勝すれば勝ち抜け、2敗すれば敗退の変則で、2連勝なら1位通過、2勝1敗が2位通過となり、本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで、チームの対戦は予選、本戦通じて全て3本先取の5本勝負で行われる。第4局までは、どちらか一方の棋士が3局目を指すことはできない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)